第50話 水族館 ズッ友
冷んやりした背中を堪能しているとすぐにミズチのいる湖に到着した。
「お母様!心配しておりました!何があったのですか?」
エルナは魔獣が巨大化してそれを食い止めていた所を僕に助けられたと説明した。
「心配かけちゃってごめんねー、なんか困ってたって聞いたよ、大丈夫だった?」
軽い軽い!泣いてたんだぞ!しっかりしな!
「ショウさんに助けて貰ったのでなんとか…浄化が進んで魔獣もどこかに行ったみたいです。お母様の力ですよね?」
ちょっとまって、その魔獣どこに行くの?大丈夫?
僕の心配をよそに魔獣は浄化されると消えるらしい、村とかに行かなくて良かったよ。
という事は村人もここに遊びに来られるワケだ、寂しくないね、ミズチちゃん。
僕は一旦村に戻って村人の様子見てくるよと村に戻った。久しぶりの親子の再開だ。邪魔しても悪いよね。
村に戻ってククリさんに報告。
「もう解決したんですか!?それにしても七聖竜ですか…話が大きくて想像もつきませんね」
「あの湖に行けるのかい…?是非連れて行ってくれないかい、友達がいるんじゃよ。」
ククリちゃんのお婆ちゃんか、そういえば子供の頃湖に遊びに行ってたとか聞いたな。
「お婆ちゃん、いくら魔獣が居なくなったからってあそこまでは無理だよ、遠いし山道もあるよ。」
確かに歩いては行けないよな。連れて行ってあげよう!
「地下室で移動できるんで一緒に行きましょう!その友達ってミズチですよね?今も元気にしてますよ」
「そうじゃ、ミズチちゃんじゃ、良く湖を泳いだり追いかけっこしたもんじゃ…懐かしい。」
おばあちゃんの名前はビビと言うらしい、子供が少なかったのでミズチちゃんは大事な友達だったそう。
しかし魔獣のせいで湖に行けなくなってしまったらしい。
「じゃあ行きましょう!」
ビビ婆ちゃんだけでは心配とククリちゃんも一緒に行く事になった。
「地下室って動くんですね…」
あ、はい。結構動きますよ。
すぐに湖に到着、エルナとミズチちゃんはまだ楽しそうに喋っている。
ミズチちゃん、そのお母さんの言葉遣いだけは真似しないでおくれ。
「ミズチちゃん、お友達連れてきたよ!」
僕が外に出て続いてビビ婆ちゃんも表に出る。
「おぉ…ミズチちゃん、分かるかい?ビビだよ、昔良く一緒に遊んだ…」
もうお婆ちゃんだし分かるのかな?別人レベルに変わってると思うけど。
「あ!ビビちゃん!すごい大人になったね!今日は何して遊ぼうか!」
これは…精霊の時間と人間の時間は違いすぎる。
80年程度しか生きない人間と半永久的に生きる精霊。
ミズチちゃんからしたら大した時間では無かったのだろう。
「おぉ…でも私はもうお婆ちゃんになってしまったから…前みたいに水遊びも追いかけっこも出来ないよ…」
寂しそうだ。出来れば前みたいに遊びたいのだろう…
どうにかできないかな…
「ねぇどうにかできねーの?エルナ」
ダメ元でエルナに聞いてみる。
「タメで良いって言ったけど急にマブダチくらい距離詰めてくるじゃん…ウケるんですけど…。何とかって言ってもねぇ…ウチの加護で少しの間水中呼吸できるようになら出来るけど…」
そんな事できんの!?すごい!僕にもかけて欲しい!
しかし水中呼吸か…何か…動かなくても楽しめる物を…。
ステータス画面を開き何かないかと確認、これ…良いんじゃないか?一緒に泳ぐだけでも。
水族館!100ポイント!一緒に魚と泳げる!見た事ない魚もいる!これにしよう!
アクティベート!おまけにアップデート!200ポイント!
大きい方が良さそうだし僕も水族館結構好きなんだよね。
「みんなで地下室行こう!きっと一緒に楽しめる!」
何事かという感じだがみんなで地下室に降りた。
「何ここやっばぁ!ユニークスキルっつっても限度あるべ!?」
どう?僕の地下室やべぇべ?パリピだべ?
そして新しく出来た扉を開く、
「これは…水族館というか…海をそのまま持ってきたような…」
ガラス張りの巨大な水槽の中には多種多様な魚が泳いでおり、小魚は群れを成して竜巻のようになっている。
マンボウやアザラシがのんびり泳ぎ、ペンギンも上の岩場から飛び込み泳ぎ出した。
なんだこれ生態系とか完全無視の水族館だ、でもすごい!ユートピアだ!マリンのユートピアだ!
「これは…夢の中にいるのかのう…こんな綺麗な場所があるなんて…」
ビビ婆ちゃん、多分ここにしか無いよ、他で作ったら食物連鎖で小魚はエサ扱いになるよ。
「マジパねぇ!ショウのスキルなんでもアリじゃん!こんな美味そうな魚が沢山!」
食うなよ?食うなら釣り堀行って下さい。
「綺麗ですね…こんな場所…ずっと見ていられます」
ククリちゃんもやっと喋ったね!流石に恐縮してたもんね!
「すごい!すごいねビビちゃん!まだ奥があるみたい!一緒に行こう!ククリちゃんも一緒に!」
三人は手を取り合って奥の方も探検するらしい、見た感じ一周したら戻ってきそうだね。
「ねぇウチらも行こうよ!ほら!」
手を握られて連れて行かれる僕。この行動力…ギャルだ!いや知らないけど。ギャルの生態とか知らないけど!
奥に行くと深海魚コーナー、ペンギンコーナー、イルカショー(独演)、亀に触れてみようコーナー、サメコーナーなどバラエティ豊かだ。
「うわっなんだこの魚気持ち悪!こっちは可愛い!サメ?負けねぇぞ!かかってこい!」
エルナは全力で楽しんでいる。
中でもペンギンがお気に入りらしい、エサを投げてずっとニコニコしている。
「超可愛くね?この生き物、ほらっ!ショウも魚あげてみてよ!超可愛いから!」
魚をポイっと投げると飛びついて丸呑みするペンギン、確かに可愛い。ヨチヨチ歩いてる姿がキュート。
「亀ってこんななんだ、常世みたいな色してねぇじゃん、なにアイツウケる!」
ピンクの亀は確かにウケるね。しかしなんか…ちょっとデートしてるみたいな…距離が近いからそんな事を思ってしまうな。
一周回ると三人は入り口の水槽を座って眺めていた。
「あの魚全然動かないね!大丈夫かな!」
「あ!あのアザラシっていうの今こっち見てました!可愛い!」
「ウミガメじゃったか、あれは優雅でいいのぉ」
ククリちゃんも仲良くなってるみたい。やったね!
「なぁエルナ、その水中呼吸の加護ちょっとかけてよ、この水槽入ってみたいんだけど。」
「入れんのかこれ!やっば!いいよ!みんなで水中散歩いこう!」
スタッフオンリーと書かれた扉を通ると上に通じる階段があり、水槽の上に行くことができた。
水着とか着なくていいの?と聞いたところ、別に平気らしい、泳力も上がるし別に呼吸出来るから溺れることねぇべって話だった。
ククリちゃんの水着姿も見たかったのだが…まあしょうがない。
「んじゃ加護いっちゃうよー!ほい!」
ほい!で僕たちは何か不思議な感覚に包まれ、水に入るとなるほど呼吸が出来る。
しかも泳ぐというか行きたい方向に行ける感覚、なんだこれフワフワする。
ビビ婆ちゃんもスイスイ泳いでおり、ミズチちゃんとククリちゃんと一緒になって魚を見に行っている。
すごい楽しそうだ。
僕もあのイワシの群れに入ってみたい、どうなるんだろう!好奇心を抑えきれない!
突撃すると僕を避けてイワシが泳ぎ、視界が魚で埋まる。うわぁ!思ったほどじゃないな!出よう!
遠くから見てるのが一番良いな…
すると隣にエルナがやってきた。
「やべぇもん作ったじゃん、楽しすぎるっしょここ」
「そうだな、みんなも楽しんでるし、僕も楽しいよ」
まだまだいっぱい面白い施設あるんだよと言うと興味津々だ。
「いやしかしまじ世話になったねぇ!何かご褒美的なのあげちゃうよ!何が良い?」
「何が良いと言われてもなぁ、見ての通り結構なんでもあるんだよね。」
そうなんだ、必要なものは全て手に入ってしまう。
僕は何が欲しいんだろ…
この先に何があるんだろ…
「とりあえずたまに遊びに来てよ、僕はみんなが笑顔でいるのを見るのが好きなんだよね。」
「欲ないねぇー、まあ良いけど、何かあったら力になるよ、じゃあもう少し水族館を堪能しようか!」
そう言って手を引っ張られ三人と合流し、みんなで魚と一緒に遊んだのだった。
水族館を堪能し、ずぶ濡れの服を乾かす間お風呂に入った。
みんな上がったあとは全員でご飯だ。
魚を出すわけにはいかないのでローストビーフにした。
楽しい一日だ。ビビお婆ちゃんも旧友と思いっきり遊び、ずっと笑顔だった。
ククリちゃんもミズチちゃんと友達になり、楽しそうに喋っている。
「なあショウってさ、こういうのが好きなんだろ?なんかウチにも分かってきたよ。」
エルナがそんな事を言ってきた。
「確かにそうだね。僕はこうやって人の縁を結ぶ事に喜びを感じるのかも?よく分からないんだけどね」
なんの欲なんだろうか、自己満足?本当に良く分からないな。
「まあ良いんじゃね?悪い事じゃないんだし、そのうち何が欲しいのか分かるっしょ!」
エルナって話しやすいな、良い友達って感じだ。なんか…ズッ友ってやつ?言い過ぎ?
ご飯も終わり、おばあちゃんはもう疲れたようだしそろそろ解散かな。
「じゃあの、ミズチちゃん、また遊んでおくれ」
「良いよ!いつでも遊びに来て!ククリちゃんも!」
「もちろん!おばあちゃんと遊びに行くから!」
ミズチちゃんは湖に帰り、ビビお婆ちゃんとククリちゃんは村に帰った。
「で、エルナはどうすんの?」
「ウチはショウと冒険者ギルド行こうかな、常世とルナに久しぶりに会いたいっしょ」
いや良いけど…また女の子連れてギルド帰るの?僕
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