第69話



――――


――



どうしてこんなところまで来てしまったのだろう。



あれこれ考えていたら、自然足は周のマンションへ向かっていた。



こんなところに来たってしょうがないのに…



それでも俺は(無理やり押し付けられた)合鍵で、周の部屋を開けた。



しかもあいつは「これは“合鍵”じゃなく“愛鍵”だ♪」なんてほざいていていたっけ。



アメリカに行くって言ってたのに、引っ越しする形跡はなく家具も調度品もそのまま。あいつこれ、どーするつもりだよ。



全くもって最後まで分からないヤツだったよ、お前は―――



思い出したら、急に悲しくなってきた。



唇を噛みながら上がると、





部屋は今朝出てきたまま―――



あいつの香りが―――感じられなかった。





のろのろとリビングに向かうと、テーブルの上に箱が置いてあることに気付く。



結構な大きさの四角い箱だ。



あれ……?今朝出てくるときは置いてなかったのに……



ぼんやりとその箱を眺めると、その手前に置いてあった俺のスマホが突如鳴り響いた。



びっくりして慌ててディスプレイを見ると、







“I LOVE 周”とふざけた名前の着信が表示されていた。




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