第66話
淡々とした取調べは一時間もかからなかった。
周は俺と比奈の関係を聞いてきたが、俺には普通の付き合いしかなかったことしか答えられない。
比奈は普通のOLにしちゃ金回りのいい女だった。
俺は気付かなかったけれど、着ているものも持っているものもブランド品ばかりだったらしい。
そう言えば彼女のマンションも割りと高そうな部屋だった……
今になって思い出してみると思い当たる節はいくつかあった。
もちろん主犯の守川も比奈も逮捕され、署に連行されていったわけだけど。
動かぬ証拠……つまりは俺のIDを盗み、そのIDには俺の指紋はもちろん、比奈と―――更には守川の指紋がべったりと付着していた。
落としたIDを拾ったという彼らの証言は認められず、厳しい取調べの中とうとう二人が自白したとか。
俺に鉄壁のアリバイがあったことが効いたらしい―――
すべてを知った今となっちゃ、あのとき何が何でも周の腕を振り切り、
会社に戻るべきだった。
比奈のことを見逃してやりたい―――そんな気持ちじゃない。
周の正体を―――
知りたくなかった。
知らないままだったら、良かった―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます