第82話 古城 おばけ嫌い 

ゼルの話からすると勇者の暴走を止めるために魔王がいるらしい。

すごい事聞いちゃったな。誰にも言えないよこんな事。


無いとは思いたいけど、ホノカが危険分子みたいに見られるのは嫌だしなぁ。


とりあえず今まで通り生活しよう。最近依頼の要請は来ないけど自分から依頼受けにいくか。


「ねぇルナ、僕依頼受けにいくんだけどどうする?」

ルナはゼルと別れた後にガル爺を元の場所に送り、二日ほどこの地下室に滞在している。


「そうじゃのう、妾も行こうかの、暇じゃし」

暇なの?今までこんなにいた事あったっけ?


「子供というか分身体は良いの?毎回その為に帰ってたじゃん」


「良いわけないじゃろ、ただまだ帰ってこないと思うのじゃ。あと数日くらいはヒマじゃのう」

ビーフジャーキーをムシャムシャしながら答えるルナ。ダラダラしてんなぁ、でも帰る気はあるのね。


まずギルド行くか。

なんかギルドに来るの久しぶりな気がするけどみんな元気かな。

ルナを連れて僕はギルドの扉をくぐった。


「こんにちはー何か依頼無いですか?平和的で僕じゃなくても全然達成できるヤツ」


「ショウさん!依頼を受けに来るの久しぶりじゃないですか!?どこ行ってたんですか?」

ユキさんに会うと帰ってきた感があるな。しかし魔王と風呂入ってましたなんて言えないし…


「ルナの知り合いに会いに?的な?みたいな?」

完璧な偽装だ、突っ込みが入る余地はない。


「まあショウさんが無事で帰って来てくれれば良いですよ。お疲れ様でした。それで依頼ですね。ちょっと待ってくださいね」

優しさを感じる…この人が女神でいいよもう。


「ショウよ、依頼は派手なヤツで良いぞ、妾もいるんじゃから。」

派手な依頼なんて嫌だよ。やるなら一人でやって。


「今ある依頼で派手なのはちょっと…これなんかどうですか?南に小さな古城があるんですけどそこに魔獣が住み着いたらしいんです。近くの村から夜な夜な不気味な声が聞こえるという依頼ですね」


「分かったのじゃ、それ行くぞショウよ」

まあルナがいるから楽かも、魔獣が村を襲う前に解決しよう」


「ありがとうございます!そしてお願いなんですけど…その村で作られているワインなんか買ってきて貰えたらなぁ…なんて。もちろんお金は払います!」

こっちが本命か?まあそんな事ないよね。ユキさんに限って…ないよね?


「ちなみに魔獣はゴーストかも知れないので気を付けてくださいね」


…え?


依頼の古城は地下室で1時間ほど…はぁ、気が重い…

なんとなくすぐに到着したくないのでルナに乗らずのんびり移動している。


「イヤだなぁゴーストとか僕苦手なんだよ」

お化けとかそういったものは怖い、普通に受けなきゃ良かったと後悔してるよ。


「ゴーストなんか敵ではないのじゃ、お主ビビりじゃのう…あーかわいそ」

なんだ急に煽るじゃないか、やんのか?


「そんな事よりショウはあの受付嬢と仲が良いみたいじゃのう、向こうもまんざらでは無さそうじゃが?」

いきなり何だよ、確かに気になってるけど…


「何?ヤキモチ?可愛いとこあんじゃん」

とりあえず今はそれどころではない、魔獣かゴーストか、それが気になってしょうがない。


「バ、バカを言うでない!妾がヤキモチ?そんなもん焼くワケないじゃろ!肉は焼くがの!」

なんかキレがねぇなぁ…ボキャブラリー息してないよ?


「ほれ!あれじゃろ、碌でも無い事を言ってるうちに見えてきたのじゃ!」

話振ってきたのルナじゃん…魔獣だといいなぁ…


古城というかもう廃墟に近い、ボロボロの壁にはツタが絡みついており、長年使われていないのが見て取れる。


「本当に行くの?大砲でぶっ飛ばしちゃだめ?」


「いやそれでも良いがそれをしてしまうと殆どの依頼が大砲ドーンで解決してしまうじゃろ…バカの所業じゃ…」

まあ確かにそうだけど…原因っぽいヤツを片っ端から吹き飛ばすとか確かにバカそのものだな…


「明るいうちに行こう、夜になったら僕寝るんだ。暖かいベッドで」


「お主今回結構ひどいのぅ…」


中に入ると意外に明るい、これなら案外大丈夫かも。

「まずは原因の魔獣かゴーストを探すのじゃ。まあ地下じゃの、行くぞ」


「地下から気配すんの?地下に住んでるヤツなんてロクなヤツいないよ。」


「そうじゃな…きっと地下で暖かいベッドで眠るんじゃろな…」


地下に降りる階段を見つけて降りていく僕たち、地下室で行けば良いじゃんと言ったがすぐ終わるから付いてくるのじゃと言われてしまった。


地下に明かりは無くルナの魔法で辺りを照らして進む。

すると手に何か生暖かいものが急に触れた。


「ぎゃーす!!」

僕は柄にもなく叫び声を上げてしまった…


「急に叫ぶなびっくりするじゃろ!怖がってるようじゃから手を握ってやったまでじゃ!ほれ!行くぞ!」

僕の手を引いてスタスタ歩くルナ、少し顔が赤い?気のせい?


「ここら辺だと思うのじゃが…」

辺りを見渡しても何もいないようだ。よし、帰ろう。

もう十分だよ。大砲ドーンでバカ扱いされても平気だから。ドーンで帰ろう。


帰ろうとルナの手を引いた時、青白い光が宙を舞い、僕達の方に向かってきた。


「ぎゃーす!!!!」

僕は叫びながらルナに抱きつく、あれ?ちょっと柔らかい。


「そのクセが強い叫び声が逆に怖いからやめるのじゃ!!おい!!どこを触っておる!離すのじゃ!」


「何してるでありんす?こんなところで」


この独特の喋り方…

え?トコヨ?こっちのセリフなんだが?



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