第6話 最初の敵が手練れ?そんなことがあるわけない
「私がそのためだけにこの村を興したからですよ。」
この村の村長であったものがそう言う。
どおりで若いわけだ。
俺は問いかける。
「お前らって年取らないの?」
「いや、生き物であれば年はとりますよ。ただ人間よりも寿命が長く、老化が遅いですが。」
なるほど。
「パイクさん。あなたはこの村で生まれたんですか?」
「え、えぇ。」
「そのときから村長はこの方で?」
「はい。顔も変わりなく。確かに違和感はあったかもしれないんですが、私もまだ20前半なので、...。」
そう、か。さすがにそれだけじゃわかりっこないよな。
「単刀直入に聞く。村人が減った理由は村人が出て行ったからでも子孫を残せなかったからじゃなく、......お前たちが喰ったからか?」
その質問をしたとき、パイクさんとランスさんの顔がこわばる。
だが、そんなことも気にせず、...いや、わざと二人を刺激するかのように、
「えぇもちろん。あなたたちの親も、子も、親戚も、友達も。みんな――――」
そして村長は満月の光を浴び、姿を変えながら
「喰ってやりましたよ。」
と、そう言うのだった。
「えーっと変身してやる気満々なところ申し訳ないんですが。能力持ちってこの中にいます?」
俺からしたらそれが一番の疑問だった。
そしてワーウルフの中から一匹だけ前に出る。
「俺だ。」
そいつは自信満々に胸を張りながらゆっくりと出てきた。
「どうせいまから倒すんで聞いときますね。あなたのスキルは?」
「倒す?ははは!馬鹿言え。この数だぞ?優に100は超える。それを倒すだと?笑わせてくれる。...だがどうせお前たちはここで死ぬだろう。せっかくだ。教えてやる。俺の能力は『夜の召喚』。簡単に言えば、ここだけ夜になっている。」
「ここだけ?」
「あぁ、今日あるはずの夜を早めに指定した場所にだけ現れる。だが、まぁ一定時間で戻ってしまうが、そんなのは関係ない。昼に戻る頃にはお前たちは息もないのだからな!」
「えーとそれってあなたを倒したら戻ったりします?」
「いや、俺の意思で元に戻すか。一定時間経つまでは解除されない。」
最初こいつ倒して戦力の大幅低下をしようと思ったのに。
だがまぁ、...
「パイクさん。ランスさん」
俺たちなら、
「やってやりましょう。」
こいつらなんて倒しきれるだろ。
そうして、俺たち人間とワーウルフの戦いが幕を開けた。
俺はあの兄弟、二人のことが気になっていたがさすが言うだけのことはあった。
ランスさんは前線で短い槍で戦い、パイクさんは長槍を使い相手の攻撃が届かないところから攻撃をしかけ援護する。
「よくできてる。ってあっぶね」
俺はよそ見をしていたがためにいつのまにか周りを囲まれてしまっていた。
「まずはお前からだ!」
と、ワーウルフたちが一斉に攻めて来るが、
「お前たちと俺のステータスの差がどれだけ広かろうとも...動いていなければ意味はない。」
俺は一瞬にして周りにいたやつらを切り伏せる。
「な、にが...。」
「あれ?知らなかったのか?俺って能力持ちなんだよ。だから俺がやられることはそうそうない。」
するとその倒れたワーウルフはにやけ、
「そん、なの...見えてなきゃ、意味ねぇよなぁ!!」
そう言った瞬間、俺の後ろの暗闇に潜んでいたワーウルフが俺を切ろうとする。が、
「ごめん。鑑定のステータスが見えっぱなしなんだわ。」
そう言って俺は返り討ちに合わせる。
"鑑定"。この能力は一度発動すれば俺がそのステータスを閉じるまで多分永遠に表示され続ける。
だから見失うなんてことはない。ま、スピードが速くて目が追いつかないとかだったら別だが。
「このチーターが...。」
チーターねぇ。狼のお前らから言われるとなんか違う意味に聞こえてならない。
「やぁ!」「おりゃ!」
俺はランスさんの方を見る。
「おぉやってるやってる。」
この感じだと心配はないかな。
とんだ手練れがいない限り......ん?手練れ?
いなかったっけ?いや、気のせい?
うーーむ、手練れ...ねぇ。
そういえばいろんなやつのステータスを見てわかったことがある。
HPにはけっこうなばらつきがあるが大体1000くらいが普通だろうか、ATKは500ぐらいが標準で、DEFも500ぐらいが標準。SPEEDはだいたい200~300といったところなんだが。
「なんかめっちゃ高い奴いたようなー」
俺は思い出せなかった。いや、もしかしたら思い違いなのかもしれないが。
そんな感じで俺が思いだそうとしていると、
「うわぁ!」
と、ランスさんの声が聞こえた。振り返るとそこには鉈と弓矢を持ったワーウルフがいた。
『鑑定』
―――――― ▽▽ ――――――
『クロス HP300/300 ATK 5000 DIF 500 SPEED 500』
―――――― △△ ――――――
「こいつか。」
どうやら俺の思い違いではなかったらしい。
「なんや、こんなもんかいな。」
そのワーウルフ、クロスは憂鬱そうに腕を押さえたランスさんを見る。
「みんなどんどんやられていくからそうとう強いんかと思っとったが、そんなことないんか...。」
いや、ランスさんもパイクさんも見ている感じ決して弱くはない。ただこいつ、クロスが強すぎるだけなのだ。
「ランスさん!俺もそっちに!」
そうして俺はそっちに行こうとするが
「行けるもんなら行ってみろ!」
とワーウルフたちがまるで壁になるかのように立ちふさがった。
「...っ!こいつら!」
ワーウルフが変身した後の姿は俺たち人間と比べると非常に大きな体をしている。そのため時間停止でも横からも上からも避けることはできなかった。
「大丈夫ですか!ランスさん!」
俺は向こうの状況が見えず焦り、この世界でやっと本当の危機と言うのを感じた。
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