第32話 デート 釣り 亀
こっそりと町の外に出るのに地下室ほど便利なものはない。
ユキさんは家に戻ってお弁当を作ってきてくれた、楽しみだなぁ。
「誰も来なくてゆっくり出来そうな場所ってありますか?」
まあ地下室がそうなんだけどそういう話じゃない。
「そうですね、ズル休みしてるのバレると面倒なので…そして私って結構顔が広いので下手な場所だと見つかってしまう可能性が…やっぱり後日にしますか?」
別にズル休みでは無いような気もするんだけど…
まあ回復したしズル休みになるのか?分からん。
ユキさんがギルドの受付だからなぁ…確かに顔は広い、どこかないものか…
僕はユキさんとマップを開いて確認する。
「え?この森の中に湖なんて無いはずですが…」
ユキさんはマップで気になる場所があるみたいだ。
「このマップ…ギルドが所有してる物よりも正確です。この湖は認知されていない…ここなら誰も来ないかも…」
なんかあっさり見つかったな。目的地が決まったぞ。
「じゃあここに向かいましょう!少し遠いけど全速力で行けば1時間もかからないと思います」
未開の湖か…ちょっとワクワクするな。
ユキさんと談笑しながらドライブ。
これだけでもデートっぽい、運転してるのは地下室だけど。
目的地に着くと綺麗な湖だ…よく見つからなかったなこんなに大きいのに。
「綺麗な湖ですね、確かにこの辺りは何も無いので冒険者も来ません、見つからなくても不思議じゃないかも。」
僕は簡易テーブルと椅子をポイント交換し湖のそばに置いてみた。なんかそれっぽい感じになったぞ。
どれっぽいかは知らないけど。
「お弁当食べましょうか?」
とユキさんが言ってきたので僕は食べます!と即答した。当たり前だ、ユキさんの手料理だぞ?
お弁当はサンドイッチ、綺麗に盛り付けてある。
「時間がなくてこんなものしか準備できなくて…」
「いやいや、すごい美味しそうです!頂きます!」
ハムやチーズ、野菜で出来たシンプルなものだが何もかもが美味しい、幸せ者だ僕は。
バクバク食べる僕をユキさんはニコニコして見ている、美味しいですよ!
食事が終わり2人で椅子に座り湖を見つめる。
「のどかですねぇ…」
「こんなゆっくりした時間久しぶりかも知れません…とても落ち着きますね。」
「釣りでもしますか?何か釣れるかも」
「つり?なんですかそれ?」
あらま、ご存知ない?そういえば海を見た事ないとか言ってたな。それとも釣りの文化自体ないのか?
ちょっと待ってて下さいと釣竿とエサのセットをポイント交換、ついでにバケツも。
釣竿なんて地下室に釣り堀でも作った時用か?全く地下室と関係ないけど、なんでもあって助かる。
「釣りはこの棒を使って魚を取ります。ただそれだけです」
魚は網で取った方が早いのでは?と言われたがそれじゃ漁業になってしまう。
でも漁業と釣りって別に差がないよな…一本釣りとかもあるし。
「まあやってみて下さい、すぐには釣れないと思いますが。」
エサはワームだ、生きエサも良いけど多分ユキさん苦手だろう。
「そうですね、生きてる魚なんてあまり見る機会ないですし、やってみます!」
それっと湖に餌を投げ入れるユキさん。
「あとは魚が食いつくとそのウキが沈むのでそしたら釣り上げて下さい。本当にそれだけです。」
僕は自分の竿を準備しよう、個人的感想だけどこの竿とエサと針の準備って結構面倒じゃない?
「ウキが沈むってアレの事ですか?」
え?引いてる?
「ユキさん!魚かかってます!引き上げて下さい!」
「すごいブルブルしてます!ていやー!」
ていやー?可愛いんですけど。
おぉ!魚だ!思ったより普通!
ユキさんは嬉しそうに魚を掴んでいる。
「釣れました!ほら!美味しそうなコロです!生きてるの初めてみました!」
コロ?なんか犬みたいな名前で食べにくくない?
コロは人気の高級魚らしい、たまに行商人が売りに来るがすぐに売り切れてしまうんだとか。
ぶっちゃけ見た感じ完全に小さい鮭である。
ユキさんはバケツにコロを入れてまた釣りを始める。
「どうですか?釣りは」
「面白いです!あの糸の先で魚が動いている感覚がなんとも刺激的で」
楽しそうで何よりだ。今日は魚の塩焼きだな。
「また来ました!ていやー!」
ユキさん調子いいな、なんで僕の竿には当たりが来ない?
数時間後、完全に食べきれない量の魚が釣れた…
釣りは漁業だった。
「いっぱい釣れました!まだまだいきますよー!」
大丈夫?コロ絶滅しない?
そろそろ帰りますかと声をかけた時にはもう夜だった。
「また来ましょう!新しい趣味に目覚めそうです!」
どハマりだ、一生幸せでいたいなら釣りを覚えろって本当なのか?
ユキさんが片付けの為竿をあげると何かくっついている、亀?亀だよな?
「なんか釣れました…これはなんでしょうか…」
亀じゃないかな…なんかありえない色の…
ピンクの亀だ、なんだろう、可愛い
亀はペッと餌を吐き出し…
「あの、どちら様ですか?」
喋った?ウソでしょ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます