第75話 流れるプール 沈むオーガ

ゴウケツさんはパンチングマシーンの超地獄級に挑戦し、結論から言うとクリア出来なかった。


「ぐぬ…強すぎる…」

いや無理ですよ、流石に。僕からしたら残像見えてましたもん。


超地獄級の敵は倒すまで分からない、早すぎて見えないらしい、攻撃の瞬間だけ一瞬見えるらしいが真っ黒の塊にしか見えないようだ。


純粋なパワーなら誰にも負けないけどスピードとなると…ルナあたりなら倒せるか?

因みにサイカさんも挑戦したは手も足も出なかった。


「まあパンチングマシーンはこのくらいにしてプール見に行きましょう。きっと大きくなってるハズですよ。」


放っておくと一年くらいやってそうなので全員でナイトプールへ移動。


「わぁ!!すごいね!!川が出来てる!!」

「すごいですね…冒険の匂いがします…」

なんとなく分かってはいたがなんだこのスケール…



今までのナイトプールの奥に天の川をそのまま持ってきたようなキラキラと星が煌めく流れるプール、そして光の魚?が水面を飛び跳ねながら泳いでいた。


中心はラウンジになっており、小さなバーカウンターでお酒が飲めるようだ。

ガラステーブルと黒塗りのソファ…金持ちの道楽じゃん。まあ似たようなもんだけど。


ウォータースライダーも五本に増えて長さが増しているみたい、あとでルナに教えてあげよ。


チヒロちゃんは既に村の子供と水着に着替え浮き輪を持って飛び込んでいる。

大人も着替えて遊ぶようだ。


と言っても酒を飲むだけだけど、これは見て楽しむプールでもあるね。元々そんなコンセプトだっけ?ナイトプールって。


プールに来て気になるのはまずこれ

『ゴウケツさん浮くのか問題!』

釣り堀で入水自殺まがいをしようとしていたので一回確かめてみたい。


「あの、ゴウケツさんって浮かないですよね?」


「ショウさん、聞き方がおかしく無いか?まあ頭まで浸かるほどの水に入った事は無い。しかし魚如きが泳げるのだ。俺の方が強いのだから出来るに決まっている」

それを言ったら鳥を殺せるから飛べるって事になるけど…


「まあ深い所もあるので入ってみましょうよ。試しに」


うむ、と自信満々にプールに入るゴウケツさん。

いや、案外普通なのか?違和感ないけど。


「ちょっと泳いでみましょうよ、こうやって身体を浮かせて、足はこんな感じです。」

僕は目の前で泳いで見せると、なるほど、簡単だなと納得している。はてさて…


ゴウケツさんが泳ぎの体制に入った瞬間視界から消え、ゴンっと鈍い音が聞こえた。

水中を覗いてみると足をバタバタさせるゴウケツさん。

言っちゃ悪いが壊れたオモチャみたいだ。


「ぶっはぁ!!難しいな!泳ぎというのは!もう一度だ!」

なんかその…難易度以前の問題なのでは…


水中に潜りゴウケツさんがどんな感じに沈むのか確認、目の前のゴウケツさんは泳ぎの体制に入った瞬間落ちた。

沈んだではない、落下した。


なんか地上で石を落とした時と同じ速度で落ちたんだが…どういう原理?水の抵抗は?抵抗虚しくって事?


「ぶっは!!難しいな!腕が鳴る!!」

鳴らない鳴らない、ゴンっていう鈍い音しかしないよ!


「ゴウケツさん…ちょっと無理っぽいですよ…なんか落下速度がおかしいですもん…」


「そんな事は無い!やれば出来るはずだ!!」


一時間後…


「無理だな!!意味が分からん!!」

僕も分からないです…でも感覚で無理なのは最初から分かってました。


「何してるんですかさっきから…」

そこにサイカさんが現れゴウケツさんは泳ぎを諦めたと晴れやかな顔で説明した。


「そんな…魚にも出来るのに出来ない訳ないじゃないですか…私達の方が強いんですよ?」

そう言って泳ぎの体制を取るサイカさん。


ゴンっと鈍い音が聞こえ、水中でジタバタした後に浮上してきた。


「無理ですね!意味が分かりません!!」

なんとなく行ける気もしないでもなかったけど…まあ無理だよね。


「お父さんお母さん何してるの?気持ちいいよー!見て見て!泳ぎ教えて貰ったの!」

そう言ってスイスイ目の前を泳ぐチヒロちゃん。


「おいチヒロ、出たらまたパンチングマシーンに行くか、今度こそクリアするぞ」


「チヒロ、麻雀なんてどうですか?ちょっと遊びましょう」

この負けず嫌い両親…威厳を保つ為ならなんでもやるな…


次は水族館も見に行くのに…時間かかるなぁ…

そう言えばレイさんどこいった?

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