第61話
まさか……あれは夢じゃなかった―――?
でもあいつに限って、あいつの昨日の態度を思い出して、あいつが俺をあっさりと手放すとは思えなかった。
だからまた今日の帰りぐらいひょっこり姿を現すさ―――
神出鬼没なヤツだからな。
思いも寄らない場所で、全く予想もしていないときに現れる―――
そうであってほしい。
そう願いながらも、俺はやっぱり会社に来ていた。
昨日無くしたと思っていたIDカードはやっぱり引き出しの中に忘れていたみたいで、(ひとまずIDを忘れたことにして他の社員に会社に入れてもらった)そのことにひとまずはほっとしたものの、
何か不吉な予感が拭い去れなくて、しかも周のことばかり考えていたから、
俺は小さなミスを繰り返した。
周に連絡しようか…と考えたけど、キーロックの掛かったままのスマホは使えないし、そもそも俺はアイツの番号を知らない。
それが余計に俺を不安にさせた。
大体番号も知らないのに、俺たち恋人って言えるのかよ。まぁ向こうは俺の番号を知ってるだろうけど。
恋人―――なんだよなぁ……
周は俺を恋人だと言ったけれど、どこまで本気なのか。
ヤバイ……考えたら考えるほど嫌な想像だけが巡る。
暗い面持ちでパソコンに向かっていると、ふわりと覚えのある香りを感じ、俺は顔を上げた。
俺のすぐ横で、すらりと背の高いスーツ姿の男が警察バッジ(はじめてホンモノ見たよ)を掲げ、
「桐ヶ谷 ヒロさん。警視庁の
と、温度のない言葉を発した。
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