おしかけ令嬢は帰還した俺の家と高校を攻略していく ~俺はモブじゃねえ、スパダリだ~
白神ブナ🎄
第1話 転校生は異世界からのおしかけ令嬢
やったな母さん、弁当をマリアンのと間違えやがった。
弁当箱の大きさを見て、俺は愕然とした。
「なぁ、大森よぉ。君の弁当箱、小さくね? 見ないうちに、ずいぶんと少食になったな。ってか、弁当箱が花柄って、趣味まで変わった?」
後ろから覗き込み
ニヤニヤしながら言ってくるのは友人A、堀田。
俺の後ろをとるとは、お前やるじゃないか。
「うるさい、母さんが間違えたんだ」
誰の弁当と間違えたとは言わず、俺はただそう答えた。
まぁ堀田程度、あしらえない俺ではない。
「誰と?」
これであしらえないとは……、くっ! やるじゃないか堀田。
お前も成長したんだな。
「……妹と」
しかし、お前の記憶力は把握している。
俺の家族構成など覚えていないだろう。
ここで、架空の妹を召喚してターンエンドだ!
「君んち、弟じゃなかったけ?」
何でこういう時だけ覚えてるの?
そんなに俺のこと好きなの?
え? 無理だよ? 付き合うなんて
「ごめんなさい」
俺は、素直にお断りの言葉を口から出してしまった。
「は?」
堀田は、意味不明と訴えるような、面白い顔で俺を見つめてきた。
「あー、いや、そうそう。弟がな、花柄好きなんだ」
すまん、弟よ。
兄の学校生活での平穏を守るため、生贄になってくれ。
全ては母さんと堀田が悪いんだ。
「ま、男でもピンクとか、可愛いのが好きな人もいるしな。好みは人それぞれだよな」
ふう、ようやく誤魔化せたか。
この友人Aの堀田は、俺の数少ない友達だ。
堀田が、他のグループから「あほった」とからかわれ、ハブられて、落ち込んでいた時に、初めて話しかけてくれたのが大森学だから……と、本人は言っていた。
そう、俺は異世界から帰還してきた
あの時の俺は、別に堀田を助けたくて話しかけたのではない。
俺は先生から、「堀田にプリントを取りにに来いと伝えて欲しい」と言われて、単純に従っただけだったが……
まぁ、悪いやつではないが、あまりダル絡みされると面倒くさくなってくる。
ちなみに『友人A』と言っているが、
俺に『友人B』がいるかは怪しいところだ。(まずいない)
「すっげ、ニンジンが花型に切ってある。君の母さん器用だな。タコさんウインナーとか久々に見たよ。」
勝手に蓋を開け、中身をジロジロと見る堀田A。
堀田A? 友人Aと混ざったな。
こんな奴が複数いたらキモいわ。やめてくれ。
「見るな!」
可愛すぎる弁当の話題を、これ以上続けられないように、さっさと口に運んだ。
「大森ってさぁ、推しとかいる?」
俺の前の席に座り、購買部で買ってきた総菜パンをかじりながら堀田は聞いてきた。
「何だよ、藪から棒に。いねーよ、そんなもん」
堀田の口から『推し』なんて言葉が出てくるなんて、初めてじゃないか?
いつも内気で、アイドルの話なんかしたこともない。
せいぜいゲームのキャラの話をするだけで、
その時ですら「好きなキャラ何~?」くらいなもんだ。
「僕の携帯の待ち受けなんだけどさ……、大森にだけ見せるよ。大森なら、見ても笑わないでくれるだろうし」
まぁ、見るくらいならいいか。
強制的に、お前も蠟人ぎょ……ファンにしてやろうかー!!
とかだったらお断りだが。
そんなことを思いながら、量の少ない可愛らしい弁当をあっという間に完食し、口の中の残りもお茶で流し込む。
「ほらね、僕の推しのマリアン・オラエノちゃん。可愛いでしょ?」
ブーーーー!!!!!
思わずお茶を噴き出した。
「きったないなぁ! 僕のマリアンちゃんにお茶かけるなよ!!」
スマホの画面を制服の袖で拭きながら、キッっと睨んでくる堀田。
「わりぃ、わりぃ。でも、マリアンって転校してきたばっかりだろ? それなのに突然、推しとか言うもんだから」
そう、マリアンは俺と同じ高校に転校? 編入? してきたばかりだ。
なんでも、異世界では家庭教師がいて、学校生活を送る機会がなかったらしく、
学校生活をしてみたいと、セバスワルドに懇願したのが事の発端だ。
困ったセバスワルドは、マリアンの希望を叶えるために、
「なんとかなりませんか?」
と俺の親父に、頼み込んできた。
異世界から押しかけて来た令嬢マリアンは、大量の金貨を日本で換金していた。
それで、だいぶ懐に余裕があるようで、お金に糸目はつけないとのこと。
たまたま、この高校の校長が親父の知り合いで、この話を伝えたところ、
経営も傾いていたため、喜んで飛びついてきたそうだ。
俗にいう裏口入が……win win 入学とでも言っておこう。
……この学校、大丈夫か?
そして俺も、この世界に不慣れなお嬢様を助けて欲しいと、セバスワルドに頼まれている。
陰では支えるが、関係性は必要最低限の人にしか明かさないという条件で承諾した。
こんな経緯があって、マリアンは無事に同じ高校に入学してきたわけだ。
ところが、ルックスが良くて、『人前では』お淑やかで人当たりが良い、可愛らしい性格のマリアンのことだ。
まさに、The お嬢様! というオーラを醸し出し、登校初日から学校で人気ナンバーワンの座に輝いた。
数人から告白されたり、ファンクラブや親衛隊なんかも出来たりしているらしい。
「僕さぁ、実はマリアンちゃんが異世界にいた頃から、ずっと配信見てるんだよ」
堀田の話を聞いて、俺の顔は引きつった。
「へ、へぇ…… マリアンって異世界から来てたのかぁ。 知らんかったわー」
俺の聖剣ダイコンカリバーが炸裂してしまった。
見よ!この演技力の無さ!
「マリアンちゃんってさぁ、異世界ではドラゴンと戦ったりもしていたんだよ。その頃のマリアンちゃんを知っているのが、僕の自慢なんだぁ」
やべぇ、ドラゴン戦を見られていたのか!?
でもこの様子だと、モブ=俺だとはワンチャン気付いてない?
「そ、そっかぁ。ド、ドドド、ドラゴン戦ねぇ」
余計なことを言わないように、上手く受け流そうと試みた。
「何? その反応。僕の言うこと信じてないの?」
ダメだ。
ダイコンカリバーが、俺の手から離れてくれない。
「そんなことねぇよ。あるわけないじゃん。推しの事で嘘を吐くはずないもんな! それはとても良いことだ!」
ビビアンが転校してきてからわかったことだが、学校には意外とリスナーさんがいた。
まぁリスナーさんじゃなくとも、
彼女が廊下を歩くだけで、男女問わずみんな振り返るほどの人気者なのだが。
しかし、俺はあくまでも他人を装い知らないふり、興味のないふりを貫いている。
何故かと言うと、ビビアンとの関係がもしもバレたら、平穏な高校生活が送れなくなるからだ。
付き合っている、付き合ってない等を聞かれる……だけならまだいい。
最も恐ろしいのは、堀田みたいな奴の、オタトークに付き合わされたり、全校生徒を敵に回すようなことになって、俺の高校生活が終わりを迎えることだ。
それだけは避けたいからな。
まぁ、もうすでに堀田によってオタトークには付き合わされているが……
俺の家に、異世界からのおしかけ令嬢マリアンがいるのは、最高機密情報なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます