第128話 ゴルフ ダンジョン お宝

「ごるふ?なんですかそれ」


風呂上がりのレイさんにゴルフのお誘い、ゼルとヴォルフには風呂の中で説明済みだ。


「球を穴に入れるスポーツですよ」


「棒ではなくてですか?」

ん?棒?何言ってるのレイさん。困るよ急に。


まあまず行きましょうとアクティベートしたゴルフ場にみんなで向かう。


「楽しみだね!きっとまた面白いんだろうな!」

「紳士のスポーツらしいが俺にもできるだろうか…」

「本当に棒ではないんですね?ショウ様以外とは流石に…」


とりあえず行き先がベッドルームじゃ無いことを確認しないとレイさんが何かに納得しない。

ポイントは毎度の1000ポイント、期待して良いはずだ。


僕達は新しく出来た扉を開く。


「おお!気持ちいいねぇ、緑の香りが強いね!」


「広いな、ここでどんな大きな球を使うんだ?」


「なるほど、これは健全ですね」

うん。初めから健全だよ。さっきからどうしたの?


「ここでこのゴルフクラブを使ってこの小さい球を飛ばすんだよ。そして遠くに見える穴に少ない打数で入れたら勝ちって感じかな。」


コースは初級から超地獄まで、毎回思うけどこの超地獄ってすごいバカっぽいよね。


とりあえずやって覚えた方が早いという事で全員一打ずつ打ってみる事にした。


「じゃあ僕が打ってみるね、正直やった事ないんだけどなんとなく分かるから」

僕は見よう見まねのフォームで一気に振り抜き…球には当たったものの明後日の方向に飛んでいってしまった。


僕も力が上がってるから難しいなこれ。


「なるほど、なんとなく分かりました。次は私が」

レイさん器用だからな、これは期待だね。


「たしかこんな感じで…」

レイさんはクラブを振り上げ…カキーンとすごい音を出して球を吹き飛ばした。


そしてそのまま空の彼方に…。


「思ったより飛びますねこれ…」

飛びましたね…。隣町とかの窓ガラス割りそう。


「じゃあ次は僕だね!」

「その次は俺ですね!」

そして吹き飛んでいくゴルフボール。


「ちょっとみんな力強すぎるかなぁ…」


「かなり手加減してるんですけど…」

普通におじさんとかもやるスポーツだしちょっと身体能力が違いすぎるのかな。


ちょっとアップデートしてみるか…。何か新しい遊び出るかも。

確認してみるとアップデートに3000ポイント?バカの数字じゃん。


でもそのくらい価値があるのか…まあポイントもう1万とかあるし使っちゃお。


アップデートをするとトレジャーハントモードなるものが追加された。お宝とゴルフになんの関係があるのか疑問しかない。


「なんかトレジャーハントができるらしいよ」


「トレジャー?お宝だな。良いじゃ無いか!」

「どんな宝なんだろうね!ワクワクするよ!」

「冒険者としては見過ごせないですね」


僕もちょっと楽しみだよ。モードを変えると目の前に地下へ続く階段が現れた。もうダンジョンじゃんこれ。


「ダンジョンですね!!早く行きましょう!」

テンションの上がったレイさんに続き僕達もダンジョンに入っていく。中は思ったより明るく、すぐに初めのステージが現れた。


「なんか簡単そうだね!僕がやってみてもいいかい?」

足元にはゴルフボール、数メートル先にカップがあり、その上に3の数字が浮かんでいた。


「多分3球以内に入れろって事だよね。ゼルなら余裕そう」


「じゃあやってみるよ!」

ゼルは軽く打ち、一直線に球はカップに…吸い込まれずに何かに吹き飛ばされた…。


「え?なんだい今の!?急に突風が吹いたよ!?」


「妨害ですね、あの厄介な風まで計算に入れて打たないとダメですね、私が行きます」

そんな感じ?もう紳士のスポーツどころじゃないね。


レイさんは少し考え思いっきり壁の向かって打ち、ゴルフボールはカンカンと壁を反射してカップに沈んだ。

この人も転生者でユニークスキルとか持ってないよね?


「お見事!じゃあ最初の宝箱はレイの物だね!」

「何が入ってるか楽しみだな」


レイさんはフフっと楽しそうに歩いて行き、宝箱を開けるとそこには…


「枕ですね…寝心地は良さそうですが正直宝かと言われると…」


あれ…それって!


「夢見枕だ!レイさんそれ一回だけ自分の好きな夢見られる枕だよ!」


メダルゲームのガチャ景品にあったけどここでも出るのか!欲しい!


「自分の好きな夢が見られるのかい!?すごいね!僕だったら一般の家庭で幸せに暮らしてみたいな!」


「俺は特に…この地下室で酒を飲む夢も良いが…ショウに頼めば叶うからな」


「僕はそうだなぁ!あのねー!えっとねー!」


レイさんは枕を抱き少し考えて口を開いた。

「ショウ様はどんな夢を見るのですか?そこに私はいますでしょうか」


夢の中にレイさん?どうかな…でもみんなで遊ぶ夢を見るなら絶対にいるよ。


僕が答えようとするとレイさんは少し顔を赤くし、

「や、やっぱり今のは無しです!!これは私が使います!!どんな夢を見るかは後で考えるとします!!」


「まあレイさんが獲得したものですしね。レイさんの夢に僕は出たりするんですか?」


「で、出るか出ないかは夢を見ないと分からないですよ!さぁ!次に行きましょう!」

出るか出ないか分かるのがその枕なんですけど…。


次のコースは明るく広い空間、カップは50メートルほど先か。しかし何か飛んでるな…。


「あれは翼竜だね、避けるかぶち抜くかで攻略できるんじゃないかな?」

ゼルもぶち抜くとか言うんだ。意外。


「ここは俺が行こう、ここの宝は期待できるようだしな」

ヴォルフはドライバーを握り大きく振りかぶって球を打ち出す。


しかし翼竜を貫きながら飛んだボールはカップまでもう少しの所で止まってしまった。


「惜しかったね、まあまだ二球もあるし次はいけるんじゃない?」


「いや、あのくらいなら吹けば入るだろう」

吹く?息で?


ヴォルフは息を溜めてフッと吐き出す、すると球はカコンと良い音を立ててカップインした。

だめですよズルしちゃ、でも翼竜とかいるしこのくらい良いか…。


まあこんなもんだなと得意げに宝箱を開けるヴォルフ、中から出てきたのは…。


「なんだこれは…ガラス玉か?説明が一緒に入っているな」


【驚嘆の宝玉】

使用すると使用者以外がビックリします。

使用回数10回。


「意味が分からないのだが…試してみて良いだろうか?害はないと思う」


「ビックリ?まあ良いですけど…」

ヴォルフは宝玉に魔力を流し使用してみる。


「うわっ!!なになに!?」

「おっ!なんだい!急に!」

「キャッ!!一体何が?!」

キャッだって!レイさんのレアな叫び声だ!可愛いぞ!


「本当に驚いただけだな…しかし戦闘中に使えば相手にスキを作る事ができそうだ。これは確かに宝だな。」


「良かったね。僕はレイさんのキャッが聞けただけで満足だよ」


「な…なんですか!もう!からかわないで下さい!」

顔を赤くしてプンプン怒る姿も可愛い!


「みんな良いなぁ、次は僕がやるからね!」

ゼルもやる気満々だね。そりゃあ普通に宝物出るしやりたくもなる。


次のコースは…なんとドラゴンが飛んでいた…。


「立派な竜だけどカップが見当たらないね」


「そうですね、隠されているとか?」


「いや、あのドラゴンの額にあるのがカップではないでしょうか?」

よく見てみると確かにドラゴンの額にカップがある。あそこに打ち込めって言うの?無理じゃね?


「これは分かりやすいね!じゃあやってみようかな!」

3球でいけるの?動いてるしこっち向いてる時間も少ないみたいだよ?


「翼を落とせば簡単さ!」

そう言ってゼルはフルスイングで玉を打ち出し、右の翼の根本を抉り取った。

怖ぁ…。虫殺す小学生じゃん。


バランスを崩したドラゴンは墜落し、ゼルの追い討ちの一球が頭を貫通。

そして完全に動かなくなったドラゴンの額にカコンとカップインした。


二球目必要あった?紳士のスポーツなのに。なんか魔王みたいだったよ。

ドラゴンは消えたから本物じゃないと思うけど。


「簡単だったね!じゃあお宝を貰おうかな!」

ゼルはウキウキで宝箱を開け、中から出てきたのは、


「おお!すごいねこれ!魔力に溢れてる!何に使うんだろう!」


【変幻のブローチ】

使用者が望む者に変身できるブローチ、能力なども変身した者に依存する。しかし見ず知らずの者には変身できない。

ブローチを外すと解除、再使用するまで24時間のクールタイムが必要。


「え…?回数制限無し?なにそれ超当たりじゃん…」


「魔王様以上に強い者がほぼいないから逆に魔王様が獲得するのが一番良いかもな」


「誰にでもなれるんですか?試しに変身してみては?」


「これは嬉しいな!じゃあ試しにショウに変身してみよう!」

ゼルはブローチを使い一瞬で僕に変身した。


「おお!すごいよこれ!魔王の力が全然感じられない!今なら勇者とお茶しても平気だよ!」

僕じゃん…服装はゼルのままだけど、なんか恥ずかしいから戻ってよ!


「あれ?地下室は出せないみたいだ。ユニークスキルは流石に無理か」


「地下室まで出せたらそれこそ僕の存在意義が希薄になっちゃうよ!とりあえずややこしいから戻って!」


「そうかい?まあ今度ゆっくりと試すとしようかな。これなら僕も町で働いたり冒険者になれたりするかも!」

ゼルって普通の生活に憧れてるんだ。これは本当に大当たりだね。


さて、次のコースに行こう!僕も何か欲しい!


そして次のコースに向かう僕達、そして待ち構えていたコースは…。


「これは…なかなかだね…」

「クリアさせる気ない感じですよね」

「これは流石に…」


暴風が吹き荒れ、中心には竜巻。そしてその周りを回る瓦礫の間に一瞬見えるカップ。


あんなの入るわけないじゃん!僕も宝物欲しいのに!

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