第66話 魔王と勇者の因縁?
ガル爺、なんて文才だ…。
挿絵が入っているのもあるが情景描写が凄まじい。
まるで目の前で本当に勇者が冒険しているような錯覚に陥る。
「しかし勇者もヘタレでありんすなぁ」
「結局誰ともくっつかないで魔王に負けちゃったもんなぁ」
目を覚ましたガル爺に担当編集の如く早く書いて!と二人で詰め寄り、結局勇者が魔王に負ける所まで書いてもらった。
「お主ら…ワシにじゃってタイミングというものがあるんじゃぞ…?」
目を覚ましたと言うよりは叩き起こされたガル爺は少し疲れていた。とりあえずヒール風呂でも入ったら?
「読者の気持ちが第一でありんす!甘ったれんなでありんす!」
容赦ねぇなぁ…流石に僕もそこまでは言えないよ。
「しかし負けた勇者ってどうなったの?ちなみに」
「負けたら勇者スキルを失うぞい。あとは地元に帰るか魔王領で暮らすかじゃの」
ん?殺されたりしないの?良いの?そんなので。
「スキルを失っただけで十分じゃろ?それに旅の途中に倒した魔族もケンカ売ったのは魔族の方じゃ。勇者が一方的に虐殺などしないじゃろ」
なんかいまいちピンとこないな…
「例えばでありんす、冒険者パーティーがイキって魔王領に攻め込んだとして、冒険者パーティーが殺されたとしても戦争にはならないでありんす」
ならないか?僕はブレイズのみんなが殺されたら魔王に大砲ぶっ放しに行くけど?
「普通の冒険者パーティーは攻め込んだりしないでありんす。悪いヤツらが略奪目的とかで攻め込んだりしたら殺されても自業自得でありんす。」
どちらも防衛しかしてないって事?つまり攻め込んできたバビロンやデミはその悪い奴らだったって事か。
「じゃあさ、もしも僕が魔王領に行ったとして、どんな感じになるの?歓迎はされないと思うけど」
「そうでもないぞ?ショウは何かズレておるのう…なんかこう…なんと言うか…」
いや僕もモヤモヤしてる。なんだこの感じ。
「魔王の国と人間の国があるってだけでありんす。単純な話でありんす。」
そういう事?なんか因縁があって戦争中とかじゃなくて、ただ勇者と魔王は戦うって決まっているだけの世界?
「ちなみに魔王は無敗じゃ、強いぞ、魔王は」
無敗?それなのに人間の国がまだある事を考えると本当に侵略されないのか。
「もしかして魔王って初代から変わってないの?」
無敗ならあり得る。なんならどんどん力を付けて最強になってる可能性だって…
「一応変わっておるぞ、魔王も長生きではあるが200年くらいで死ぬからのう」
死ぬのか、でもそれでも無敗なんだよな…
そう言えばシロは僕がオセロかなんかで勝負すりゃ良いじゃんと言った時そんな考えがあったと喜んでいたが…なんか形式上戦うみたいな感じじゃない?
そんな生死をかけた感じには思えないんだけど。
ガル爺曰く、なんでこんなシステムなのか分からないらしい。ただ勇者と魔王は戦う。それだけは避けられないという事だ。
魔王は元々強く、勇者側は修行を積まないと手も足も出ないんだそう。そして負けたら勇者の力を失い、また勇者スキルを持った人間が産まれてくる。
なんか釈然としないんだけど…
でも一応理由みたいなものがあるのだろう。
なんか気になるよね。
「気になるなら会いに行けばよかろう、ワシが案内してやっても良いぞ?」
良いの?僕が引き金になって全面戦争とか嫌だよ?
「わっちはあそこ嫌いでありんす。クソ飼い主の思い出が詰まった場所でありんす」
そういやトコヨってバビロンのペットだったな。すっかり忘れてたけど。
うーん…魔王領…というか直通で魔王に会いに行くの?興味本位で行って良いものかな?
上手く行けば平和的解決もできるかも知れないけど、それをするのは僕じゃないんじゃない?部外者みたいなもんだし。
「まあ気にはなるけどさ、僕が首を突っ込んでいい話でも無さそうだし今回は遠慮しておくよ。」
「まあそれもありじゃな、いつでも同行するぞ、その時は呼ぶと良い。」
いつか行く時が来るのかな…
「話が終わったならガル爺は次の話書くでありんす!今度はどんな話でありんす?」
「将棋もしたいんじゃが…まあ良かろう。次はワシが恋した人魚の話を書くか」
爺さんの恋愛!?うーん…多分面白い!
そうしてガル爺の書き上げる小説を心待ちにし、トコヨと談笑しながら一日が終わる。
こういう一日もありだな。
そういえば最近ユキさんと遊んでないな…ちょっと誘ってみるか。
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