第64話


俺は悪い夢を見ているのだ。



そもそも周の存在自体が夢だったんじゃないか―――……



そんな風にも思えてくるけど、



別室に連れて来られて質問をしてくるのは、紛れも無く周で―――



あの香りも



俺の大好きな香りに





違いなかった。





「どうやら守川、宮下(比奈のことね)両名は、あなたのIDカードを使って、経理ソフトの出納データを改ざんし、経理部から金を引き出していたもようです。



横領は四年前から行われていて、被害総額にして約3億」



3億…………



まるで夢みたいな金額だ…俺には想像もつかない。



ああ、でもドリームジャンボの三分の一と思えば……



―――って!思えるかっ!!



比奈が横領!?しかも俺のIDがその犯罪に利用されてた!?



しかも四年前…と言うと、俺と比奈が付き合いはじめてからだ…



「守川と宮下は二人で結託し、あなたのIDを利用し、度々経理ソフトの数字を改ざんしていたようですね。ちなみに二人の関係は五年前からはじまったようです。



あなたは―――宮下に利用されていたわけだ」






冷酷とも言える事実を―――周はまるで裁判官が罪状か何かを読み上げるように、淡々と言ってのけた。





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