第21話
「それにしても比奈?あいつ金掛かりそうな女だな。着てるものもブランドっぽかったし、お前貢いでたのか?」
急に話を変えられ、俺は面食らった。
比奈の話はしたくないけど……でも、何故だかこいつの前で俺の口はよく動く。
「服やバッグをプレゼントしたことはほとんどない。まぁ誕生日とかは別だけど。幾ら俺でも金づるにされてたら、別れてるって」
比奈は……俺にほとんど何かをねだってきたことはない。
「お互い少ない給料でやりくりしてるわけだし、無理しなくていいよ。欲しいものは自分で買うし」と言う、彼女のそんな気遣いが嬉しかった。
比奈はつつましくて心優しい女だったのだ。だから今日みたいな反応に、俺はどうすればいいのか分からなかった。
それを話すと、
「ふぅん」と周は口元を歪めて、それでもすぐにちょっとにやりと笑うと、
「俺は結構儲けているからな。お前が欲しいって言うものを与えてやるぞ?」なんて言いだしやがった。
この顔でこんな台詞をさらりと言われれば、普通の女だったらイチコロだろうな。
だけど生憎俺はオトコだ。
当面、俺が欲しいもの……それは…
「あんたと関わりのない日常」
言って、俺はため息を吐いた。
「それか恋人……。合コンでもセッティングしてくれ」
そう呟くと、
「女なんてやめておけ?どうせ比奈のことが忘れられないんだから」なんてさらりと言われた。
当たってる……だけに何も言い返せない。
どょんと落ち込んでいると、肩を叩かれた。
「そう気落ちするなよ。
よし、決めた!今日から俺様がお前の恋人になってやる!」
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