第56話


ゴトッ



大きな音を立てて床に落ちたものを見て、俺は目を剥いた。



それはテレビの中でしか見たことがない“手錠”だった。



――――!?



周は特に慌てる様子もなく、それを拾い上げると、



「ああ、気にするな。これはプレイ用に用意したものだ♪」なんてにやり。



プ、プレイ―――!!?



い、いや、俺は周のことが好きだけどそんなアブノーマルで高度なプレイを楽しむほど、まだまだ気持ちが追いついていない。



ガチャッ



唖然とした俺の腕に周は楽しそうに俺の手首に手錠をかけた。



―――!!?



「プレイの名はThe放置プレイ♪」



「はぁ!?」意味分かんねぇし!



素っ頓狂な声を上げると、周は俺の手首をぐいと引っ張ってベッドに倒した。



相変わらず強い力にあっけなく俺はベッドに沈む。



そして周は手馴れた仕草で片方の輪をベッドの枠に繋ぐと、唖然としている俺に背を向けた。



「しばらくそこで大人しくしてろ。俺は用事を思い出したんでね。終わったら開放……いや、ちゃんと抱いてやる」



はぁーーーー!!!



「じゃな~♪大人しくしてるんだぞ?」投げキッスを寄越して、周は寝室を出て行ってしまった。






ちょ―――…ちょっと周!!




どこ行くんだよ!




何なの!??




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