第68話


刑事たちは顔を見合わせると苦い顔で、



「ああ、そうみたいですね。って言ってもこれは警視から口止めされてるから。



あなたたち友人なんでしょう?友達には黙ってて欲しいって」と口に指を立てた。



友人―――……じゃない……



俺は―――





あのスーツケース。周は最初からアメリカに行くつもりにしてたんだ。




ぎゅっと拳を握っていると、



「しっかしなぁ上の命令を無視してまで、わざわざ休暇を取って単独捜査なんてよっぽど確証がない限り、できないよな。



しかもホシを上げられなかったら、地方に飛ばされてたんだろ?それでも押し切って、必死になって、執念みたいなものが感じられたな」




なんて何も知らない刑事たちは、ちょっと笑って行ってしまった。





休暇―――単独捜査………



俺にはいっつもバカみたい変態っぷりを見せていた。



必死なんて―――微塵も感じられなかった。





東大出でエリートの頭の切れるキャリア刑事。



そして、変態で意味不明の俺様男。






周―――




本当のお前は





どっちなんだ―――







それは終わりのない円のように、ぐるぐると謎と疑心を残し―――




俺の中を不快に駆け回っていた。




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