第2話
「御注文は? あれれれ??」
「へ?!」
ぼくは目を疑った。
お盆片手の浴衣姿の女の子だった。
それで、高校の先輩。ぼくの憧れていた人。けど、ちょっと違う。生徒全員の憧れの的でもあった。
髪を右端で軽く結っていて、それ以外は長い髪が自由に腰へと流れている。紫色の浴衣は、金色の金魚の刺繍が所々にしてあった。
だいぶ遅くに来た僕は、満員のためカウンター席にも座れずにいた。店の隅で阿波野さんと会話することにした。
「珍しいわね。こんなところであなたと会うなんて」
「え、あー。そうだね」
「久々に会ったとも言うわね」
「あー、確かにね。学校は今は少しお休みなんだよ」
「あ、どうぞ」
「ありがと」
「それね、このお店でちょっと自慢のほうじ茶なのよね」
「ふーん」
「美味しい?」
「まだ飲んでないよ」
二人で他愛ない会話をしていたら、もう閉店時間だった。
無理もない。
先輩とのお話は楽しい。
客が少しずつ帰っていき、店員も帰り支度をしている。
しばらくすると、お茶屋には、ぼくと阿波野さん二人っきりになっていた。
「帰ろうか?」
どことなく阿波野さんが言った。
「そうだね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます