第67話


取調べが終わると、事務的な手続きを残った二人の刑事に任せ、周はさっさと帰ってしまった。



その刑事たちからも開放され、二人が帰っていくとき、



「橘警視もさすがにヤリ手だよな。確たる証拠なんて何もなかったのに、よくやるよ」



「さすが東大出のキャリアはデキが違うな。ここのね」



刑事は頭を指差してちょっと皮肉そうに笑っている。



この刑事たちは俺たちのことをどこまで知っているんだろう。



まさか周はあいつの部屋に俺が閉じ込められていたことを、この刑事たちに伝えたのだろうか。



まぁ…そうだよなぁ。



でもあいつと俺の関係がどんなものだって、今更どうでもいい。



ホント間抜けもいいところだよな。四年間も騙されていた挙句に、



好きになったヤツにも騙されていた。




でも……キャリア―――かぁ……しかも東大出って、あいつむちゃくちゃ頭いいヤツだったんだな…



中身変態で意味不明だけど…



「これから警視はアメリカだろ?」



「あの歳で悠々自適、いいねぇ」



二人の笑い声が聞こえて、俺は目を開いた。



慌てて彼らの後を追うと―――



「あのっ!」俺は彼らを呼び止めた。



刑事たちは怪訝そうに振り返って、それでも「何か?」と答える。






「しゅ……じゃなくて…橘さん!アメリカ行っちゃうんですか!?」



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