タイムパラドクス!?

「えっと、未来人って俺達とおんなじ薬飲んでも平気なのか!?」


「え、ええ平気なはずです。体の作りは変わらないはずですから」


「普通の風邪っぽいけどなんか違和感あったら言えよ? 未来人だけに作用する病気とかあったら大変だからな!?」


「大丈夫です、私は大丈夫ですから。だからミサキさんのこと……あんな告白、私知らないです……」


「お前が知らなない告白ってことはそんな重要じゃないかもしれないんだ。それに今はお前の世話が先!」


「えへへ。すみませんミサキさん。ありがとうございますユウマさん」


「あとなんか伝えとくことはあるか? なければいまとりあえず使ってない来客用のパジャマ持ってくるから……」


「えへへ。ごめんなさい。でも、さっきの告白、あれ本心です。好きです。サトウユウマさん。あなたのことが好きなんです。未来人でも、歴史を変えちゃうかもしれないけど、それでも好きなんです。同仕様もなく好きで、好きで、ごめんなさい」


「あやまるな。あと今は変なこと考えないほうが良い。冷静じゃないんだからな。俺が変なこと言ったから……」


「いえ! 違います! 好きなんです! あなたの心にはミサキさんしかいないってわかってるのに! ごめんなさい! ごめんなさい! うわああああああああ!」


「もういい。いいから……」


 そう言って抱きしめる。体が暑い。そして……


「お前、更に薄くなってるぞ。大丈夫なのか? それが未来の病気じゃないのか?」


「そんな病気ありませんよぉ。言ってるじゃないですか過去の人と身体は変わらないって」


「じゃあ……これは……」


 嫌な予感がする。見逃してはいけないなにか。もしかして……


「未来が変わろうとしてる……のか? でもそれでなんでお前が消えるんだよ!?」


「み、未来のことはあかせないので……未来技術もほとんど私わからないんです」


 それでも消えかけている。何が問題なのか。消えるこいつになにかしてあげられないのか。好きだって言ってくれたこいつに。


「キス、してください。最後に1度だけ……」


「しょうがないな。それじゃあ……」


 ユリアのおでこにキスをする。にへっと笑った。


「えへへ。キス、してもらえました。ありがとうございます。これでもう、心残りは……」


「あるんだろ!? まだ1週間残ってるんだぞ!? あるって言え!」


「ミサキさんとユウマさんのこと最後まで見れなくて、変なことばっかりしちゃってごめんなさい。でも……私……楽しかったです」


「ユリア! おい!」


 と、ユリアの体から力が抜ける。消えるのか? 


「おい! おい! ユリア!」


「すみません。少し寝たら、帰りますから……未来に……」


 そういって寝息を立てた。薬が効いてきたらしい。しかし、消えてしまう問題は解決していない。どうにかしなくては。




 翌日、俺は教室に美咲、陽斗、部長、副部長を集めていた。

 ユリアのことをよく知っているメンツだ。


「と、いうわけなんだ。あいつは未来から来た。この学校が舞台の物語が好きで、聖地巡礼に来たんだ。だがいまあいつは消えかかってる。なにか原因が思い浮かばないか?」


 正直に、すべて話す。


「ユリアちゃんが好きなのってラブコメだったよね? もしかして悠真くんのそばにいたのって……」


「ああ。正解だよ美咲。俺が主人公のラブコメらしい」


「と、すると相手は……未来人って設定じゃないよね?」


「あいつの記憶は当てにならない。処理されてきてる以上、あいつが当事者なら何もわからない。どうすればいいと思う?」


「え~とぉ~、まあまず物語的に言えばタイムパラドクスが起きて自分の存在が消えかけるってのは定番っすよね~? バック・トゥ・ザ・フューチャーとかみたいに」


「過去改変といえばターミネーターみたいにどうしても未来が変わらないパターンも有るぞ? 消えかけているのの説明にはならないが」


「そもそも俺が見る限り、悠真主人公だとして誰がヒロインか? って問にはすぐ答えが出るんだが……」


 そう言って陽斗は美咲の方を見る。周りも納得したようだ。しかし陽斗は更になにかに気がついたのか……


「ちょっと美咲さんと悠真は席はずしてくれ」


 といって追い出された。


「大変なことになっちゃったね?」


「そ、そうだな。ところで……」


「あ、あの話は忘れてね!? 約束だよ!?」


「あ、ああ」


 といった具合にぎこちない時間が続いていた。




「で、追い出したのはなにか理由があるんだろ?」


「まあはい。えっと、部長さん、副部長さん。まず間違いなくそのラノベの主人公は悠真で、ヒロインは美咲ちゃんですよね?」


「おそらくはな。そして消えかけるってことは……」


「タイムパラドクス。で~そういう場合かんがえられるのは~」


「おそらくは、娘。それか子孫の誰かと言ったところだろう」


「あの二人の間に入れそうな女子なんて一人しかいない。つまりは……」


「ユリアちゃんが佐藤くんのこと好きになっちゃったかなっちゃいそうってことっすね~?」


「俺達がやるべきことはじゃあ決まりだな。全力で……」


「「あの二人、佐藤くんと美咲ちゃんをくっつける」」


「それと二人には話さないほうが良いかもしれない。義務感で付き合ってもユリアちゃんが生まれないかのしれないのと……」


「未来技術とやらがあの二人に影響してないとも考えられないからな。いい判断だと思う」

「あの二人感がするどそうなのに娘かってところに思考が言ってなかったっすからね~」


「よし! 戻ってきていいぞ! ふたりとも!」




 何だったんだ。外に締め出されて。


「それで、何の話をしてたんだ?」


「いや、ユリアちゃんが消える理由はわからなかったが、ユリアちゃんがここに来た理由はわかってるだろ? だからその線から攻めようと思ってな」


「つ・ま・り~。お二人にはこれから1週間カップルとして生活してもらいま~す」


「「なあっ」」


「朝はどっちかがどっちかの家に行って朝起こす~。イチャイチャ手を繋いで登校して~、お弁当あ~んってするのもいいっすねぇ~」


「待て待て待て! 俺はユリアに告白されたんだぞ!? その眼の前で見せつけるのか!?」


「ああ。ちゃんと放課後までマークするからな。いいか? これはいわゆる推し活の最後だ。オタク風に言えばコンテンツの過剰飽和で昇天させる」


「それとも二人は嫌いなのか? お互いのこと」


「「いや! 全然!?」」


「そりゃ良かった。それじゃあ……推しの幸せが私の幸せ! 昇天作戦スタートだ! 明日から気合い入れて男見せろよぉ悠真ぁ!」


「なんでお前はそんなテンション高いんだよぉ!?」

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