第22話


「いえ、それだけは遠慮しまス」俺はきっぱりと言い返した。



「何でだよ、金持ってんし顔だって申し分ないぜ?退屈にはさせねぇよ」



いえ……あなた…根本的に間違ってます…





「あんたの考えは分かったけど、俺には俺の世界がある。あんたオトコだろ。俺はそっちの趣味はねぇの」



俺をあんたの世界に巻き込むんじゃねぇ!



そう言って睨むと、



「その考えがつまらねぇって言ってんだ。男と女しか恋愛できねえっていう定理は誰が決めたよ」



と、周は眉間に皺を寄せ、いつになく真剣に俺を見据えてきた。



その真面目な表情に一瞬、ドキリと心臓が跳ね上がる。



「いえ…誰がって……それはその…」



またも俺が口ごもると、



「あ?言ってみろよ」と低く囁いて、周は切れ長の目を細め、俺の顎に手をかけた。



や…ヤバい……その角度…ちょっと色っぽいんだって!



俺は慌てて顔を逸らすと、



「知らねぇよ!」そう怒鳴りながらビールを煽った。






何なんだよ!



ありえねぇって!




俺はオトコで周もオトコだ。




それなのに―――俺は不覚にも……







一瞬だけ恋に堕ちそうになってしまった。




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