第38話


「な…何が言いたいんだよ」



まるで吸い込まれそうなきれいな瞳から視線を逸らしたくて、でも結局できなくて俺は何とか答えた。






「可能性なんて無限大だって言いたいんだ。



ヒロ―――俺を選べ。



俺はお前を必ず幸せにする。それがどんな形であれ、




俺はお前の願いを―――叶えてやれる」







そんなの……ただの口説き文句だ。



こんな甘い台詞を吐けば女だったらイチコロだ。



だけど周の視線はただの口説き文句のための色じゃなかったし、その真剣なまなざしには抗えない強いものを感じた。



周の顔が近づいてきた。



あの爽やかな香り―――ちょっと甘くて、ミステリアスな―――




危険な香り。





だけど俺はその香りを跳ね除けられない。



跳ね除けたい、遠ざけたいと思う一方―――





とことんまで溺れたいと思う俺が居る。



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