第81話


低血圧のヒロは起きたらまず、大きな欠伸をもらしながらも、のろのろとシャワーを浴びに行く。



ザー……



バスルームのすりガラスの向こうで、ヒロのシルエットがぼんやりと映し出されていた。



本当は今すぐにでも扉を開け、裸のヒロに抱きつきたいのをこらえながら、俺は腕時計に視線を落とした。



「ふむ。ジャスト32分40秒♪」測り終えると同時にバスルームの扉が開いた。



ガチャッ



「おかえりハニー♪」両手を広げて出迎えると、



シャワーを浴び終えて裸のまま♪のヒロは一瞬固まったものの、すぐににっこり笑顔。



「ただいまダーリン♪」



お♪いつになく可愛い反応♪



「―――なんて、言うわけあるか!」



バンッ!!



思い切りドアをぶつけられ、俺はノックアウト。



美しい俺様が危うく鼻血を吹き出すところだったぜ。



そして今もヒロは不機嫌だ。



「風呂を覗くなって言っただろ!!」腰にバスタオルを巻きながら、ヒロは怒鳴った。



「覗いてないぜ?お前があがるのを待っていたんだ」



顔面から受けたドアパンチに怯みながらも、俺は何とか体勢を直してヒロに向き合った。



「減らず口っ」プイとヒロは顔を背けて、洗面所で髪を乾かしに入る。






ヒロは―――きれいな顔に似合わず口が悪いし、態度も悪い。そして意外と凶暴だ。




俺は今手なずけるのに苦労している最中ってわけ。



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