第127話 モトクロス 

「これは素晴らしい!まさに冒険者の乗り物!」

違います。今は魔王と竜とオーガの乗り物です。

でもメイドも乗ります。


レイさんはゼルのバイクに乗せて貰い上機嫌、もう自分の物のように乗りこなしている。


「レイも僕のラストフェンリルの良さが分かるんだね!格好いいでしょ!」

ゼルも自分の子供が褒められているようで嬉しいらしい。僕のバイクだぞ!返せ!とはならないよね。


「次は俺も乗りたいのだが…」

ヴォルフさん…良いですよ。自分の作りましょう。


レイさんを呼び戻し、僕たちはゴーカートへと向かう。

一瞬バイクってどこだっけ?と思ったがあのバイクはゴーカートから持ち出してるんだ。もう面影も無いよね。


「ここで好きなバイクを作っても宜しいのですか!?これは気分が昂まりますね!!」


「ショウには世話になってばかりだな…今度何か土産を持ってこよう」

一応幸せポイントで還元されてるから大丈夫だよ。

もう消費が追いついて無いけどね。


「さっきゼルさんのバイクを乗って思ったのですが…冒険者の私はもう少し荒地に対応した物でないと不便かも知れないですね」


「モトクロスバイクっていうのがあるみたいよ、僕も詳しくは知らないんだけど」

軽量化されサスペンションが優秀なバイクって事しか知らないんだけど、多分レイさんみたいな人はそっちの方が良いかも。


「なんだいそれ!僕も欲しいな!バイクは何台あっても困らないからね!」

みんな遠慮しないのは助かる。図々しいくらいがこの地下室では丁度良いんだ。


「俺もそれにしよう!」

全員自分のモトクロス用バイクを作成、それぞれこだわりがあるようで結構時間がかかったな。


「出来ました!名前は黒麒麟です!」

大丈夫!?その名前大丈夫!?

真っ黒!限界まで軽量化されたバイク!名前以外は何も問題ない!


「俺もできたぞ、名前は…そうだなぁ、ヴォルフスペシャルだな」

だっせぇ!名前変えたほうが良いよ!

ヴォルフさんのバイクは茶色とカーキ色の渋めのバイクだ。みんなド派手だったからなんか落ち着く。

名前以外は。


「僕のはどうだい!ファントムライドさ!」

モノクロの車体にしたんだ。前のが銀ピカだったから派手なの好きだと思ってたよ。


僕は空の色が好きだからまた水色にした。名前はフリーだ。シンプルイズベスト!


早速走りたいという事でモトクロス用のコースを出してみたのだが初級だと満足しなそうな面子なので試しに地獄級にしてみた…


「いやこれ怖いよ、なにあれ崖とかあるしジャンプ台の下が奈落だよ?底見えないよ?」


「このくらいの方が盛り上がるさ!さぁ!勝負といこうか!」


「このくらいのコースで良いでしょう。実際の冒険もこのくらいの道ありますし」

あるの?そんな地獄のような場所に何しに行く気?


「腕試しには丁度いいな、緊張感がなければ練習にならないからな」

じゃあ爆弾でも積んで平地走ったって一緒だよ…


流石に僕では無理そうなので観戦する事にした。だって素人だよ?怪我しないとはいえ無理だよこんなの。

心がオフロードになっちゃう。


全員スタート位置に並び、スタートの合図と共に飛び出していく。


はじめに飛び出したのはレイさんだ、本当に人間なのか最近疑ってるよ僕は。


「出遅れちゃったね!でもここからさ!」


「なかなか難しいな…しかし負けるワケにはいかない!」

土埃が上がり、水溜まりなども気にせず爆走するからみんな泥だらけだ。しかし眩しいくらいの笑顔、僕もやれば良かったかな…楽しそう。


そして初めのジャンプ台に向かって全員フルスロットルで突っ込む。何メートル飛ぶんだ?もう映画じゃん。


「これは気持ちいいね!羽でも付けたら良かったよ!」

「確かに!飛んだ後に開くタイプだと良いですね!」

「魔力が使えればなんとかなるかもな!」


うーん…それはダメだね。ギリアウトって感じ。


そしてほぼ直角の壁を下り、タイヤ幅ギリギリの道を猛スピードで進み…。


激流の川を横断、木々の間をすり抜け一番最初に帰ってきたのは…。


「やったやった!!私が一番です!!」

嬉しいとはしゃぎだす冒険者メイド、レイさんだった。


「レイはコース取りが上手いね!完敗だよ!」

二位はゼル、そして少し遅れてヴォルフだ。


「一度制御できずに転んでしまった…ごめんなヴォルフスペシャル…」

ねぇ名前なんとかならない?


「みんな泥だらけだからとりあえず風呂行って来なよ、すごいわんぱくな感じになってるよ」


「そうだね!バイクも一緒に洗おうか!」


「酒も飲みたいしな!」


「そうですね、中までドロドロです」

中まで!?それはどこからどこまで!?気になります!!


僕も一緒に風呂に入りのんびり酒を…と思ったのだが。

ゼルとヴォルフは一生懸命にバイクを洗っている。素っ裸でバイクを洗う男達…異質だよ。


「綺麗になったね、最後にリンスで仕上げだ!」

「そうですね!きっとピカピカに…」

ダメダメダメ!なんかよく分からないけどダメだよきっと!過去に前例がない!!


「あとでメンテナンス用の道具出すから!リンスはきっと良くないし意味ないよ!」


「それは助かるね!じゃあこのくらいにしてお風呂に入ろうか」

「そうしましょう、泥は落とせましたからね」


そして風呂でいつもの日本酒、最近こんなんばっかだな。


「次は何して遊ぶ?麻雀もいいし人生ゲームももう一回やっても良いなぁ」

ゼルは人生ゲームがお気に入りか、帰って花育てたくらいだもんね。


「ショウの地下室は娯楽が多いから迷ってしまうな」


実は一つ考えてる施設があるんだよね。

力と技術が必要なアレ、きっとみんな楽しめると思う。

ゴルフなんてどうだい?

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