第81話 VR 友達
風呂から上がった後、僕達はビールを飲みながら一休み。
「他にはどんな遊びがあるの?」
もうゼルは遊びが楽しくてしょうがないようだ。周りに遊べる友人とかいないのかな?
「そうだなぁ、さっきの部屋にエアホッケーでしょ、後は釣り堀とプール、水族館、ゴーカートにバスケットボールができる体育館と…ボーリングにボルダリング、ボードゲームカフェなんてのもあるよ。」
「聞いた事ないのばっかりだなぁ、どれも楽しそうでワクワクしちゃうね」
「久しぶりあのボードゲームで勝負じゃ!今度は勇者になぞならん!」
あのゲームって人生ゲーム?まあ良いけど。ガル爺もやりそうだし。
せっかくだしアップデートしてみるか。なんか楽しくなりそうだしね。
人生ゲームをアップデートし、ボードゲームカフェに移動した僕達。
見慣れたボードゲームの中にゴーグルが置いてある。
VRか?僕も初めてなんだが。
「なんじゃこの眼鏡は、ワシは老眼とは程遠いぞ?」
もう見た目変えろよ、ややこしいんだよ毎回。
「これを付けて遊ぶの?なんか不思議なゲームだね」
全員でゴーグルを付けてスタートボタンを押すと目の前に人生ゲームのマスが現れた。
なにこれすごい!異世界に来たみたいだ!ここ異世界だけども!
「おぉ!身体が小さくなったぞ!本当の子供のようじゃな!」
「ワクワクするね、どんなゲームなのかな」
「人間の人生か、経験として貴重じゃの」
全員子供の姿になりゲームスタート。ルナは小さくて可愛らしいし、ゼルもイケメンの子供だ。
ただガル爺は爺さんの顔に子供の身体でクソコラみたくなっている。ちょっと怖いんだが。
「ルナティアは小さくなっても美人さんだね、というか可愛らしいかな。」
「そうじゃろう、妾はどんな姿になっても美しいのじゃ、ほれ、ショウも褒めるが良い」
「普通に可愛いよね、まあルナは元々可愛いからな」
「な、なんじゃ急に…照れるではないか…まあスタートじゃ!」
ルナも照れて赤くなる事あるんだな。新鮮だわこれ。
ルーレットで順番を決め、ゲームスタート。ルーレットは止まれと発声すれば止まるみたい。
「1番は妾じゃな!止まるのじゃ!やったぞ!10じゃ!」
ルナはトントンとマスを移動していく、結構遠くまで行くんだな、何かNPCと揉めてるけど…あ、何か押し付けられた。
「なんなのじゃあの人間!!要らんと言っておるのにボロの盾を買わされたぞ!!金貨二枚の価値なんか無いじゃろこんな木屑!!」
御愁傷様、相変わらず異世界は過酷だな。
「次は僕だね、止まれ!なんだ…2か」
このゲームは大きい数字出せば良いってもんじゃ無いんだよ?
「え?いいの?ありがとう」
ゼルは何やら女の子から花を貰っている。何に使うんだろ花なんて。
「女の子から花なんて貰うの初めてだなぁ。金貨三枚なんて安いもんだよ」
押し売りじゃねぇか、このゲーム押し売り多くない?
「次はワシじゃな、止まれ!おお、9じゃな」
スタスタと歩いて行くガル爺、9つ目のマスに到着した瞬間にイノシシに吹き飛ばされた。
「ちょ!なんじゃ急に!一回休み!?壮絶すぎるじゃろ!子供じゃぞワシ!」
子供じゃぞワシってなに?やっぱりややこしい爺さんだ。
僕の番になり、止まった数字は10。
えぇ…押し売りされに行くの僕…嫌なんだけど。
トボトボと歩いてルナのマスに到着。
「お主もこの木屑を買うんじゃな?なかなか良いぞ、薪くらいにはなるじゃろ」
金貨二枚の薪なんて欲しいわけねぇだろ…
すると前から男が歩いて来て道を聞いてきた、多分あっちだよと適当を言うとお礼と言って金貨三枚を渡してきた。
これランダムなのか、まあラッキー。
「なんじゃそれ!そんなのアリか!?」
アリなんじゃ、お金増えたんじゃ。
その後もランダム要素盛り沢山のマスに一喜一憂し、職業選択マスでそれぞれ選べる職業を選んでいく。
「妾は酒場の女店主じゃ!ガッポガッポ稼ぐぞ!」
「ワシはギャンブラーじゃな。そんな人生も良かろうて」
「僕は…花屋が選べるみたい、これが良いかな」
最初のバカ高い花がフラグだったのか、よく出来てるな。僕は今回魔法使いを選択した。魔法って使ってみたかったんだよね。
「なんでじゃ!!最初は上手く行っておったのに!あのバイト売り上げ盗みおった!もう3人目じゃぞ!!許さん!!」
「おお、また勝ったのう。運だけで生きていくのも悪くないわい」
「お花いっぱい売れるようになったし新種も開発したよ。これからもっと売れるかも」
「さっきから風呂を数分早く沸かす魔法とか天井の埃落とす魔法とかロクな魔法覚えないんだが!?逆に考えたヤツすごいだろこれ!!」
人生は過酷だ…異世界なら尚更…
「あの旦那逃げたじゃと!?ちょっとケンカしてぶん殴っただけじゃろ?意味わからん!」
「詐欺じゃと…あんなに愛を囁いておったのに…ワシを騙したのか…」
「家族がまた増えたよ!幸せだなぁ、今度は女の子だね、もう8人目だ。」
「なんで僕は結婚できないの?魔法使いってそういう事?三十歳まで童貞ってやつ?舐めやがって」
パートナーは完全にモブなのだが、なんとなく愛着が沸くようだ。まあ僕にはいないけど。
結局一位はゼル。
花屋が大繁盛し、系列店を多数出店。花だけで大富豪になり、子供は12人という絶倫っぷりだった。
「人間の暮らしは楽しいね、とても幸せな思い出が出来たよ」
二位はガル爺。
ギャンブルで借金を作り、土壇場でギャンブルで借金を帳消しにした。結婚詐欺の遭わなかったらもう少し金貨もあったのに…。
三位は僕だ。
魔法使いになってもロクな魔法を覚えず、その日暮らしの何も無い生活。なんとも虚無な時間だったよ。
そして四位は…
「なぜじゃあぁ!酒場の女店主なのに酒場が潰れたぞ!どこの店主だったんじゃ妾は!!」
酒場は売り上げの盗むバイトが5人も入ってきてどんどん売り上げを盗まれた。
旦那にも逃げられ、酒場を失った女店主は何かの店主で人生を終えた。
VRゴーグルを外して周りを見渡すと見慣れた部屋だ。
いやぁすごいゲームだったな。本当に人生一回走り抜けた感じだったよ。
「人間の人生って面白いね、短いけど濃いっていうか、なんて言うんだろうなぁ…よくわからないや!」
まあそうだよな、僕からすると結構長いと思うんだけど、ゼルからするとやはり短いのだろう。
「そろそろ城のみんなが心配するから帰ろうかな、また遊びに来ても良いかい?」
急じゃん…もっと遊びたかったけど仕方ないね。
「いつでもおいでよ、これ渡しとくからさ、何かあったら呼んでくれて構わないから」
本当になんとなくトランシーバーを渡したくなったんだ。僕はゼルの事を大切な友達だと思ってるんだろう。
トランシーバーの説明をするととても喜んで受け取ってくれた。僕もなんか嬉しくなっちゃうよ。
「それでは帰るのじゃ、妾はもう少しの間地下室におるがの」
まあ良いけど、肉食って無いもんな。
「ワシは元いた場所に送ってくれ、まだやる事があるんじゃ」
何してたの?小説書いてたなら後で見せてね。
じゃあまた遊ぼうねと手を振って地下室を出ていくゼル。いやぁ…良いヤツだったなぁ魔王
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