第57話 騎士団の休日
ある日の朝、僕は電話のベルで起こされた。
厳密に言えばトランシーバーらしいが僕から見たら電話以外の何物でもない。
「はい、緊急な依頼ですか?」
「おはようございます。緊急は緊急なんですが…王族の依頼でショウさんを指名されまして…」
「王族?ああ、グアム王ですか、分かりました。行ってきます」
「いえ、王ではなく…王妃様から…」
「王妃?ココさんですか、わかりました。行ってきます。」
「あの…なんかすごく軽いですけど大丈夫ですよね?相手王族ですよ?」
あの麻雀ジャンキーの王妃でしょ?きっと大丈夫だと思うけど…。
きっと大丈夫ですよと電話を切り、王都に向かって走り出す。
確か露天風呂とサウナ、ボウリングあたりは経験してるんだよな。
最近誰が何の施設で遊んだのか分からなくなってきた。
そのくらい充実したんだなぁここも。
休憩無しで進み、王城前に到着した。いつ見ても小さな王城、しかし安心感があるんだよねここ。
入り口で門番に依頼で来ましたというとすんなり通してもらう。僕は特別待遇らしいからね。
応接室で待っているとココさんとハンナちゃんが部屋に入ってきた。
「お久しぶりですわ」
「ショウ様!お久しぶりです!」
「お久しぶりです。それで、依頼ってなんですか?麻雀ですか?」
「いえ、麻雀も良いのですがなにぶん忙しくて…今日の依頼は騎士団の訓練ですわ」
騎士団の訓練?僕が?無理無理!僕硬いだけしか取り柄ないよ!!的にでもする気!?
「僕自信は強くないですよ?正直レイさんとかに頼んだ方が良いと思いますけど」
「レイは今忙しいみたいなんです。そして今回の訓練はそういう堅っ苦しい感じではないんです」
どう言う事?全く話が理解できないんだけど。僕は的にならなくてもいいの?
どうやら前のバビロンが攻めてきた時、騎士団は王族を守っていたらしい。
正直100人もいない冒険者では突破される可能性が高かったので王族を死んでも守る!という感じだった。
しかしそんな時に僕があっさりと魔王軍を倒してしまった為、あの冒険者はなんだ!?是非訓練をして貰いたい!と懇願されていたんだとか。
「あの、あれから結構経ってますけどなんで今更なんですか?」
「それはお母様が内緒にしていたからですよ。騎士団がいると自由に遊べないので」
おいおい…それであんなロンですわ!とか酒飲みながら楽しんでたの?
「まあそうですわね、騎士団には私から話をつけるので任せておきなさいと言っておいたのですが…すっかり忘れてこんなタイミングに…」
騎士団からあの話はどうなりました?とか言われたんでしょ?それで緊急で呼び出したわけか。
「ちょうど王都の西の方にサンドワームの群れが確認されたので騎士団と一緒に討伐をお願いします。一応三日ほどの訓練の予定ですので」
まあ良いか、騎士団がどんな人達か分からないけどきっと良い人なんだろう、僕自身が強くないって分かればすぐ帰りそうだし。
「ショウ様、あと一つお願いが…。騎士団は毎日訓練に励んでくれていますがどうも休んでくれなくて…この機会に少しお休みというか、気分転換をさせてあげて下さいまし」
なるほど、確かに僕向けの依頼だ。
任せて下さいと僕は騎士団が待っている中庭へ向かった。中庭には10人ほどの騎士がいるけど…女の子なの?騎士団。
「あの、冒険者のショウですけど今回訓練の依頼を受けて来ました。宜しくお願いします」
「おお!あなたがAランク最強の冒険者ですね!その節はこの国を守って頂きありがとうございます!私はリーダーのサエ!何卒宜しくお願いします!!」
熱血タイプか…僕とは正反対だな…
「あの、最初に言っておきますけど僕って別に強くないですよ?スキルが強いだけなので…」
「スキルも実力のうちですよ!是非その実力見せて頂きたいものです!!」
うーん…がっかりされないと良いけど…
じゃあサンドワームを倒しに行ってみましょうと地下室に案内し、ソファに座って貰おうとしたのだが…
私達はここで結構です!と壁際に綺麗に整列している。
やりにくいなぁ。でも周りをキョロキョロしているあたり興味があるのだろう。
サエさんの案内でサンドワームの巣に到着。気持ち悪いなぁなにあれ、でっけぇミミズじゃん。
私達も一緒に戦います!と意気込んでいるのはサエさんだけで他のメンバーは明らかに嫌な顔をしている。
「いや、大丈夫です。ちょっと倒してみます」
そう言って大砲を撃とうと思ったが…水平に撃つのはまずいな…切り裂きでも良いけどこの前フルバーストをアクティベートしたし使ってみるか。
出来るだけ安全な射角で撃とう、斜め下くらいから空に向かって撃つか。
「あの…失礼ですがお一人で大丈夫なのでしょうか?見た所数十匹はいますが…」
「大丈夫だと思いますよ、多分」
アップデートしてないから大して強くないだろ、倒せなかったら切り裂きでやれば良いし。
照準をサンドワームの群れの中心に合わせてボタンを押す。
おいなんだこれ…何が起こってる…
あの異次元大砲が五つ現れ、一斉に発射、五本の光は敵を消し飛ばし、空に五つの穴を開けた。
空消し飛ばすのって自然破壊になるのかな?
「す、凄まじい攻撃ですね…これなら魔王軍を一人で撃退したのも頷けます…」
ちょっとサエさん引いてるじゃん…僕はちょっとした銃火器でバンバンするくらいだと思ってたよ。
「あの、終わりました…」
サエさん以外はドン引きだ。こんなハズでは…
「見てもらった通り僕自身ではなくてこのユニークスキルがぶっ壊れ性能なんです。なので訓練と言っても…」
いや、あるな…訓練では無いけど力試しの道具が。
せっかくだし遊んで帰ってもらおう。
少しづつ打ち解けていけば良い休暇にできるかもしれない。
僕はみんなをBARに案内し、パンチングマシーンの前に立つ。
これは素手の攻撃力を測る機械です。この的を殴ると数値が出ます。
一定の数値が出ると敵が倒せるのでゲームをしながら自分の強さも分かるし、どんな叩き方をすれば強いのかの研究もできます。
「それは…素晴らしい機械ですね!全員!日頃の成果を見せてみろ!」
「「「ハイ!!」」」
いや硬いなぁ…もっとこう、楽しめば良いのに。
ココさんが言っていたのはこういう事か。
正直必要以上に硬い気がする。ブレイズのメンバーみたいにフランクな感じでも連携はできるわけだし。
「そう言えば今回サンドワームを倒したら休暇を与えてとココさんから言われましたよ。少し休んでいったらどうですか?」
半分本当だ。ウソじゃないもんね。
「いやしかし…私達は騎士なので…そもそも休暇の過ごし方は武器の整備や日用品の買い出しくらいなもので…その、楽しむというのが難しいと言うか…」
「でも他のみんなはそうでも無いみたいですよ?」
後ろでパンチングマシーンをする騎士団のメンバーは最初こそ表情が固かったものの、今では敵を吹き飛ばして笑顔になっている。
強敵を倒した後はハイタッチをして笑い合っていた。
「息抜きは必要です。ココさんもそう言いたかったんだと思いますよ?休んでくれないって言ってましたし。この地下室はなんでも使いたい放題なので三日間思う存分遊んで下さい」
サエさんは少し考えたが…
「それは申し訳ない事をしました…全員!本日から三日間を休暇とする!ショウさんの地下室で羽を伸ばせ!!」
「「「はい!!」」」
すごい良い返事戻ってきたじゃん。やっぱりみんな息抜きしたいんだよ。
パンチングマシーンで遊び終わったタイミングで施設案内をする。なんかツアーガイドみたいだな僕。
しっかり遊んで貰うか!地下室ツアーの始まりだ!
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