第48話 コーヒー 疫病
地下室に戻り僕は久しぶりにコーヒーが飲みたくなってきた。
最近酒ばかりだったしな…
すぐにステータス画面を開きコーヒーメーカーを交換、アイスコーヒーも飲める優れもの。
「美味い…仕事中はずっと飲んでたな…懐かしい」
例えばあのまま女神に殺されないままだったとして、夢のマイホームに一人で住み、仕事をしてたらこんな風に満たされた気持ちでコーヒーを飲めただろうか。
まああのサキエルとかいうアホは度し難いが、結果としてこんな素晴らしい地下室に住んで人々を笑顔にしている。
今の方が絶対に…
そんな事を考えているとカムイさんが起きてきた。
「おはようございます、すごい寝ましたね」
「おはようショウさん…いやぁ申し訳ない、麻雀は時間を忘れてしまうな…ところでその黒いのはなんだろうか、コーラにしては泡が無いな。」
「アイスコーヒーですね、苦いんですけど美味しいんですよ、頭がスッキリします。」
お約束だと苦い!こんなもん飲めない!と言う所だね。
「どれ、俺も飲んでみるか…頭がスッキリするのならありがたい。麻雀の牌が頭にちらつくんだ」
病気?新手のギャンブル中毒?
そしてアイスコーヒーを飲むカムイさん、どうだ…不味いって出るか?
「美味い!確かに頭がスッキリするしこの苦味!この香り!朝にピッタリだ」
おや、これは高評価だ。
そしてゾロゾロと起きてくるメンバー、カムイさんがコーヒーの宣伝をし、みんなが飲み始めると…
「これは美味しい…というかスッキリしますね!」
「良いねこれ!香りが気に入ったよ!」
「頭が冴えるのう…毎朝飲みたい味じゃ」
まさかの全員高評価!?そんな事ある?
いやまあ美味しいんだけど!
そこにタマも起きてきてみんなが美味しそうに飲むので興味を持ちコーヒーを口にする。
「なんにゃこれ!苦くて不味いにゃ!常識はずれにゃん!!」
なんか期待してたより派手に貶すじゃん。
ブレイズのみんなとタマはこれから依頼を受けにいくらしい。
僕も行くか、たまには軽い依頼ないもんかね…
出がけにコーヒーを美味しそうに飲むブレイズのメンバーを見て少しプレゼントをしようと思った。
僕はステータスを開き人数分の水筒を出す。保温機能があり出来るだけ軽い物を選んだ。
ついでにタンブラーも4個、ギルドのみんなにあげよう。
水筒は色違いで5色、容量も結構入る。
「あの、旅の途中の水分補給に使って下さい。保温機能があるので好きな飲み物持っていけますよ」
「おお!それはありがたい!何から何までお世話になってばかりだな」
いやいや気にしないで下さいと全員に水筒を手渡す。
シルバさんはアイスコーヒーを。
アカネちゃんもアイスコーヒー。
シンシアさんはミルクティー。
タマはスポーツドリンク。
そしてカムイさんはウイスキーを並々と汲んで出て行った。
いやアルコールは水分にならないよ?
僕も行くか、仕事もしないとな、最近遊んでばっかだし。
ギルドの受付に行くといつもの光景とは少し違う、ノアちゃんが受付をしていた。
あれ?ユキさんは?
「今日は依頼を受けに来たよ。ユキさんは具合でも悪いの?」
「残念がらないで欲しいっす!今休憩中っすよ!」
顔に出てた?そんな事ないよね?
「いや残念と言えば残念だけどノアちゃんが嫌とかそう言う訳ではなくてですね」
「知ってるっすよ、イジワルしただけっす。それで依頼受けてくれるんすよね?緊急性の高い依頼があるっす。」
緊急性高いのって大体やべぇの多いじゃん…
「さっき来た依頼なんすけど、北の村で疫病が流行ってるらしいんす。まだ死者はでてないんすけど時間の問題みたいっす。治療と原因の究明が依頼っすね」
これは面倒だとか言ってられないじゃないか。
疫病?ヒール風呂でどうにかなるな。原因の究明はどうか分からないけどまず救える命は救いたい。
僕はこれプレゼント!とタンブラーをノアちゃんに渡し、すぐに地下室で北の村に向かった。
僕がギルドを出たすぐ後…
「今ショウさん来てました?」
ユキは休憩が終わり顔を出した。
「入れ違いっすね、例の疫病の依頼の話聞いて飛び出していったっす。優しいっすよね」
「そうですね…無事だと良いんですけど。」
「あ、これショウさんからプレゼントらしいっすよ。なんかコップ?っすね。」
「綺麗ですね、四色ですか、ピンクは私の分ですかね」
「いやきっと私がピンクっす!」
どうでも良い争いが起こっていた…。
僕は急ぎ村を目指す、30分もあれば到着できそうだけど…疫病か…大丈夫かな…
村に着くと看病だろう、走り回ってる女の子に声をかけた。
「冒険者のショウです、依頼を受けてきました。すぐに治すので病人を僕のスキルの地下室に入れて下さい」
「お待ちしておりました!すぐに手配します!」
そう言って女の子はどんどん病人を連れてくる、僕は地下室で待機し、片っ端からヒール風呂に案内、治った村人に病人を連れてきてもらい、1時間もした頃には全員完治した。
「ありがとうございました、私はこの村で医者をしているククリと申します。」
医者?こんな若いのに?見た所20歳も超えてないんじゃない?
「医者と言っても実際は薬草を調合する程度で…今回は何も出来ずに…本当にありがとうございました。」
薬草の調合もすごいと思うけどな、僕なんか何も出来ないし。
「ちなみに原因に心当たりは?」
「私は水源の汚染だと考えております、数日前から水の味が変わった気がしていたのですが、そのあたりから疫病が流行り出したので…」
水源?なんかよくある感じだな、魔物が住み着いたとかそんな感じかな?
「水源の湖には水の精霊がいるのでその精霊に何かあったのかもしれません。」
「精霊ですか?いるんだ本当に」
「あの山のふもとです、周りに魔獣が多いので近づけませんが昔からいると祖母から聞いております、昔は魔獣もいなかったのでよく遊びに行っていたそうです。」
まあ行ってみるか…とりあえず今日はみんなに休んでもらおう、病気は治ったが元気になったわけじゃない。
「わかりました。明日見に行ってみます。今日はこの地下室でゆっくり休んで下さい。」
そう言って僕は肉を大量に用意、野菜は無限なので好きに食べて下さいと鉄板焼きを解放、ナイトプールにはグリルを数個用意した。
「みなさん、この地下室のものは好きに使って良いのでゆっくり休んで下さい。お酒もお好きにどうぞ。」
ククリさんは目を丸くしている。
「あの…そんなに報酬出してないんですけど…良いんですか?」
僕はみんなが楽しめばスキルポイントが貰えるのでお釣りが来ますと説明し、ククリさんは半信半疑だったがありがとうございますとお礼をくれた。
「ククリさんもお風呂に入ってゆっくり休んで下さい、ベッドは無理ですけど人数分の布団置いておくので」
ずっと看病していたのだろう、服は汚れていて疲れも見える。
「お風呂なんて無かったのでどんな感じかよく分からないんですが…お言葉に甘えようと思います。」
その後、村人からはこれでもかというくらい感謝され、お約束の大宴会になった。
子供達はプールやボードゲームで遊び、大人達は酒を飲む。
最近思うのだけど良くこの地下室に住みたいって人出てこないよな…みんな来てもあっさり帰るし。
きっと特別な日って割り切ってるんだろうな。
ククリさんも祖母とカクテルを飲みながら笑っている。楽しんでくれて僕も嬉しいよ。
さて、明日は一人で水源に行くか…なんとなく村人に見られると良くない気がするんだよね。
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