第30話 未開のダンジョン ビデオカメラ ドラゴンスレイヤー
フカフカのベッドで起きる僕。
普通に暖かい朝ごはんを作ってくれるレイさん。
未開のダンジョンをどう攻略するかで盛り上がる僕達。
そう、ここはダンジョンの中だ。
「地下室がなかったらあの薄暗い部屋で寝るんですよね、結構大変そう。」
「二人共寝てしまうと危ないので見張りを交代しながらですね、と言うかダンジョンに二人は少なすぎますね。」
「確かに、それはそうですね、はっはっは」
はっはっはで済んでしまうのがこの地下室、最悪最深部まで進んじゃっても良いし、怪我をしたらヒール風呂がある。
僕達の作戦はこうだ。
レイさんが先を進み、僕は後方。
危なくなったらすぐに地下室を出して避難。
これだけ。
「私もレベルがどんどん上がってるのである程度の敵は倒せると思いますが強敵に出会ったら地下室に逃げようと思います。」
そういやあったなレベルとか…僕は地下室で大砲やらカッターやらぶっ放して敵倒してきたから何も気にして無かったよ。
一応四天王を倒した件で180レベルくらいに上がったけど。
それでは冒険に出発しましょうとウキウキのレイさん。夢が叶ったんだもん、そりゃ嬉しいよな。
そして発見した階段を降り、未開のダンジョンを攻略だ。
「ちょっと待って、あれさっきのミノタウロスじゃないの!?」
下の階に降りるとさっきのボスが二匹で行動している。
「あれが雑魚の敵なのでしょうね、難易度が跳ね上がってます…行ってきます!」
ミノタウロスに突進していくレイさん…物凄い速さで喉を切り裂き、一瞬で片付けた。
「なんかレイさん速くなってない?」
「そうですね…戦闘に慣れてきた感じがします。」
もう冒険者になったら?
昨日までのダンジョンとは広さが段違いだ、階段を探すのも一苦労。
ん?宝箱だ!誰が設置してるのか分からないヤツ!
「レイさーん、宝箱あったよ!!」
僕は早速中身を確認する。
「あ!ショウ様!そんな不用意に!?」
ミミックでした…本当にいるんだなぁ…
僕は頭から飲み込まれたが全く痛く無い、スキルの丈夫な身体のおかげかな。
剣を振るうとミミックは豆腐のようにサックリと切れた。今度から剣で切って開けよう。
「気をつけて下さい、ちなみにミミックは箱に若干のスキマが空いているのが特徴です。」
ほんと?流石ダンジョン博士、勉強になるなぁ。
やっと下への階段を発見、下に降りると巨大な猪が走り回っていた。
レイさんはいつもの行ってきます!の後イノシシをボロボロにして倒した。
「左前足の付け根に弱点がありますね、次からはもう少し早く倒せそうです。」
僕もやってみようとイノシシの前に飛び出したが早すぎて弱点どころでは無かった。
剣を持って待っていたら勝手に突っ込んできたのでサックリ真っ二つ、なんか違うんだよなぁ…
僕達は1日1フロアずつ攻略する。一週間もすると流石に二人とも慣れてきた。
「この階層の敵は質より量ですね」
「じゃあ僕が先に行くよ、剣振り回してれば勝手に死んでくし。」
「このフロアの敵は素早いですね」
「じゃあレイさんお願い、僕は後方待機しておくから好きなだけ走り回ってね」
もうかなり進んだな、もう少しでレイさんのお休みが終わってしまう…はやくボス部屋出てこないかな…
「ありました!ボス部屋です!」
明らかに前のボス部屋とは格が違う…重厚な赤い扉…中に何がいるんだ?
「一旦確認だけして地下に入ろう、なんか凶悪な敵がいそうじゃない?」
「確かに二人で対処できない敵にケンカは売れません…とりあえず見てみましょう」
扉を開けると燭台に火が灯る。ここまでは前と一緒だが…
「まじか…」
「ドラゴンです!あれを倒したらドラゴンスレイヤーですよ!」
確認したので打ち合わせ通り一旦地下室へ避難する。
「感動です…実際にドラゴンと戦える日が来るなんて…」
え?戦うの?大砲撃っちゃだめ?
しかし実際のところあんな巨大なドラゴンを二人で倒すとなるとキツいよな…
「ドラゴンは体のどこかに逆鱗があります、そこを突ければ倒せます!そこでお願いなのですが…ショウ様の剣を貸して頂けないでしょうか?ナイフでは多分刺さっても急所に届きません。」
「良いですけど…本当に戦うんですか?」
僕は大砲で撃っても良いですよと言いかけたがやめておいた。ドラゴンと戦うのは冒険の締めだとしたら無粋すぎるからね。
「そして出来ればショウ様にはサポートに徹して頂きたいのです。私が危なくなったらすぐに回収して下さい。」
「確かにその方が安全ですね、分かりました。僕は地下室で様子を見ながら待機します。危なくなったら問答無用で回収しますよ?」
「それで結構です。楽しみですね…胸が踊ってしまいます。」
踊るか…レイさんの戦う姿を映像に納めるのも良いかも。あとでこっそりとビデオカメラを交換して部屋の角から撮影しておこうかな。
きっと帰ってから王族の親子に自慢出来るだろう。
今日はとりあえず寝て明日に備えよう。
翌朝、いつも通りにベッドで目を覚まし、レイさんのご飯を食べる。
「ついにドラゴン討伐ですね、本当に大丈夫ですか?」
「ショウ様が見守っていて下されば怖いものなんてないですよ」
ダンジョン攻略で大分仲良くなったと思う。ちょっと別れるのが寂しいな。
そしてドラゴン討伐の時間がやってきた。ミッドナイト・ノヴァをレイさんに渡す。
「軽いですね、それであの切れ味…国宝でもこのレベルは無いと思います」
僕は身体の丈夫さ頼りにブンブン振り回すだけですけどね。
「ちょっとだけ様子を見てきます。そう言って地上に一瞬顔を出し、小型のビデオカメラを設置。
地下室を移動して二箇所に設置した。これでレイさんの勇士が映像で残るぞ。
「ドラゴンは完全に部屋に入るまで動かないみたいです」
「なるほど、扉を開けたら目の前にっていう事は無いのですね。それでは…行ってきます!」
そう言ってレイさんは表に出た。僕は地面透視で天井を見上げる。
しょうがないのだがこのスキル使うとスカートの下から覗き込んでるみたいになるんだよな…困った事だ、本当に困った事だなぁ。
部屋に入ったレイさんは興奮を抑えきれないようでドラゴンに突進、凄まじい速さだ。どれだけレベル上がったのだろうか。
レイさんを迎え打つドラゴンは爪を立て切り裂くがギリギリで避けるレイさん、メイド服に掠ったがケガはしていないようだ。
そして手を切り付ける、浅いがしっかり切れている、僕の剣って本当にすごいな…
すかさず火を吐くドラゴン、レイさんはドラゴンの腹の下に回り込み回避、剣で切り刻みながら進む。
声を上げたドラゴンは飛翔し、上空から火を吹くが既にレイさんは壁を蹴って跳躍しておりドラゴンの上を行く。
片翼を根本から切り落としドラゴンは地面に叩きつけられた。
そして素早い連撃、ドラゴンの体は傷だらけだ。レイさんは爪の攻撃をギリギリで避けて斬撃を叩き込む。
もうメイド服はボロボロ、戦闘に集中できないんだけど…
鋭い爪を切り落とし、手も切り落とし、満身創痍のドラゴンに向かって跳躍し、首を両断した。
逆鱗の話どこいったの?
僕のサポート抜きで勝っちゃったよ…
上に行くとドラゴンを見つめて肩で息をしているメイド。
「やりましたね、もう絵本の勇者みたいでしたよ。」
「やった!やった!ドラゴンに勝ったぁ!!」
子供のようにピョンピョン飛び跳ねるレイさん、なにそれ、すごい可愛い。
ドラゴンは魔石の代わりに何か赤い石?を残して消えていった。
「ドラゴンハート…これが本物…」
大事そうに拾い上げるレイさん、なにそれ?
「ドラゴンハートはドラゴンを討伐した証です…子供の頃に憧れたこの宝石を自分の手で…
私の夢を叶えてくれてありがとうございました。
一生の思い出です。」
嬉しそうにドラゴンハートを見つめるレイさん、こっちまで嬉しくなるよ。
「あと宝箱が出てるね、何が入ってるんだろう」
「開けてみましょう!」
中を開けると…杖?
「ドラゴンの素材で出来ているようです。ドラゴンボーンスタッフですね。」
「魔法使えないからなぁ、こんなの貰っても…」
「シロ様に差し上げたらどうですか?きっと喜びますよ、火力が上がるハズです。」
あーシロか、じゃあ貰っておこうかな。
「それとさ、雰囲気的に言い出せなかったんだど…」
なんですか?と首をかしげるレイさん。
「あの…服がボロボロで…」
自分の姿を確認し顔を赤らめるレイさん。
「視線が泳いでいるなとは思ってましたが…今日だけは特別ですからね」
「はい…ご馳走様です…」
地下室の入り口を出し着替えを持ってお風呂に行くレイさん、明日には王都に送って行ってお別れか…長いようで短かったな。
あ、ビデオカメラ回収しなきゃ、中を確認したがよく撮れている。破けていく服もだが…
しかしドラゴンを単独討伐する映像、映画みたいだ…
お風呂から上がったレイさんにこの映像を見せてみる。
動画という物の存在に驚いていたが何回も巻き戻して見返し、顔には笑みが浮かんでいた。
自分の夢の叶う瞬間だもんな…このままカメラごとあげよう。
「ショウ様、私の色々が見えてしまってますがどうですか?」
「どうですか?と言われても…かっこよくて綺麗でした」
僕は率直な感想を述べた。
「そ、そうですか、それは何よりです」
顔が赤いな、やっぱり恥ずかしいのかな?
明日にはお別れだ。今日は美味しい物を食べてお酒を飲みながらビリヤードでもしよう。
少し寂しいが二人で過ごす最後の夜はとても楽しかった。
レイさんも良く笑うようになったなぁ。
そして翌日、王城にレイさんを送り届けるとココさんとハンナちゃんが出迎えてくれた。
「あら、なんかスッキリした顔してるわね、休暇は楽しかったようですわね」
「レイはどこ行ってきたの?」
「私は大冒険をしてきたのです。」
レイさんは大冒険の話を楽しそうに話す。
「このドラゴンハートを見てください、一生の宝物です。」
「本物じゃないの!えー私も欲しいわー」
「カッコいい!どうやって倒したの!」
ふっふっふとビデオカメラの映像を見せるレイさん。
「わー!!レイ格好いい!ドラゴンを一人で倒してる!!すごい!」
「レイ、あなたこれ…本当なのね。ちょっと冒険者ギルドで登録してくるといいですわ。こんな優秀な人をメイドだけさせるなんて勿体無い!」
え?いいの?そんな簡単に。
「奥様、よろしいのですか?」
「良いですわ!メイドなら他にもいますし、仕事が無い時は帰ってきてくださいね…あなたの部屋は今まで通り自由に使ってちょうだい」
レイさんは少し考えたようだが、
「はい…それでは今から私はメイド兼冒険者になります!ドラゴンスレイヤーですから!」
夢はまだ続くんだ、同じ冒険者として改めて宜しくね。
とりあえず任務完了だ!
僕は三人に挨拶をしてユキさんのいる町へと帰る。
時間空いちゃったけどデートの約束は生きてますか?
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