第87話 魔族 泥酔 泥酔

ワインってこれで良いんだよな…

ユキさんに頼まれたワインを村で買って僕はアルカリスの町を目指す。


ギルドに着くと中は静まり帰っており、ローブを着た男が受付で何か喋っている。

その様子を冒険者は不安そうに眺めていた。


受付はユキさんだしちょっと気になる。

僕は受付に近づきユキさんに声をかけた。


「今帰りましたよ!これ、お土産のワインです!」


「あ!ショウさん、帰ったんですね。」

ユキさんが僕に声をかけると男はこちらを振り返った。

ん?牙がある?ローブで隠してはいるけど角もある?魔族か?


「その角格好いいね、魔族の人?」

ゼルと会ってから魔族へのイメージが変わった。悪いヤツは一握りだそうだし、ユキさんが普通に話しているからまあ安全なんだろう。


「俺が怖く無いのか?力のある冒険者か?」


「まあ怖くはないね、僕自身強いワケじゃ無いんだけど魔族って言っても怖い人ばっかりじゃないんでしょ?」


「そう言って貰えるとありがたい、やはりこの見た目では怖がられてしまってな…」

だからギルドがこんなに静まり返ってる訳ね。全くビビりばっかりだぜ。


「冒険者登録をしたいらしいんですけど実は前例が無くて…」


「俺は魔王領では名の知れた冒険者なのだが…こっちの王国も見てみたくて出てきたんだ。最近噂の地下室で敵を倒す最強の冒険者にも会ってみたくてな。」


へーそんな人いるんだ。不思議な人もいるんだね。


「会ってどうするの?戦いたいとか言わないよね?」


「戦ってもしょうがない、俺はもっと強くなりたいんだ。強さの秘訣などを聞けたらなと思っている」

聞けないんじゃないかなー?多分酒飲まされて風呂入れられて麻雀とかさせられるだけだと思うなー。


「その地下室の人はそこにいるショウさんですよ?」

ちょっとユキさん!まだ早いと思う!どうなるか分からないと思うな!


「そうだったのか!俺の名前はヴォルフ!是非話を聞かせて貰いたい!」

なんの話聞く?大砲のボタンの押し方とか?


「冒険者登録は良いの?」


「うーむ、困ると言えば困る…出来ないとなると金が…」

ヴォルフにも生活があるんだもんなぁ。なんとかならないかな。


「俺が見極めよう!」

ローガンさん?久しぶりじゃないっすか。

ギルド長で忙しすぎて部屋から出られない可哀想な人。

ちなみに釣りが大好きだ。


「どうしたんですか急に出てきて」


「俺がこの男が冒険者に相応しいか見極めよう!」

仕事は良いの?まあギルド長だし文句は出ないと思うけど。


「ショウ君も一緒だ!緊急依頼を出そう!」

なんで?僕はヴォルフとお茶でもすれば五分で話尽きるからそれで良くない?


「ギルド長!それだったら私が行きたいんですけど!!」

ユキさん?ユキさんと一緒なら何処にでも行くよ僕。


「俺は3ヶ月も休みを取っていない!!」


「ぐぬぬ…」

ぐぬぬだ!ユキさんのぐぬぬは本当に負けた時のぐぬぬだぞ!


そんなこんなで今僕とローガンさん、ヴォルフは釣り堀に来ている。


「訳が分からないのだがこの施設はなんだ?随分巨大だが…あと俺は今何をさせられているんだ?」

困惑するよね。これ絶対ローガンさんが遊びたかっただけだよ。


「ショウ君、調理道具は持ってきているから醤油とワサビ、あと良ければ酒もくれないか?報酬を上乗せするから」

俺が見極める!!とか言ってなかった?何を見極めるの?食文化?


まあギルドにはお世話になってるしな。

僕は大量の酒をクーラーボックスに入れて持って来た。


「まあヴォルフも飲もうよ、お酒飲める?」

缶ビールもたまには良いよね。


「酒か!?実は俺は大の酒好きでな!頂こう!」


グイっとビールを飲み干すヴォルフ、

「これは美味いなぁ!!もう一本貰えるか!?」

早くね?まあどんどん飲もう。魚釣りながらさ。


数時間後


「おっとコレはタイだな!引きで分かるぞ!あの引き締まった身がまた美味いんだ!」

めっちゃ楽しんでるじゃんヴォルフさん。


「俺はイカだな!!ヴォルフ君、こいつも美味いぞ!!」

ガハハと豪快の笑いながら酒を飲み刺身を食う二人。魚だけではなんなので唐揚げとビーフジャーキーも追加した。


「このブランデー?という酒は最高だ!!こんな上質な酒なんて飲んだ事ないぞ!」


「いやいやヴォルフ君!ウィスキーも美味いんだ!ハイボールという炭酸で割る酒があってだな!」


そしてまた数時間後。


「もうヴォルフはBランク冒険者で登録でいいだろ!こんな愉快なヤツをCランク以下になんかしてらんねーよ」


「本当かローガン?お前良いやつだなぁ!」

良いの?愉快なヤツがBランクならピエロとかAランクになっちゃうよ!そしてCランク以下が愉快じゃない奴らって思われるよ!


完全に意気投合した二人、楽しそうだから良いけど…


またまた数時間後


「ショウって七聖竜の知り合いいんの?まじかよ!すげぇな!」


「うちのAランク冒険者だからな!ショウはすごいんだぞ!」


「まじまじ!結構仲良いんだから!なんなら会いに行ってみる?どーせ暇してんだよアイツら!」


「「行く行くー!」」

全員泥酔し完全に二次会行く人ーのノリで七聖竜に会いに行く事にした。


「「「ゴーゴー!七聖竜!ゴーゴー!七聖竜!!」」」

僕たちは肩を組んで酒を飲みながらエルナがいる洞窟を目指す。もう僕達を止められるヤツなんていないんだ。


「ちょりーっす!エルナーいるー?」


「ショウじゃん?久しぶりじゃね?うわっ酒臭えじゃんウケる」


「俺の兄弟が七聖竜見たいってんで連れてきたぞー!!」


「なにそれウケる、七聖竜のエルナディアでーす♪エルナでいいよー」

黒髪色白の清楚な顔、その口から発せられるギャルギャルしい言葉、こいつが七聖龍のエルナディアだ。


「おお!この方が七聖竜!!俺はヴォルフ!会えて光栄です!ささ!私が釣った魚でブランデーでも!」


「まじ?超サンキュー!!」


数時間後…


「アハハ!まじウケるんですけど!!この魚超うめぇし!」


「日本酒も美味いなぁ!エルナさんもどうですかこの酒!」


「ガハハ!美味すぎて笑いが止まんねぇな!」


「そういやこの前ゼフィラードに会ったよ!嵐鳴竜の!」


「まじ?アイツ元気してんの?ちょっと会いに行ってみねぇ?絶対喜ぶっしょ!」


「二人目の七聖竜?これは会いに行くしかないな!」


「俺も初めてだな!どれ!行ってみるか!!」


「「「「ゴーゴー!嵐鳴竜!ゴーゴー嵐鳴竜!!」」」」

四人で肩を組みゼフのいる村を目指す。

何度も言うが僕たちを止められるヤツなんかいないぜ!


そしてほどなくしてゼフの村に到着した。


「おーいゼフー!久しぶりに飲もうぜー!エルナディアと兄弟連れてきてっからー!!」


「ショウやないか!久しぶりやのお!うおっ酒臭!!泥酔しとるやんけ!!」


「あなたが嵐鳴竜のゼフィラード様ですか!私はヴォルフといいます!是非私が釣ったマグロで日本酒でも!」


「俺が釣ったイカもうめぇぞ!一緒に飲もうぜゼフィラード!」


「ゼフでええわ、楽しそうやのぉ、んじゃちょっとお邪魔するわ、お?エルナディアやん!久しいのう!!」


「ゼフィラードお久しーおっすおっす!まず飲むべ!話はそれからっしょ!!」


「村の奴らもええか?みんな地下室で遊ぶの楽しみにしてたんや。」


「ええでええでー、僕の地下室で遊んでいきなよー」


「おおきに!!おーい!ショウが来たでー!地下室で遊ぼうや!!」


村人も総出で地下室で大宴会、なに今日超楽しい。


「やっぱここの酒は美味いのう!染み渡るわ!」


「七聖竜も虜にするショウはすごいな!さぞかし強いんだろうな!」


「いやいや僕なんて大砲ぶっ放すだけだよ!そんな褒めても酒しか出ないぞ!なんつって!」


「がっはっは!じゃあショウ君をベタ褒めしないとなあ!!」


「ショウはマジ強ぇから!ぶっちゃけ七聖竜でも勝つの無理じゃね!」


「そろそろ風呂行こうぜ!風呂で飲む日本酒も最高なんだよ!」


「「「「「行く行くーー」」」」」

そしてヒール風呂に使って完全に酒が抜けた五人、エルナはしっかりタオルを巻いているあたりルナよりはしっかりしているようだ。


「いや、楽しかったのは楽しかったのだが…俺は何をしに魔王領を出てきたんだ…」

ヴォルフさん正気に戻ってちょっと困惑しちゃってるじゃん。


「まあ楽しいのは良い事っしょ!新しい出会いが何よりの宝っつってね。」

エルナの見た目でタオル巻いてると正直全裸よりもグっと来るものがあるんだが…


「まあ何があったかは知らんがええやろ、魔族が人間の国に来ただけでもワイは凄いと思うで。」

さすがゼフは良い事言うやん。


「正直俺もハメを外しすぎた、しかし久しぶりの休暇だからな。もう少し楽しませて貰うぞ!」


「まあヴォルフもこっちで友達増えたし良かったじゃん。一人ぼっちは寂しいじゃん?」


「そうだな…うん、ショウの言う通りだ。じゃあ飲み直すか!今日の出会に!!」


「「「「「かんぱーい!!!」」」」」


さて次は何して遊ぶ?


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