第4話 訪れる静かなる危機
「ふぅ、危なかった。」
俺はその時間が停止した世界で一息つく。
まさかあそこで転ぶとは。
「身体能力上昇してんじゃないの?」
もとがダメだからだろうか。
「...とりあえず武器は取り上げよう。」
そして俺はその人に近づき槍を取り上げ、
「解除ー」
再度時間を動かした。
「やあぁぁ!ってあれ?槍は?」
「これのことか?」
俺は背後で槍を
「...!お前、いつのまに!」
「いつのまにってお前が遅かっただけじゃないか?」
遅いというか固まってたんだけどな。
「クソッ。そんなわけあるか!そんなのまるで!......ん?...ちょっと待て、もしかしてお前、能力持ち、か?」
「そうだよー」
「なら空を飛んでたのも」
「本来飛ぶような能力じゃないはずなんだがな、」
「え、じゃあ、魔王軍の者じゃ...。」
「だから違うって言ってるだろ。」
「す、すみません!今、村長に伝えてきます!少しお待ちください!」
と、速足で行ってしまった。
「これで一段落か」
ただ空を飛んできただけでこのようじゃ毎日どう過ごしてるんだか。
それからちょっとして先ほど槍を持っていた人が、ある人を連れてきた。
「先ほどはこのものが失礼をした。」
その人は俺の前に来るなり開口一番にそう言い頭を下げた。
「ほんとd、ゲホンゲホン。いえいえ、そんなこと。頭を上げてください」
うっかり本音が出そうになった。
「あぁなんて
「そ、それよりあなたは?」
「あぁ申しておりませんでした。私、ここの村長をしております、レッジと申します。」
やはり村長だったか。見た目はだいたい30代といったところか?若いな。
礼儀もちゃんとしてるし、いい人だなぁ。
やっと俺はまともな人に会えたと感動した。
「ここではなんですし、何もないですが、中でお話ししましょう。」
村長はそう言って中へと向かう。それに続き俺も付いていった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
村の中に入る。
「思ったより人、少ないですね。」
率直な感想だった。
「ここは魔王城に一番近い村ですから、わざわざここに住もうとする人もいませんし、出ていく者も多いのです。」
村長は歩きながら説明する。
それに続き槍を持ってる人も言う。
「私の妻と子も1年ほど前に出て行ってしまいました。」
その人はうつむき、
「今は兄と二人暮らし...。男二人は窮屈なものです。」
と、そう言った。
「つきました」
村長はそこで足を止め、
「ここが私の家です。」
そう告げた。
他の家と比べると一回りでかく、特別感があった。
そして俺たちはそこに入る。
そこには...
「なにも、ない?」
言葉の通り何もなかった。
あるとすればベッド...それも小さい。
「先ほどにも言ったでしょう?ここには『何もないですが』と。」
そして村長は床に座る。
「えーと、なんで何もないんですか?」
「...この村の人は減る一方です。」
この話長くなるかな。
「そして、そのまま家具を作る人も商人もいなくなってしまったんです。それもとっくの昔に。だから何もないんです。」
「は、はぁ...」
なぜそこまでこの村に居続けるのだろうか。
だがそんなの俺が知ることではない。
「私は先に戻ってますね。」
槍の人が去ろうとする。
「ちょいまちー」
俺はその人を呼び止める。
「名前、教えてくれないか?」
いつまでも槍の人は失礼だろう。
「あれ?言ってませんでしたっけ?私は槍使いのランス。兄はパイクと言います。私と同じ槍使いです。兄と交代しながら村の防衛をしています。」
「二人で?」
「はい、人が少ないので...。では仕事に戻ってますね。」
そしてランスは去っていった。
「...あなたは強いですか」
いきなり村長が尋ねてくる。
「え?いや、そこまで強くはないですが、」
「...そう、ですか。......今日は満月、か。」
「?」
何がしたかったのだろうか。
これ以上話はないのかと思い俺は入口へと足を運ぶ。
「あぁ、そうだ。あなたの名前はなんと言うのでしょうか。」
「俺?俺は日向ですけど。」
「日向...いい名ですね。...あ、話したい事はだいたい言えました。小さいですが適当に村の中を歩いてきたらどうです?」
「は、はい。」
そして俺は村長の家から出た。
「なんか変、だったな。」
まるでなにか企んでるかのような。
そのとき妙な話し声が聞こえてきた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「パイクとランスもそろそろかねぇ。」
「いや、ランスはまだだ、ここを守ってくれる奴だ。一人くらい残しておこう。」
「でも...人間は――――――...」
「...それもそうか」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そんな声が......。
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