第76話 お姉様 改良型水族館 笑顔
世にも不思議な水圧を無視して水底に墜落するオーガに夢中になっていたが…
レイさんの姿が見えないな、どこ行ったんだろ。
ナイトプールを見渡すと女子の塊を発見、あそこか?
近づいてみるとキャッキャという声が聞こえ、その中心にレイさんがいた。
「レイ様!お酒を持ってきました!」
「レイ様!今度は私と滑りましょう!」
「レイ様!向こうにで一緒に泳ぎませんか?」
やや!あれは俗に言うお姉様というヤツでは!!
これは目が離せん!観察だ!
「ショウ様…見ていないで助けて下さい…」
すみません…
どうやらサイカさんと戦う人間の姿がとても格好良く見えたらしく、話してみると丁寧な物腰、そして端正な顔つきもありファンが急増したそうだ。
「ショウ様!決して私は…その、ノーマルです!男性との恋に憧れているノーマルですから!!」
必死だな…それは別に疑ってないけど…
しかしなんとも言えない顔をしているなぁ…迷惑では無いけどどうやって対応すれば良いやらといった感じか。
しかし僕には分からない、なぜなら僕は今は傍観者でいたいからね!
「とりあえず水族館の様子を見に行きたいので一緒に行きますか?」
「是非御一緒致します!」
すると周りの女の子達は何かを察したらしくまた後でお話しましょうと離れて行った。どうしたんだ?
「気を使わせてしまいましたね…」
それからレイさんを連れて水族館に入る…いやこれまたやりすぎなくらい…
水槽の中のトンネル、視界を海が埋め尽くし、様々な魚が泳いでいた…
「海の中を歩いているような感覚ですね…素敵…」
ちょっとレイさんが乙女に見える、いやいつも綺麗だけど…なんというか、乙女だ。
しかし僕には気になる事があったのだ。
イルカとカメ、僕が一人の時に遊んでくれた友達。まさかアップデートでどこかに行っちゃったとかあったら切なすぎる…まだサヨナラも言ってないのに…。
そんな心配を他所に隣を見るとイルカとカメが泳ぎながら僕を見つめていた。
大丈夫だった!普通に凹む所だったよ!
奥に進むと大きなドーム状のホールがあり、視界いっぱいの魚達が泳ぎ回っていた。
「絶景ですね…」
太陽の光が差し込みキラキラと光る魚、見ていて飽きない、何種類いるんだ?もう全種類集まってるんじゃない?
前と一緒で円形らしく結局ここに戻ってくるみたいだ。何となく時計回りで進む。
前までペンギンに餌をあげられるだけのコーナーは氷の上でペンギンと触れ合うコーナーに進化していた。
もうサファリパークじゃない?
「ショウ様!子供のペンギンがいます!可愛いですねぇ…あ!こっち来た!フワフワしてますよ!可愛いが過ぎる!」
レイさんはドラゴンを倒した時みたいな無邪気な少女感が出てる。こっちの方が素なんじゃないか?
「あぁ…幸せです…もうここでこの子達のお母さんに…」
いやいるよ?その不安そうな顔して見てるのお母さんじゃない?
しかし可愛いなぁ…僕達はエサをあげたり触れ合ったりして30分ほど遊んでしまった。
「ここ永遠に居られますね…」
「そうですね…危うくお母さんになるところでした…」
次に行かないと、まだ浴場のチェックも残ってるんだし。
次に進むと下り坂が続き、どんどん暗くなっていく、深海魚コーナーか?ワクワクする。
「冒険の匂いがしますね!」
ワクワクしますか?僕もします!!
薄暗い部屋の周りは水槽に囲まれ、深海魚を見ることができる。しかし動かないなぁ…
「生きてるんですかね?でも呼吸はしているような…そしてすごい見た目の魚も…ふふっ」
ふふ?レイさんにしては珍しいけど面白い魚でも…
「何これ!言っちゃ悪いけどマヌケすぎるよ!」
ニュウドウカジカ、ピンクの体でボテっとした、なんというか疲れたおじさんのような…
「……っふ……いや、待って…… こんなことで私が……ふふっ……いやでもこれは…ふふっ……!」
いやもう声出して笑えば良いのに!でも堪えながら笑ってるレイさんも可愛いけど!
「ちょ……だめですっ!…ふふっ…つ、次に行きましょう…」
そう言って手を引っ張られて次のイルカコーナーへ、無事で良かった!
「すみません…取り乱しました…」
「いや笑いたいなら笑えばいいと思うんですけど…」
「そういうの慣れていなくて…善処します。」
僕は笑ってるレイさんも好きだけどなぁ。
しかし手を繋いだままだな…このままレイさんが気がつくまで…
イルカショーは前とほとんど変わっていない、水中の穴からイルカ達が入り口のトンネルまで行けるようになったくらいか?
しかし変わらない方がいい、僕の憩いの場でもあるからね。
しばらく椅子に座ってイルカのショーを見る、技が増えたか?あんな輪っかあったっけ?
イルカにご褒美の魚を投げようとしたのだが…まだ手を繋いだままなんだよな…
レイさんが気が付かないワケないとは思ってたけど…
「あの、手繋いだままで良いんですか?」
僕は申し訳なさそうに問いかけた。
「遂にバレてしまいましたか」
そう言ってレイさんは手を離した。
少し顔が赤く、そして少し寂しそうだ。
恋に憧れてるって言ってたしこういうのも初めてだったのかな…
僕は魚を投げてイルカに挨拶した後にレイさんの手を引いて歩き出す。
「迷子になるといけないですからね!」
少しビックリしたレイさんだったが僕の手を強く握り返し
「そうですね…はい!しっかりと最後までお願いします!私が迷わないように!」
ニッコリと微笑んだレイさんはとても綺麗で…無邪気に笑う普通の少女だった。
しかし良いのか僕は、こんな事ばっかりして…
八方美人のスキルとか獲得しちゃいそう。
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