第65話 トコヨの遊び ガルドーンの本

「邪魔者も消えたし今まで出来なかった事するでありんす!」

一応その邪魔者母親だと思うんだけど…


そう言って一目散にゴーカートに向かい、自分の足でアクセルとブレーキを操作。

「最高でありんす!この風を切る感覚!最高でありんす!!」


ガル爺も興味はあるようだが酒を飲むのに忙しい。ずっと騒ぐトコヨを見ながら酒を飲み、ツマミを食べる。

結局同時に産まれたから同い年なんでしょ?なんか孫とお爺さんに見えるけど。


次は釣りに行くでありんす!と釣り堀に移動。

満足そうに釣竿を振り上げるトコヨ。

ガル爺もこれは楽しそうじゃと釣りを初め、タイやカレイなどを釣りご満悦。


この身体なら捌けるでありんす!

そう言って慣れない手つきで魚を捌くトコヨ。やってみたかった事いっぱいあるんだな。


少しボロボロになった刺身を嬉しそうに持ってくる。

「ガル爺!ショウも食べるでありんす!わっちの捌いた魚みんなで食べるでありんす!」


「常世が初めて捌いた魚を食えるとは光栄じゃのう。ありがたく頂くぞい。」

日本酒片手に美味い美味いと刺身を食べるガル爺、それをニコニコして見るトコヨ、微笑ましいな…僕も頂くか。


「食べたらボーリングもやるでありんす!!」

忙しいな…よほど楽しいんだろう。


刺身もそこそこにボウリング場に移動。張り切るトコヨとガル爺。

ガル爺もやんの?いや、大丈夫か。エセ爺さんだし。


「ずっとやりたかったでありんす!」

そう言ってボウリングの球を投げるトコヨ、決して上手くはない、しかし誰よりも楽しんでいる。


「あの端っこ難しいでありんす…しかし今のわっちなら…」

ゆっくり投げられた球は真っ直ぐピンに向かっていき、カコンと倒れ見事にスペアを取った。


「見てたでありんすか!!当たったでありんす!!すごいでありんす!!」

飛び跳ねてはしゃぐトコヨ…あれ、なんか可愛いなこの娘。

歳の離れた妹みたいだ。妹いた事無いけど。


「ワシにはまだまだ勝てんのう」

ガル爺って初めてだよね?なんでそんなに上手いの?


結局ガル爺の一人勝ち、強すぎるだろこのエセ爺さん。

もっと遊ぶでありんす!とガル爺を連れてボードゲームカフェに移動。

「自分の手でパチンとやるのは格別でありんすな。」

今度はガル爺と将棋を打っている。


「これは奥が深いのう…相手の兵を取ると自分の兵に出来るのか…複雑じゃが面白い発想じゃわい」


僕はガル爺に駒の動きを教えるだけなのですこし気になってる事を聞いてみる。


「七聖竜の一番目ってどのくらい強いの?」

あのアホ女神が適当にスキルを積ませた竜、どのくらいか気になるよね。


「一番目の竜ははちゃめちゃでありんす。名前は絶天竜エル・ドラグマでありんす。」

かっこよ、絶天竜?絶対的じゃん絶対。


「スキルはなんでもアリじゃ、相手を消す、傷を癒す、大地を穿つ、天を割る、浄化、絶対防御、再生、まだまだあるぞい」

相手を消すって何?なんか色々重複してない?


「でも性格は温厚でありんす。滅多に力は使わないでありんすな。エルは礼儀正しい竜でありんす。バカエルの事を様付けで呼ぶのはエルくらいのもんでありんす」

まあ不満も出ないよねそれだけスキル積まれたら。


「王手でありんす!!もう逃げられないでありんす!!」


「ぐっ、悔しいのう!もう一回じゃ!」

もっと他の竜の事も聞きたかったのだが将棋に夢中の二人だ。心ゆくまで楽しんでおくれよ。


結局トコヨが全勝したがガル爺も惜しいところまでは行っていた。拮抗するのは時間の問題かな?


あれもやりたいでありんす!とトコヨが向かったのはパンチングマシーン。確かに、カメじゃ出来ないよな。


「行くでありんすー!おりゃー!!」

トコヨの初めてのマジパンチ!10000kg!うん!微妙だ!

「やったでありんす!吹っ飛ばしたでありんす!」

でも喜んでるな…きっとみんながやってるの見て羨ましかったんだろ。


「どれ、ワシもやってみるかの」

お?爺さんやる気か?

ズドンと良い音を出したガル爺!25000kg!強い!けどゴウケツさんを見た後だと霞む!


一位はオーガですよと伝えるとそりゃ勝てんわいと納得。ゴウケツさん実は竜とかじゃないよね。


その後もビリヤード、麻雀と遊び倒し、最終的にはナイトプールにやってきた。

爺さん似合わねぇなぁ…徘徊して迷い込んだみたくなってるじゃん。


トコヨはウォータースライダーを満喫中。

僕達はそれを見ながら酒を飲む。


「ガル爺って今まで何してたの?徘徊?」


「お主爺さんは徘徊しかしないとでも思っておるのか?まあ特に何もせず眠っておったよ。特にする事も無いからの…」


「何かしたい事もないの?何もしないって暇じゃない?」


「何も出来ないんじゃよ、わしらはほぼ不死身じゃから、何かをしても飽きる、誰かと仲良くなっても死んでいく。そんなのもう疲れてしまうじゃろ」

僕には分からないな…なんせ僕は寿命短いし…どんな感じなのかも全く想像できない。


「ヒマなんだったら物語でも書いてよ。今までに見てきた事とか。歴代魔王とか勇者の事とかさ。」


「物語を書く?ワシがか?それは…少しワクワクするのう…」

お、老後の楽しみを発見したか?エセ老人だからエセ老後か?


僕はステータスを開き万年筆とノートを交換した。

「ガル爺、これあげるからちょっと書いてみてよ。結構良い筆だからずっと使えると思う。」


「おぉ…人間から物を貰うのは初めてかも知れん、これは頑張ってみるしかないのう」

万年筆を嬉しそうに眺め、何かを書き出す爺さん。どんな物語書くんだろ。ちょっと楽しみだ。


「なにこそこそやってるでありんす!ショウも来るでありんす!競争でありんす!!」


「今行くよ、トコヨには負けらんねぇなあ!」

執筆作業に入ったガル爺を置いて僕とトコヨはウォータースライダーで競争を続けた。


しばらく遊んでそろそろ疲れたから休もうという事になり、ガル爺に声をかけリビングに戻る。

「まず一作目じゃな、ショウよ、読んで感想を聞かせてくれ。」

早くね?数時間で書いたの?絵日記とかじゃないよね?


渡されたノートを見ると挿絵付きで数百ページ。やべぇよこの爺さん、とんだ化け物を呼び起こしてしまったようだ。


「わっちも見るでありんす!」

二人で並んで読み始める。初代勇者の話?一緒に旅したの?


数時間後…


「ガル爺!続きは!はやく続き書いてよ!!」


「わっちの知らないところでこんな楽しい事してたでありんすか!さっさと続きを書くでありんす!!」


勇者と旅した数年間の話なのだがまぁ面白いのなんの。

徐々に強くなる勇者と幼馴染の魔法使い、僧侶と武闘家、幼馴染とくっつくかと思いきや僧侶と良い感じになるし、武闘家も良いアプローチをかけて…


いったい誰とくっつくんだ!気になるだろこれ!!


「そんなに楽しんで貰えるとは思わなかったぞい。しかしワシはもう寝る、また今度書いてやるからおあずけじゃな」

おい爺さんぶるなよ!絶対楽しんでるだろ!


ガル爺はストンと眠りに入った。

目を覚さないとかないよな?


その後、僕達考察班は展開の予想で盛り上がった。


「わっちは僧侶とくっつくと思うでありんす」

「いややっぱり王道の幼馴染エンドだろここは」

「幼馴染はアプローチが足りないでありんす。それなら武闘家の方が…なんなら町娘の逆転パターンも…」


ガル爺、この何でもアリの地下室に新しい娯楽を持ち込むだと…最高の爺さんじゃん…

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