第73話
「顔……、それだけかよ……」
言って俺は思わず口を噤んだ。
そうだよな―――俺は周にとってはやっぱり平凡で何の面白みもないつまらない男だったんだ。
だからアイツを夢中にさせられらない俺は、アイツに捨てられたってワケだ。
『―――と、まぁ最初は捜査線上に上がった写真を見て、しかも課も違うし、あ、因みに俺は捜査一課』
捜査一課!……ってあの殺人事件とか強盗とか脅迫班専門の?(テレビドラマで何となく知ってる程度)
『横領専門は二課だったが、なかなか尻尾を掴ませないホシに手をこまねいていた同僚が俺に泣きついてきてさ、でも何となくアタリをつけてたヒロの写真を見せられて
一目ぼれしたんだが、お前に会って一緒に過ごしていくうちに―――
俺はお前の日々一生懸命生きてる姿を好きになっていた』
思いがけない言葉に、俺は目をまばたいた。
「だってお前…無難な人生とかバカにしてなかったか?」
『バカになんかしてない。無難に―――平凡に生きていくことが、本当は何より大切で、一番難しいことなんだ。
人間生きてりゃ様々な欲望に掻きたてられるし、時には身の丈に合わない生活を夢見て、悪の道に進むやつもいる。
比奈がいい例だ。
お前は―――それをやり過ごして、堅実でいつでも小さな幸せを望んでいた。
そんな小さな夢に対して一生懸命で、お前はいつもまっすぐだった。
俺はそれこそが一番正しくてきれいなものだと思う。
俺はお前のそうゆうところを―――好きになった』
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