第31話


なん………で――――



呆然と二人の姿を見て、俺は唖然となった。



二人は昨日今日の仲じゃなさそうな―――親密な感じだった。



比奈は守川の腕の中で、恥ずかしそうに…だけど嬉しそうに頬を染めている。



守川も比奈を守るナイトのように彼女に笑いかけていた。



見るからに一夜を共にしたあとの男女――――そんな言葉がしっくりくる。



守川は―――俺と同期だったけど、向こうは経理のプロで俺よりだいぶ早く出世していき、今は課長補佐だ。



かたや企画室の主任。かたや経理部の課長補佐。



比奈は―――守川を選んだ。



そういう………こと―――



つまんない、なんて言わずに好きなヤツができたって言えばいいのに…



それよりも二股かけられてたのか?



比奈と結婚して―――…マイホームを建てて、子供は二人がいいな。



なんてバカげた妄想だった。






お前の言う通りだよ、周―――



それが無難に生きてきた俺の―――あっけない末路だ。



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