第85話 サバイバルゲーム 対女神

トイガンでのサバイバルゲーム。

フィールドにはアイテムが落ちている事があるらしく、戦闘を有利に進められるらしい。

フィールドはアリアが選んだ玩具箱フィールドだ。


所々に巨大なぬいぐるみや積み木などが配置されており、隠れる場所は山ほどある。


因みに5ポイント先取、撃たれてしまったらフィールドの外側の扉から好きな場所へ移動できる。

リスキル防止まで完璧だ。


流石に七聖竜は気配探知が使えないと言っても強すぎるので感度をMAXにし、半径50センチ以内に当たればヒット判定。

僕とアリアは標準設定で遊んでいる。


とまあ遊んでいるのだが…

「静かだなぁ…」

全員初めての戦闘なので様子見か?アホみたいにドタバタ騒ぐヤツがいない。流石にヒマなので少し索敵するか。


足音を立てないように慎重に進む、結構緊張感あるな。

突如ガン!っという音が響き、天井を見上げるとアリアが1ポイントを取っていた。

トコヨかルナを倒したの?すごくない?


少し進むとルナを発見、息を殺してぬいぐるみの影に隠れている。今のうちに…やばっ目が合った!!


僕はありったけの球を発射したが全て避けられ、ルナの狙い澄ました一撃が僕の胸を撃ち抜いた。


「くそう…早すぎるだろ!手加減しろよ!」


「カッカッカ!妾には当たらんのじゃ!これでまず一点獲得じゃのう!」


ガンッ!!


「油断しすぎだよ!そんなに大きな声出したら場所バレちゃうよ?」

いつの間にいたの?はるか後方のアリアはルナを打ち抜いていた。


「な!なんじゃと!油断したのじゃ!!」

なるほど、漁夫の利ってやつか。しかし上手いな子供は…


僕とルナは壁の扉に入り左右に別れた。

「次は油断せんのじゃ!」

「背後には気をつけるんだな!」

しかし不利なのは不利だなぁ…身体能力の差がありすぎる。


僕が人気のない扉から出ると目の前に宝箱があった。

これがアイテムか。箱を開けるとボムか?説明によれば広範囲爆発のアイテムらしい。

強いじゃん。勝ったな。


忍び足で進んでいると性懲りも無くまた大声が聞こえてきた。


「当たらんでありんす!さっさと降参するでありんす!!」


「バカを言うでない!とっととポイントを寄越すのじゃ!!」


「二人とも早すぎて当たらないよー!」

うわぁ…ガチの大人じゃん…

凄まじいスピードで撃ち合う二人と闇雲に連射するアリア。そうそう、こういう感じが楽しいんだよ。


しかし二人ともスカートでピョンピョン飛び回るから色々見えるな…このまま少し眺めていても良いけど僕だけ違う遊びになっちゃう。子供の前だし。


僕はポイっとボムを投げてみた。

ドーンと音を立てた広範囲の爆発に全員巻き込まれ、僕は一気に3ポイントを得たのだ。


「おいなんじゃそれ!卑怯じゃろ!!」

違いまーす、アイテムでーす。


「そんなの避けられるわけ無いでありんす!!」

そうでーす、無理でーす。


「私もアイテム探す!強いやつ!!」

そうだね。多分アイテム全部こんなのだよ。


アイテムの存在によりみんな動き回るようになった。

戦闘は激化し、結局アイテムを有効活用したアリアが優勝したのだった。


「やったぁ!勝ったよ!!私の勝ちー!」

子供はこうでなくっちゃね。楽しそうに自慢しているアリア、可愛い子供だよ本当。


「次は本気でいくのじゃ!!油断したのう、あー油断してしまったのう!」


「わっちだってまだまだいけるでありんす!」

いや讃えろ、子供が喜んでるんだぞ!


「次も負けないんだから!」

僕はアリアを応援するよ!


「あれぇ?みんな楽しそうですね!私も混ぜて下さいよー!」

やべぇ見つかった!みんな撃て撃て!!

いや…ここはサキエルに報復するチャンスか?いやまあゲームなんだけど。


「ふふ、良かろう。勝負じゃ」

「ボコボコにしてやるでありんす!!」

「神様もやるの!?でも負けないからね!!」

こうして女神(仮)も交えてゲームが始まった。狙うはあのアホだ。アイツ一回僕の事殺してるからな。


決戦は花畑ステージ。巨大な花に囲まれているのだが…僕達が小さくなって花畑に入ったような感覚だ。

虫になった気分。


とりあえずアイテムを探しつつ索敵するか。

アイテムは確認してるだけで5種類。


僕が最初に使ったボム。

打てば当たるホーミングランチャー。

相手の位置が分かるレーダー。

2分だけ無敵になれるマント。

障害物を貫通するレーザー。


どれも手に入れれば役に立つアイテムだらけだ。どれも使ったら無くなっちゃうんだけどね。


足音に気を付けて歩いているとサキエルがスタスタと歩いているのを見つけた。

初心者め!恰好の的だ!

僕は狙いを定めて引き金を引くとサキエルはこっちを見て…消えた?


「見つけましたよー!ズキューン!!」

突如目の前に現れたサキエルの銃で撃ち抜かれ、ガンッという音が響き僕はあっけなく倒された…

何が起こった?気配察知はできないハズだろ?気がつけるワケない!


「この引き金?を引く音結構大きいですからね!耳を澄ませば聞こえちゃうんですよね!」

まさかこいつ本当に神なのか?ありえないだろその聴力。あと消えたと錯覚するほどの身体能力も…


「どんどん倒しちゃいますよぉー!」

そう言ってサキエルはまたスタスタと歩いて行った。

これはアイテム無しでは絶対に勝てない…


そしてゲームは無常にも速攻で終わってしまった。

「なんなのじゃこの女!動きがまるで見えん!バカのくせに!」

そうなんだよ、バカなのに強いんだよ。


「しかもアイテムまで使うでありんす!!バカのくせに!!」

そうなんだよ、なんかちょくちょくアイテム使ってくんだよ。


「神様は本当に強いね!でもちょっと強すぎるよ!」

バカのクセにな。


「ふっふーん。どうですか?見直しましたか?あなた達の産みの親は神様なんですよ!」

悔しいが勝てる気がしない。ここはチーム戦でやろう。個人では無理だ。


「なあサキエル、4対1でも良いよな?じゃあ決まりね。」


「私何も言ってないんですけど…まあ良いですよ!負ける気がしません!私が一回でも撃たれたら負けで良いですよ!そっちは20ポイントとかで良いですよもう!」


舐めやがって…

こうして神との戦いが幕を開けた。

サキエルは隠れる事を知らないのでフィールドは市街地ステージにした。どうせ真ん中をスタスタ歩くだろうから家に隠れてチャンスを待とう。


「とりあえずアイテムを探そうよ!普通に撃っても絶対勝てないよ!」

そうなんだよなぁ…でもホーミングすら避け続けられて使用者倒されると消えるし…


「まず妾が時間を稼ぐのじゃ、なんとかお主らでアイテムを探し出してくれ」


「承知でありんす!」


作戦はルナがなんとか時間を稼ぐ間にアイテムを他のメンバーで探す。まあシンプルな作戦だ。


「なかなか良い作戦ですね!でも話し声も聞こえちゃうんです私!」

は?なんでいんのお前…


「散れ!一網打尽じゃぞ!!」

ルナが叫んだ頃には全員撃ち抜かれ一気に4ポイントも失ってしまった。


「油断したのじゃ…くそう…」


「まあ頑張って下さいね!私はフィールドの真ん中で待って音がした方に行くので!」

ニコニコしながら部屋を出ていくサキエル、強すぎるんだよなぁ。


作戦に変わりはない、というか小細工が通報する相手じゃないんだ。


「なんとかポイントが尽きる前にアイテムを見つけるのじゃ」

全員が別の場所からスタートし、アイテムを探す。中心ではルナが頑張ってはいるが1分持てば良い方、ほとんどが数秒で終わってしまう。


それぞれアイテムをなんとか回収した頃にはライフは4ポイントしか無くなっていた。今は全員仲良く撃ち抜かれ壁際の扉の中に集合している。


「とりあえず全種類集まったけど…レーダーは無意味だよな…ホーミングも狙いつける前に撃ち抜かれちゃうし…」

作戦も聞かれてるんだよなぁ…ちょっとずるいけどコレで行くか…僕は手で全員に合図を送り、ルナはニヤリと笑った。


そして全員で飛び出しトコヨがボムを投げる。

「食らえでありんす!吹き飛ぶでありんすー!!」


「そんなの避けられますよ!私のスピードを舐めないで下さい!」

サキエルは大きく後ろに飛び、ボムを避ける。すぐに距離を詰められトコヨは撃ち抜かれた。

「覚えてろでありんす!!」


僕はトコヨの背後からレーザーを発射、ギリギリのところで避けられるが、その隙にホーミングを持ったルナが突っ込んでいく。


「やっぱりルナティアが無敵マントですね!でも2分間そのホーミングを避けたら良いんですよね?無敵マントが切れて使用者が撃たれればホーミングは無効ですよね!2分くらいならなんとか避けられちゃいますよ!」

こういう事は覚えてるんだよ、都合が良い頭してんな本当。


結果的に二分間避け続けたサキエルはルナの無敵マントの効力が消えた瞬間にルナを撃ち抜いた。


「そんなんアリか!?避けられるスピードじゃないじゃろ!!」

そして残すところはアリアだけ…


アリアは物陰から出てきて降参ムードだ。


「なぁサキエル、お前こんな子供を撃つのか?」

まあ今まで散々撃ち抜いていたのは知ってるんだけど。


「あ、見つけた!バキューン!」

おいまじかよお前…少しは忖度覚えろよマジ。


アリアは撃ち抜かれ、トボトボ歩いて来る。

「神様容赦ないね…。でも楽しかった!また遊んでね!」


「良い子ですねぇ!良いですよ!いくらでも遊んであげます!」


「まあ今回は負けたよ、酒でも飲もうぜ。」

「まあ完敗じゃな、乾杯だけにの」

「ルナティアはテンションがおかしいでありんす。」


こうして全員でサバイバルゲームを出てBARに向かう。


ガンッ!!!


サキエルの的が点滅し、天井には僕達のチームにWinの文字。

「やったぁ!!勝ったぁあ!!」

「いよっしゃあああ!!遂にやってやったのじゃ!!」

「勝ちでありんす!!やってやったでありんす!!」


「ちょっとなんなんですか!!全員倒しましたよ!!」


「カッカッカ、妾の服は鱗じゃからのう、好きな形にできるんじゃよ。こんな風にの」

ルナは服を無敵マントに変形させて見せる。


結局作戦はこうだ。

全員で特攻、ルナは無敵マントに服を変形させてサキエルを騙す。


そして服の下に無敵マントを仕込んだアリアが登場、多分アイツは容赦ないから撃つ。

すかさず酒の話を持ち出し帰る流れにした後に背後からズドン。

アリアが一番警戒されないし美味しいところは子供に持っていかせてあげたかったんだよね。


「ひどくないですか!!ズルですよズル!!」

ズルでもしないと勝てないじゃん!


「いやぁ傑作じゃのう!!酒が美味くなりそうじゃ!」


「ザマァ見ろでありんす!わっちも飲むでありんす!!」


「いやぁ気分良いわ、まあシャンパンやるから許してくれよ」


「え?シャンパンってなんですか?まあ許します!いっぱい飲ませてくれたら許しちゃいます!」


「私も飲めるかなぁ…実体化したんだからジュース飲めるかも!!」


なんとなくだけどルナとトコヨは母親と本気で遊んだ子供みたいな、そんな無邪気さを感じてしまった。

結局サキエルも含め宴会となり、なんだかんだ盛り上がったのだった。


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