第62話 休暇の終わり
ギルドにて…
「はぁ…でありんす…」
「トコヨちゃん、なんか元気ないですね」
ユキはトランシーバーの前で溜め息を吐くトコヨに声をかける。
「ショウからの電話が来ないでありんす…わっちだけ呼ばれてないのでありんす…」
「きっと呼ばれますよ。トコヨちゃんだって七聖竜なんですから。」
「そうでありんすかね…気分転換に散歩でも行ってくるでありんす…」
余りにも寂しい背中にユキはトランシーバーを手に取りショウに電話をかけるのであった。
「はい、緊急の依頼ですか?今ちょっと立て込んでて…」
「そういうワケでは無いんですけど…トコヨちゃんが自分だけ呼ばれないって落ち込んでますよ?何かトコヨちゃんに出来る事ないですかね、なんか可哀想で…」
確かにルナとエルナだけ呼んでトコヨは呼んでないけど…適材適所というものが…
「分かりました、トコヨにしか出来ない事があるので迎えに行くと伝えて下さい。すぐに向かいます!」
「ロンです!私の勝ちですね!!」
サエさんと騎士団は最後の日は地下室でゆっくりしたいと今麻雀中。
今度は王妃と王女も混ぜて一緒にやれたら楽しいだろうな。
「ちょっと運転してアルカリスに向かいます。七聖竜がちょっと落ち込んでるみたいで…」
「まだ知り合いの七聖竜が!?ショウさん何者なんですか!?」
何者なんでしょうね…僕って一体
アクセル全開でアルカリスの町に向かい、一時間ほどで到着、ギルドに入り、トコヨを見つけた。
「トコヨ!会いたかったぞ!すぐに来てくれ!」
「お?緊急でありんすな!すぐに行くでありんす!」
ユキさんは笑顔で手を振り僕達を見送ってくれた。
「トコヨ!この騎士団にお前のドライビングテクニックを教えてやってくれ!念力だから一緒に乗って教えてあげられるだろ?」
僕は大袈裟にトコヨにお願いをする。寂しい思いさせてごめんね!
「ふふ、そういう事でありんすか、任せるでありんす!」
自信満々のトコヨ、ごめんな、連絡係みたいにして。
「あの、この可愛いカメはいったいどなたですか?」
騎士団からの声にトコヨは…
「わっちは七聖竜の時絶龍常世インヴィディアでありんす!」
全員あれ?なんか違うな?という顔をしている。
ちょっとみんな反応薄いよ!盛り上げて盛り上げて!
「わっちは不死身でありんす!魔力増幅もできるでありんす!念力も使えるでありんす!!」
いいぞ!アピールポイントは全部出せ!悔いが残らないように!
「「「可愛いいぃ!!!」」」
そっちか…まあ良い落とし所かな。
トコヨは騎士団にもみくちゃにされているがまんざらでも無さそう。良かったな、トコヨ。
「まずわっちと勝負でありんす!実力を見せるでありんす!」
そう言って車に乗り込むトコヨ、サエさん含め七人の騎士団と勝負だ。
「ちなみにみんなはこれ乗った事あるの?」
「はい!やった事ありますよ!結構やりこんでいるメンバーもいます!」
ん?そんなにやってたの?飲酒運転だよね多分。
「私も自信ありますよ!このコースは結構練習してますからね!」
サエさんが練習したという山コース、結構な急カーブが多くアップダウンが激しい上級者コースだ。
3、2、1とランプが点灯し、0になった瞬間全員がスタート…ん?トコヨなんでスタートしないの?ちゃんとエサ貰ってないの?
「まあのんびりで良いでありんす、そろそろ行くでありんす。」
かなり遅れてスタートしたトコヨだったが、ドリフトを使いこなしどんどん差を詰める。
「これが七聖龍の力でありんすー!」
いや違うだろ、それ考えたのシロだぞ?
どんどん抜いていき、一周が終わる頃にはもうぶっちぎりの一位、結局周回遅れまでやってのけ、自慢げにゴールで騎士団を見送った。
「トコヨさん…早すぎます!さすが七聖竜!やばいっしょマジ」
サエさんちょっとエルナの喋り方混ざってるよ。やめた方がいいよ。
それからトコヨは一人一人に抱っこされ、ドリフトのやり方を教えて回っている。
「ここで…こうでありんす!」
「わぁ!トコヨちゃんすごーい!!」
トコヨってメスだよな?なんかこう…極小の嫉妬心みたいなものが湧くんだが…
「もうみんな一流のドライバーでありんす!わっちが教える事は何もない…」
「「トコヨちゃん!ありがとうございました!!」」
全員がドリフトを極め、ゴーカートは終了となった。
その後昼食を取り、トコヨと一緒に水族館で泳いで騎士団の長い休暇は終わったのだ。
トコヨはそろそろ帰るでありんす!と満足そうに帰っていった。ありがとうなトコヨ。
「そろそろ時間ですね…」
少し寂しそうにサエさんが口を開いた。
「サエさん、他のみんなも楽しかったですか?」
全員口々に夢のようだった、楽しい休暇だったと御礼を言われた。
良かった。僕もなんだかんだ楽しかったよ。
「色々な物を見せて貰いました。世界はこんなに広かったのですね。ショウさん、楽しい思い出をありがとうございました。」
そう言うとみんなで衣装室に入り、騎士団の制服を着て出てくる。
「着ていた服は持って帰っていいですよ?なんなら好きな服選んで持って行ってくれても」
「え?良いんですか?嬉しいんですけど!!」
その言葉遣いだけは抜いて帰った方がいいですよ?騎士団としたらヤベェじゃん?
そして王都まで運転し、王城に到着。
再度それぞれから御礼を言われ、騎士団はいつもの生活へと戻っていく。
最後にサエさんが一言。
「あの…二人で行った浮島…デートみたいで楽しかったです!またどこか行きましょうね!」
ルナもいたけどね。
「そうですね。また機会があったらどこか行きましょう。」
「約束ですからね!」
嬉しそうに笑うとサエさんは地下室を出て行った。
まあ僕も王妃に挨拶するから出るんですけどね。
外に出るとココさんとハンナちゃん、グアム王も出迎えてくれた。
「只今戻りました!休暇を頂きありがとうございます!!」
良かった、休暇まじありでーすとか言わなくて。
「みんな良い顔になりましたわね。ショウ様、ありがとうございました。堅物だったこの子達がこんなに柔らかな顔に、さぞ楽しかったのでしょう」
「ショウ様!次は私も遊びに行きたいです!」
「ワシも遠出してみたいのう…」
「そんな事言ったら私だって行きたいですわ!」
そりゃ王族も遊びたいよね。
「まあその時は何か依頼をギルドに出して下さい。時間あったらちゃんと受けますよ」
その時は宜しくお願いしますと見送られ、僕はアルカリアに向かった。
「そういえばサエ達は何を持っているんですの?服かしら?」
「これはショウさんに頂いたのです!見て下さい!この服!」
騎士団は自慢げに自分が貰ってきた服を見せる。
「お母様!依頼です!冒険者ギルドに依頼を!」
「そうですわね!何が良いかしら!?近くに魔獣はいない?それか…誰か国家転覆を!!」
「おいおい…そんな事でショウ君を呼び戻しちゃいかんよ…彼は他にも幸せにする人が大勢いるんじゃから…」
王妃と王女はいつか依頼を絶対に…そう思いながら騎士団の服を羨ましそうに見るのだった。
僕は冒険者ギルドに依頼達成の報告をし、地下室でのんびりだ。疲れたし少し休むか。騒がしい日々が続くと一人の時間も欲しくなる。
今回は七聖竜に世話になったな。
今度なにかお土産持ってこっちから遊びに行くか…
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