第129話 メダルゲーム レイ 呼び出し
「これはかなり厳しいね!」
結局竜巻の中を高速で飛び回るカップにゴルフボールを入れる事は出来ず…僕だけ宝物無しという結果に…。
しかも3球失敗すると5分間はボールを撃てない。
良く出来てんなぁこれ…。
まあ僕は何もしてないからね。今回は諦めよう。
「結構楽しんだし戻ろうか、そろそろのんびりお酒でも飲もうよ」
「そうだね!僕はこの変幻のブローチが貰えたから大満足だよ!」
「私も良い枕を貰いました。ここから数日徹夜します」
何時間寝る気?
「俺はこのビックリ玉か、戦闘が楽になると良いな」
驚嘆の宝珠とかじゃなかったっけ?
「僕はメダルゲームの方で宝を狙うよ、ハズレも多いけど」
「メダルゲーム?なんだいそれ」
そういえば紹介してないしなんならリディ達と遊んでからやってないな。
せっかくなのでみんなでお酒を飲みながらまったりとメダルゲームをする事にしたのだった。
多分楽しめると思うんだけどなぁ…
………………。
「魔王様!この敵は弱そうですよ!!また当たるんじゃないですか!?」
「そうだね!でもさっきの敵にもギリギリで負けたし油断出来ないね!!」
「お!何か技を出しましたよ!これは勝つでしょう!
「流れが来てるね!お!勝ったんじゃないか!!」
「「わーい!」」
ゼルとヴォルフは二人で同じ椅子に座りはしゃいでいる。
楽しそうで何よりだよ魔王軍。
最初遊び方はよく分からないままただメダルを投入するだけだったが、今では液晶の演出に一喜一憂している。どハマりだね。
一席に投入口が二つあるので並んで遊ぼうという事になりゼルとヴォルフ、僕とレイさんが同じ席で遊んでいる。肩が触れ合う距離!やった!近い!
「ショウ様!また勝ちましたよ!!覇道を歩んでますこの冒険者!」
レイさんもとても楽しんでいますね。無邪気な笑顔が眩しいですよ。
しかしまだジャックポットチャンスには到達していないのでみんなはこの部屋の天井が開き星空が現れる事を知らない。
せっかくなのでサプライズで黙っておこうと思ったのだ。
「しかし魔法のガチャというのが一回2000枚なんですよね?本当に貯まるんですかそんなに」
「このボールを落としてジャックポットチャンスっていうところに入ればなんとかなるんだよ」
実際ドカンと一撃を当てないと減り続けるゲームだしね。
「お!初めて赤い穴に入ったよ!」
「魔王様!きっとすごいメダルが出るんですよ!」
丁度良いところでゼルとヴォルフがジャックポットチャンスまで到達したらしい。
そして天井が開き満点の星空が現れる。
「おお!なんだいこれ!すごいね!上からキラキラした球が転がってくるよ!!」
「きっとまた赤い穴に入れば良いんですよ!!
ゼルは分かるけどヴォルフも目をキラキラさせて星空を見上げている。なんか可愛いなヴォルフ。
「す、すごいですね…まさか地下で星空を見る事になるとは…とても…素敵ですね」
うっとりとした顔で空を見上げる横顔、カメラ持ってくれば良かったよ。
【ボタンを押して運命を選択して下さい】
いつものアナウンスの後にゼル達の前にボタンが現れる。
「自分でタイミングを決められるんだね!僕が押して良いかい!?」
「えぇ!俺も押したいですよ!」
え?譲らないの?上司みたいなもんじゃないの?
「じゃあ同時に押そう!それなら良いよね!」
「そうですね!タイミングは俺が決めて良いですか?」
「いやタイミングは僕さ!それは譲れないよ!」
いや早く押せよ…どっちでも変わらないし首がもう痛いよ。
結局今回はゼルで次回はヴォルフという事に決まったようだ。魔王って王だからね。ヴォルフさんも流石に引いたか。
「ここだね!!」
当たりは6分の1、コロコロと障害物にぶつかりながらルーレットに到着、しかし当たり穴の手前の500枚の穴に吸い込まれてしまった。
「あぁ!惜しいね!入ったかと思ったよ!!」
「ギリギリでしたね!でも500枚も出るみたいですよ!」
そして音楽と共にキラキラと降り注ぐメダル、これ本当に綺麗だよね。
しかし僕はジャックポットを見た事があるからな。こんなもんじゃないぜあれ。
500枚は一瞬で降り注ぎ、また天井が閉まる。レイさんは我に返りひたすらにメダルを投入していく。
「私もあのボタン押したいです!!ショウ様もメダルの投入を!」
そう言いながらチャリンチャリンと笑顔でメダルを投入するレイさん。
是非にでもあの星が降り注ぐジャックポットを見せてあげたい。
「確変です!今のうちにボールをいっぱい落としましょう!」
確率変動ね、確変です!って略すと急にギャンブル感が出ちゃうんだよ不思議と。
調子良く確率変動が続き、立て続けにボールが落ちていく。しかし中々ジャックポットチャンスまでいけないなぁ。
「魔王様!赤い穴に入りましたよ!!次こそは俺がボタン押しますからね!!」
「約束だからね!でもその次は僕さ!」
調子良いなぁ魔王軍…僕もレイさんにボタン押させてあげたいんだけど。
「私達も負けてられません!今のうちにボールを落とし続けましょう!」
もうヴォルフ達のジャックポットチャンスになど目もくれずにメダルを投入するレイさん。
僕も手伝おう!
「このタイミングだ!間違いない!」
ヴォルフはどうやら間違いないタイミングでボタンを押したらしいが当たりとは逆方向の穴に入り200枚の間違いない払い出しとなった。
「なんてこった!やられた!」
ヴォルフなんかキャラおかしくなってない?
「次があるさ!頑張ろう!」
こっちだって結構ボール落としたしそろそろ…。
「ショウ様!ついに赤い穴に入りました!ボタンが押せますよ!」
「おお!本当だ!頑張って下さい!」
閉まりかけていた天井が再度開き、キラキラとしたボールが降りてくる。
しかし何か違和感が…。
「なんですか?あの光の魚は?」
ジャックポットを決めるルーレットにキラキラした魚が群がり、ハズレ穴を塞いでいく。
こんな演出あったんだ。奥が深いなぁこれ。
「2分の1になりましたよ!大チャンスです!」
「なんだいあれ!僕達の時はあんなのなかったのに!」
「これは当たりそうだな!」
【ボタンを押して運命を選択して下さい】
「ショウ様!ボタンです!しかも大チャンスですよ!」
「是非当てて下さい!すごいんで!本当にすごいんで!」
「あ、あの!一緒に押しましょう!」
そう言ってレイさんは僕の手を取り、ボタンの上で二人の手が重なった。
「いきます!!ここです!!」
二人は手を重ねたまま空を見上げる。
「危ない!いや!超えました!!」
ハズレ穴に落ちかけたボールは角で弾かれ、そのまま当たり穴に向かっていく。これは決まったな。
『ジャックポットゲット!Congratulations!!』
見事にジャックポットを獲得、ファンファーレが鳴り響き星空の光がメダルになって降り注ぐ。
「やったぁ!やりましたねショウ様!!お星様が降ってきてる!すごい綺麗!!」
レイさんがドラゴン討伐した時みたいにはしゃいでる!お星様だって!可愛い!
「おお!これは素晴らしいね!星降りなんて初めて見たよ!」
「俺たちも惜しかったんですけどね!まだまだ時間はありますよ!」
降り注ぐ三万枚のメダルを手を繋いで眺める。なんだこれ!ロマンチックじゃん!
全ての光が降り注ぎ、僕たちの手元には二万枚強のメダル、結構ガチャ引けるな。
「すごかったですね…感動してしまいました。これで魔法のガチャというのが引けるんですよね。やってみましょう」
「僕達はガチャ行くけどゼル達はどうする?」
「僕達はまだやるよ!まだ当ててないからね!」
「あの星を降らすまでは帰れませんね!」
まあほどほどにね…。
「あの枕が当たるんですよね?他には何が出るんですか?」
「まあハズレだと石とか出るよ、宝石も出たりするけどね」
「石って…まあ10回やってもメダルは余りますからね。早速回していきましょう」
「そうだね、多分まだ色々と当たりがあると思うんだ」
そして10回分回した結果当たりっぽいのは3個だ。
【忘却の翡翠】
これを使用すると10分間相手は記憶を失う。
使用限度回数3回。
【ふんわりリボン】
身体が軽くなりスピードが格段に上がる。
【無効化の真珠】
致命的なダメージを受けても一度だけ無効化できる。
使い終わると割れます。
そのほかはかっこいい石だの折れやすい紙だのとまぁハズレばかりだ。
「忘却の翡翠ですか…使ってから10分間は何をしても良いと…ふむ…」
レイさんは何か考えている、何に使うの?僕は大して使い道無いと思うけど。記憶はないけど意識失う訳じゃないんでしょ?
「ちょっと失礼しますね、えいっ!」
「ふぅ…ご馳走様でした」
ん?
「今何かありました?少し息上がってません?」
「べ、別に何もしていないですよ。確かに記憶を無くしているようですね」
「え?使ったんですかそれ!10分間何があったんですか!?」
「いや別に何もないですよ?じゃあ次に参りましょう」
えぇ…なんかすごい勿体無い事忘れてる気がする!
「このリボンは良さそうですね。ちょっと付けてみます」
ふんわりリボンを付けたレイさん、おお!ふんわりしてる!
「ちょ、これは使えないです!!」
ふんわりとしているのは身体だけではなく衣服も同じで何もしていないのにスカートがフワフワと…白か…。
「良いんじゃないですか!!スピード上がるなら!!」
「ちょっとショウ様!見過ぎです!!」
レイさんは慌ててリボンを外してしまった…。新感覚だったよ。ありがとうございます本当。
「しかも身体が軽くなるので攻撃に体重が乗りません、移動の時は良いですが戦闘には使えないですね」
なるほど…真面目な理由もあるのか。
「まぁこれでお互い様という事で…。この無効化の真珠はショウ様が持ってて下さい。いざという時の為に」
お互い様?本当に10分間で何したの?
「良いんですか?レイさんの方が危険な場所行くのに」
「良いんです、ショウ様が持ってて下さい」
「じゃあありがたく貰います!次に同じアイテムが出たらレイさんに渡しますね!」
「私は結構強いので大丈夫ですよ」
そう言って優しく笑うレイさん。この人はいつも優しい素敵な人なんだよね。
「もう少し遊びましょう!またメダル増えるかも!」
「そうですね!お酒追加して遊びましょうか!」
この日は夜中までお酒を飲みながらメダルゲームをした。
結局あれからジャックポットは出なかったがみんな楽しかったみたいだ。
「悔しいけどもう眠いね!僕は仮眠させて貰って帰ろうかな!」
「俺も少し寝てギルドに報告にいかねば」
「そうですね、ショウ様、寝室までお供致します」
「いやいや、お供致されたら色々と大変だよ…僕だって男の子だし。童貞の」
「冗談ですよ、私も仮眠させて頂きます。今日は満足したので枕は普通の物を使いますけどね」
本当に冗談?僕がじゃあ一緒に寝ようかって言ったらどうしてたの?気になる!
そして仮眠とは名ばかりに全員しっかり寝て翌朝を迎えたのだった。
「じゃあ僕は帰るね!また遊ぼう!」
ゼルはバイクで帰るらしく手を振って地下室を後にした。
「私達はギルドに報告ですね、その後別の依頼を受けようかと思います」
レイさんとヴォルフはギルドにドッペルゲンガー討伐の報告、A級冒険者は忙しいからな。僕以外。
僕も依頼を受けようかと考えながらソファでコーヒーを飲んでいるとなんとも神々しい頭の悪そうな声が聞こえてきた。
「ショウさん!おはようございます!」
「はい、おはよう、いつ帰るの?」
「来たばっかりですよ!今日はちゃんと仕事です!絶対神がショウさんに会いたいって言うから呼びに来ましたよ!」
「はぁ?なんで?やだよ僕そんな人知らないし」
「今から知るんです!ダメです!ほら!行きますよ!!」
僕はサキエルに引っ張られて謎の光の中に入っていく。
なんなの急に…絶対ろくな事無いよ…。
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