第63話 地轟竜
「依頼ないのかな…」
騎士団の休日が終わって三日、僕は水槽を眺めながらピザを食べ、コーラを飲んでいる。
特に呼び出しがあるわけでもなく、一人の時間を満喫していたらこんな状況。
この地下室快適すぎる…
しかしそろそろ寂しくもなってきた。
なんか映画館に行ったら客が僕だけみたいな感覚?
知らんけど。
そんな時に電話が鳴った。
「依頼ですか!?行きます!」
「トコヨでありんす、依頼では無いのでありんすが…」
トコヨ?珍しいな。
「近くから七聖竜の気配がするでありんす、ヒマだから会いに連れて行って欲しいでありんす。」
「良いけど…そんな事も分かるの?」
「感覚でありんす」
ふーん…大丈夫なのそれ…
ギルドに行くとトコヨが出迎えてくれた。ユキさんも一緒だ。
「気をつけて行ってきて下さいね、ショウさんなら大丈夫だと思うんですけど…」
「まあトコヨもいるので大丈夫だと思います。なにかお土産持ってきますね」
「嬉しいのですけどこの前みたいな高い物はやめて下さいね、申し訳ないので…」
前に送った金貨50枚のネックレスか…そういえばまた金貨すごい貯まってるなぁ…
「お土産買えるような場所じゃない場合もありますし期待しないで待ってて下さい。じゃあ行ってきます!」
「行ってくるでありんすー」
ユキさんに行ってらっしゃいと見送られ地下室に降りる。ユキさんに見送られるの良いよな…なんか元気出るよね。
「んでどこに行けばいいの?」
「わっちが運転するでありんす!」
そうか、それなら話が早いな。
トコヨは念力で器用に運転し、目的地?を目指す。
「今度の竜はどんなヤツなの?怖い人とかじゃないよね?」
「七聖竜に怖い人なんかいないでありんす。今から会いに行くのは誰か分からないでありんす」
分からないの?なんでも気配はするけど誰かまでは特定できないらしい。
「ここら辺でありんす!」
到着したのは…岩しかないぞ?竜なんてどこにいるの?
「多分ガルドーンでありんす、地轟竜の。呼んでみるでありんす!おーい!ガルドーン!わっちでありんすー!!」
トコヨが叫ぶと巨大な地響きと共に地面から巨大な岩の竜が現れた。
「おぉ、トコヨじゃないか、久しぶりじゃのお」
「ガル爺でありんす!懐かしいでありんす!」
爺さんなの?なんか格好良い竜だけど…
「紹介したい人間がいるでありんす!小さくなるでありんす!!」
「トコヨが人間の紹介じゃと?これは興味あるのう」
そう言うとガルドーンはどんどん縮んでゆき、老人の姿になった。
なんか賢者みたいな風格だな、シロのお爺ちゃんですとか言われたら信じてしまいそう。
「ショウでありんす!」
雑じゃん、もう少しちゃんと紹介してよ。
「冒険者のショウです。七聖竜にはお世話になってます。」
「地轟竜のガルドーンじゃ、ガル爺でいいわい。あとそんな硬い喋り方じゃなくて良いぞ。ルナティアとエルナディアの気配もするのう、お主」
分かるの?匂いとか付いてるのかな…。
「ガル爺は気配探知が得意でありんす!あとえげつない土魔法を使うでありんす!」
へぇ…えげつない魔法使うんだ、普通におっかねぇ爺さんじゃん。
「失礼なヤツじゃの…まあ良いわい、最近ルナティアとエルナディアが活発に動いているようじゃから様子を見に来たらどうやら原因はお主のようじゃな。転生者か、そして何か特殊なスキル持ちじゃろ」
気配探知でそんな事まで分かるんだ。すげぇな。
「地下室を出すスキルを持ってるよ、ガル爺も来る?きっと気にいるよ」
「お主距離の詰め方イカれてるとか言われん?しかし興味あるのう。それじゃあ厄介になろうかの。」
ガル爺を地下室に案内し、まずビールを出す。日本酒の方が良いか?とりあえず仲良くなるには酒と風呂!地下室界での常識だ。
「なんじゃこりゃ美味いのう!バカじゃろこの美味さ!」
バカなの?なんか急にテンションおかしくない?
「ガル爺は爺さんであり爺さんではないのでありんす。好きで爺さんの格好をしたエセ爺さんなのでありんす。」
何?もう一回言って?
そもそも七聖竜は歳を取らないので爺さんや婆さんにはならないらしい。
そんな中好きで爺さんの格好をしている変わり者、それがガルドーンなのだそうだ。
「ガル爺!ここは風呂もすごいでありんす!わっちは熱くて入れないのでショウと入るでありんす!」
風呂で親睦を深めるか、きっと長い付き合いになる。
トコヨに言われるがままガル爺と風呂に入る。
裸になったガル爺はたしかにエセ爺さんだ。ムキムキの身体、その上に爺さんの顔。
なんか下手くそなコラ画像みたいな爺さんじゃないか。
「酒も持ってきたよ、露天風呂に行ってゆっくり飲もうよ」
「おぉ、風呂で酒か!良いのう、とことん付き合うぞい!」
そして風呂に浸かりゆっくりと酒を飲む。
「ガル爺も何か守ってたりすんの?子供とか神々のなんちゃらとか」
「なーんにも無いわい、我らは特に何もしなくて良いのじゃ、ただ自分達が生きやすいようにするだけじゃよ。」
好きなように生きるか、まあみんな結局そうだよな。
たわいも無い話をして酒を飲む、なんかトコヨが爺さん爺さん言うのも分かるな、落ち着くよこのエセ爺さん。
そんな時トコヨが珍しく風呂に入ってきた。
「どうしたんだ?トコヨ風呂嫌いじゃん」
するとトコヨはとんでもない事を言い出した。
「大変でありんす!!神が来たでありんす!あのへっぽこ神が来ちまったでありんす!!」
は?サキエル?帰ってもらって
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