第49話 汚染された湖 天海竜
「それじゃあみなさん行ってきます」
そう言って村を出る。沢山の食料と娯楽提供で感謝され、子供達からは大人気な僕。少し照れくさい。
全部この地下室の力なんだよな、僕自身は大した事できないし。
言われた湖に近付くにつれて確かに魔獣が多い、水辺の近くだから仕方ないか?
ここまで歩いて来るとしたら並大抵の覚悟じゃ来れないよ。
まあ僕は難なく到着する訳だけどね。
湖に到着すると確かに少し濁っているような…完全に原因はこれっぽい。
そして奥にいる明らかに原因の黒い魔物?
近づいてみると真っ黒で黒いウネウネが出ていて完全に中ボスの雰囲気。
しかしなんか…泣いてるような気がするのだが…
これ大丈夫?とか声かけたらお前を殺せるのが嬉しくて笑ってるんだよ!ギャオーみたいな感じにならない?大丈夫?
ギャオーは勘弁だが泣いている魔物を後ろからズドンも気分が悪い、とりあえず話を聞いてみよう。
「おーい!泣いてるのか?大丈夫?」
黒い魔物は振り返り…
「誰?何しに来たの…私を叱りにきたの…?」
これは大丈夫な感じだ、ギャオー回避!
「いや下の村の人から疫病の原因見つけてって言われて来たんだよね、何か知ってそうだね君」
「疫病!?大変!みんな死んじゃうよ!!」
ショックなのか取り乱したように声をあげる魔物。とりあえず安心させて話聞こうかな。
「大丈夫だよ、全員治療済みだ。とりあえず話聞いて良い?」
本当?良かったと魔物は話を始めた。
自分は水の精霊のミズチと言い、この湖を守ってきた。
しかし最近毒を持った魔物が湖に押し寄せ、撃退はしたものの攻撃を受けてしまって身体が毒に犯されてしまったようだ。
その際湖も毒に犯されてしまい、浄化する事も出来ずにずっと泣いていたんだとか。
なんか普通に可哀想なんだが…その魔物ってあの奥に転がってるあれ?アマゾンの奥地に住んでる蛍光ペンみたいな色したカエル?あのデカさの?
湖の奥の方、よく見てみると毒あります僕!みたいなカエルが積み上がっている。
「ミズチ頑張ったんだな、湖から出られるの?精霊って」
「別に出られるけど、出てもどうしようもない…時間がたって自然に浄化されるまで待つしかない…」
出ても良いんだ、ここから離れられない…とか言うなら結構難儀する所だった。
「なぁミズチ、ちょっとその毒治すから僕を信じて付いてきてよ。まあ怖いだろうけど」
「治せるの!?行く!どこにでもいくよ!!」
真っ黒で目だけ白くてちょっと怖い!声には出さないけどホラーだよこれ。
僕は地下室を出して風呂に案内する、ヒール風呂ならこのくらい浄化するだろ、最近浴場のアップデートでエリクサーにでもなってるんじゃないかと思っているくらいだ。
「このお湯…すごい癒しの力を感じる…これなら大丈夫そう!」
そう言ってミズチは風呂に浸かり、みるみる色が変わっていく。
「お?大丈夫そうじゃん!」
「うん!ありがとう!もうすぐ浄化終わるよ!」
そう言った数秒後、透き通った水色の女の子が現れた。
うわ、分かりやすい精霊だ!水の精霊だ!
しかし服を着ていないから全裸だが…なんというかセーフな感じだな。
なんかこう、細部まで描かれていない的な、セーフな精霊だ!
ちょっと湖も浄化してくる!と外に飛び出し、僕が上に行った頃には浄化は完了していた。
「これで大丈夫!ありがとう!あなた名前は?」
「ショウだよ、冒険者の。宜しくね、しかしこんな魔獣が多い所で一人って寂しくない?」
「うん…昔は魔物もいなかったの…お母様がこの大地ごと浄化してたから…でもここ数十年お母様と連絡が取れないの…」
どうやら母親に身に何かあり、大地の浄化が疎かになって魔獣が増殖してしまったらしい、前まではミズチでも対処できるレベルの魔獣だったが、今では湖を守るだけで手一杯だそうだ。
これは母親の方をなんとかしないと根本的に解決しないのでは?
「ちなみにそのお母さんはどこにいるの?ちょっと様子見て来るよ」
「え!人間なんかが行ったら危ないよ!」
「多分大丈夫だと思う、地下室から出なければ僕無敵だし」
半信半疑だったがミズチは母親の居場所を教えてくれた。北の洞窟の奥底、神々の泉と呼ばれる地底湖に住んでいるらしい。
神々の泉かぁ…まあ行ってみるか…大体正体分かるよね。
すぐ戻るよとミズチに声をかけ、全速力で北の洞窟に向かう。
どうせ七聖竜でしょ?なんかこの壮大な感じ。
洞窟に着いたがそのまま最新部まで飛ばす、地面透視で見ると敵はいなそうだが…何やってんのお母さん。
娘さん困ってますよ!
そして最新部に行くととんでもない光景が広がっていた。
「おいおい何これ妖怪大戦争?リモコンで動く下駄なんて僕持ってないよ!」
一匹の水竜?悪く言えば水色の海蛇が巨大な魔獣と戦っていた。
敵は大蛇や大ガエル、よく分からないワーム、よくこんなデカいの揃ったな、そんなに広かったかこの洞窟。
しかし水竜は防御一辺倒といった感じ、まあ助太刀しよう。さっさと倒して話を聞くか。
大砲は洞窟が崩れるというか新しい洞窟が誕生してしまいそうなので切り裂きでいくか。
僕は三匹の魔獣にロックオンし、ボタンを押した。
三枚の刃が敵を切り刻み削っていく、結構グロテスクだな、切り身みたいなのがドスドスと音を立てて落ちる。数分で魔獣は細切れになり、血の海が出来た。
水竜は何事かと周りを見渡している。
僕は血の海を避けて顔を出し、水竜に声をかけた。
「苦戦してるようだから助太刀させて貰いました、あなたの娘さんから話を聞いて来た冒険者のショウです」
水竜はこちらを向き僕に話しかける。
「マジ?こんな人間があのやべぇヤツ倒してくれたの?超ウケるんですけど!ありがとうねぇ、感謝感謝ー」
いやいやいや、なにこの軽い雰囲気、まじパねぇじゃん。
「あの…一応話を聞かせてもらっても?」
イイよー!と話しやすいように人型になる水竜、この感じ完全にルナティアだ。七聖竜だろこのギャル。
「ウチは天海竜エルナヴィス、エルナでいいよぉー、あと敬語とかめんどいからタメでいいし」
こんなのでいいの?なんか爪伸ばして小銭拾えなそうなギャルでいいの?七聖竜。
「ルナティアと常世の知り合いでしょ?なんとなくだけど」
「わわ、懐かしいんですけどー、そうだよ!プライマル・セブンのエルナでーす♪」
「んでなんでこんな事になったの?ミズチちゃん困ってたよ」
話を聞くとどうやら神々の泉の結界を貼り直すタイミングで魔物が侵入し、泉の水を飲まれてしまったらしい、そして巨大化した魔獣と数十年戦っていたのだが、守りは強いが攻撃が弱いらしく、難儀していたんだとか。
「ウチって浄化とかに特化してるじゃん?だから攻撃力は大した事ないんだよね!まじ助かったよー!ミズチの事もありがとね!今あの子の周りも浄化したからしばらくしたらまた魔獣居なくなると思うよ!」
「それは良かった、じゃあ僕はこれで…」
帰ろう…なんか疲れるよこの人、人型のエルナは口調はギャルなのだが見た目は黒髪清楚、脳がバグるよこんなの。
「ちょっとまっち!!ウチもミズチの所行くから送ってくよ!結界も貼り直したし!」
まっち?なにそれすごいバカっぽい!
「まあ背中乗りなよ!冷たくて気持ちいいよ!」
そうなの!?気になる!乗ります!
こうして僕は竜の背に乗ってミズチの湖まで飛んでいく。
あ、本当だひんやりして気持ちいい…
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