第135話 水中洞窟 普通の女の子

「おお!こんな所に洞窟なんてあるんだ!」


「カイとビビの秘密の場所、すごい綺麗」

現在シロとイルカ達に掴まり海底散策中。

なぜ水族館に水中洞窟があるのかは全くの不明である。


所々に光が差し込み、サンゴがキラキラと輝いている。そんな洞窟を進むと広い空間に出た。


「綺麗だなぁ…いや、神秘的か?」

天井から差し込んだ光の柱、写真でも撮って帰りたいくらいだ。


「すごい綺麗!ビビ!カイ!ありがとう!」

2頭のイルカはキュイキュイと鳴き、シロにじゃれついている。


神秘的な洞窟でイルカと戯れる美少女か…こんなに綺麗なものって世界にいくつもないんだろうな…。


そしてイルカとじゃれつきすぎてシロの水着取れそうになってるな…。

シロは気がついてないけど…こんなに教えるか迷う事なんて世界にいくつもないんだろうな…。


「ちょ!ビビ!そんなにしたら水着取れちゃう!」


ビビはシロの胸に頭を擦り付け、水着が上にずり上がったかたちになってしまった!大変!世界にいくつもないくらい大変だ!


シロは慌てて水着を直し、赤面しながらこっちを見てきた。


「ショウ…見た?」


「ん?ん?見てないが?何の話だが?」


「そう…良かった。で、どうだった?」


「良かったが?」

少し考えたシロはビビとカイに命令を出した。


「ショウの水着脱がしてきて」

猛スピードで僕の水着に向かって泳いでくるイルカ達。

やめて!今は本当にマズい!刺激も良く無い!僕達友達じゃん?何かが失墜するから!!


本当に危ないところで近くまで泳いで来ていたシロからストップがかかり、なんとか危機は脱した。危うく失墜するところだった。多分結構大切なやつ。


「ショウに胸見られた、前は揉まれた…私だけ恥ずかしいのは不公平」

あのバスケの時ですか?いやはや、毎度ご馳走様でございます。


「ショウも恥ずかしい思いした方が良いと思う!」

何を思ったのかシロは僕に抱きついてきた。なんで!?いや、なんで?!でも柔らかい!やった!


「…恥ずかしい?」


「とりあえず頭で理解できない感じ!でも多分恥ずかしい!」


「ふふん、ショウを恥ずかしがらせた」

そう言うと満足したのか僕から離れるシロ、冷静に考えると結構恥ずかしい気も…


満足げにしているシロだったが僕の水着に目を落とした瞬間…


「……~~~っ!!」

顔を真っ赤にし後ろを向いてしまった。どうしたの?

僕の水着に何か…。


ありゃまー!!!


「シロさん!!違うんです!これはその…あの…違うんですよ!そう!結構違う感じです!!大違い!」

だって逆に反応しない方がおかしくないですか?何てったって僕童貞ですよ!


「だだだ大丈夫!びっくりしただけ!男の子だから仕方ない!」

本当にだだだ大丈夫?ちょっと待ってね、今駄菓子屋のおばあちゃんの顔思い出してるから。



……………。



「もう大丈夫みたいです…」


「本当?意外に早い」

鮮明に思い出したからね、危うく駄菓子まで買うところだったよ。


「そろそろ戻る?なんか少しお腹空いちゃったよ」


「そうする、ビビ、カイ、帰りも宜しくね」

僕達は洞窟を抜けてイルカショー会場まで戻る。途中でホノカとゼルを見つけた。


「なんか良い雰囲気じゃない?」


「うん、邪魔しちゃ悪いかな」


「あれ?こっちに気付いたね」


「邪魔しちゃったかな…上がったら合流する?」


「うーん、まあそうしようか」

僕達は手で合図を送り、地上を目指した。



【ホノカとゼル】


「でね!いきなり大砲撃たれて聖剣折られちゃったの!」


「ショウの大砲はすごいねぇ、そしてその聖剣を直しちゃうんだから本当にこの地下室ってすごいよね!」


ゼルと手を繋いでたわいもない話をしながら水族館を歩く。

ゼルは優しいし安心感がある。

幸福感を与えてくれる、そんな人。


「あ!あの魚はなんだい?とても面白い形をしているね!」


「タコって言うらしいわよ、でも食べると美味しいの!たこ焼きっていう料理があるのよ」


「たこ焼き?タコを焼くだけかい?」


「なんか丸くてね、うーん…美味しいの!」


「是非食べてみたいな!今度一緒に食べようよ!」


「え?うん!食べましょう!今度…また今度会えるのよね!」


「今日で大丈夫だったから大丈夫さ!僕はね、一度ゆっくりと勇者とお喋りしたかったんだよ!」


「え、うん…勇者とね…そうなんだ…」

勇者と…か、ゼルは勇者に興味があったんだ…。ホノカじゃなくて…勇者にか…。


私は少しだけ、ほんの少しだけ泣きそうになってしまった。ゼルは勇者とか気にしない人だと思ってたんだけどな…。勝手に舞い上がっちゃったな…。


「でもショウが言ってた通り普通の女の子だったね!僕はその…普通の女の子と喋る機会ってほとんどないから新鮮だしとても楽しいよ!」


「え?私は普通の女の子?」


「違うのかい?僕には普通の可愛い女の子に見えるけど…」


「か、可愛い?本当に?私ちゃんと普通かな!?」


「うん!ちゃんと普通っていうのもどうかと思うけど…。僕の花も気に入ってくれたし!僕はホノカみたいな明るい女の子が好きかな!」


「すす…好き!?あの…それってその…どういう感じの…」


好き?私の事!?自分でも顔が真っ赤になっている事が分かる。


「あれ?ショウ達が水槽の中を泳いでるね!魚に掴まってるよ!すごい!」


「え?あ!本当だ!なにあれすごい!」


「向こうに行くみたい!僕達も行ってみようか!」


「そ、そうね!行きましょう!」

好きの意味は気になるけど今は楽しそうなゼルと手を繋げてるだけで幸せかな。


そして私手の汗大丈夫!?ベチャベチャしてない!?



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