第2話


何で……



「何でだよ!」



俺は乱暴にグラスをテーブルに叩き付けた。



俺の何がいけなかったって言うんだ。



4年間浮気だってしたことがない。合コンすらいっていない。



彼女に乱暴なこともしていないし、電話やメールだってマメに入れていた。



なのに……



「そりゃお前、無難過ぎるワ」



と、隣の男が口を挟む。



俺は目を細めて顔を上げた。



ここはダイニングバーのカウンター席。



隣に居る男は俺と同じぐらいの男で、仕立ての良いスーツに身を包み、ラフに髪をセットしてある。



スラリと背が高くてスマートで憎らしいほど足が長い。



おまけに男の俺から見てもかなりのルックスだった。



しかも香水か何かだろうか、柑橘系の爽やかな香りが心地よく漂ってくる。






しかし……



「あのぅ…おたく誰?さっきから…」



俺が独り言を漏らすたびに、その男がツッコんでくる。



最初は空耳かと思いきや、そんなのが20分も続くとさすがに俺も気持ち悪い。






「俺?俺はシュウ。円周率の周」






と男はにこにこ答えた。





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