第2話

「御注文は? あれれれ??」

「へ?!」


 ぼくは目を疑った。

 

 お盆片手の浴衣姿の女の子だった。


 それで、高校の同級生のぼくの憧れていた人。けど、ちょっと違う。クラス全員の憧れの的でもあった。


 髪を右端で軽く結っていて、それ以外は長い髪が自由に腰へと流れている。紫色の浴衣は、金色の金魚の刺繍が所々にしてあった。


 だいぶ遅くに来た僕は、カウンター席にも座れずにいた。店の隅で阿波野さんと会話することにした。

 

「珍しいわね。こんなところであなたと会うなんて」

「え、あー。そうだね」

「久々に会ったとも言うわね」

「あー、確かにね。学校は今は少しお休みなんだよ」

「あ、どうぞ」

「ありがと」 

「それね、このお店でちょっと自慢のほうじ茶なのよね」

「ふーん」

「美味しい?」

「まだ飲んでないよ」


 二人で他愛ない会話をしていたら、もう閉店時間だった。


 無理もない。

 

 客が帰っていき、店員も帰り支度をしている。


 しばらくすると、お茶屋には、ぼくと阿波野さん二人っきりになっていた。


「帰ろうか?」

 どことなく阿波野さんが言った。


「そうだね」

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