第28話 ボウリング 親子愛 オマケのカメラ

【冒険者ギルドにて】

はぁ…と溜息を付きショウとの写真を見つめるユキ。


「ショウさん…帰ってこない…」

王都の魔王軍の討伐で大活躍し、王に気に入られたと帰ってきた冒険者から聞いた。


「もしかして…王都に拠点を移動しちゃうとか…はぁー…」


「先輩落ち込んでるっすね…」

「まぁそうねぇ…他の冒険者が帰ってきてるのにショウさんだけ帰ってこないんですもの、心配にもなりますよね。」


一方その頃地下室では…

「ロンですわ!!」


「くっ…奥様の待ちは読めません…なんでその手で地獄待ちなんですか…」

「お母様は地雷みたいなものなので当たったら運が悪かったという事ですね。」


深夜になっても麻雀は続いている。

いやもう何局やった?別に良いんだけどなんかせっかく遊びに来たのに麻雀で終わるの?

もうみんな目が怖いよ?


途中から頭の回転が鈍くなるとお酒を飲むのをやめてみんなソフトドリンクを飲み始めた。

そこまでする?楽しそうにお酒飲んでたじゃん。

別に麻雀も楽しいけど…楽しいんだけどコレじゃない感がすごい。


【緊急ミッション!麻雀卓からひっぺがせ!】


「そ、そう言えばサウナは入りました?身体の芯から温まって美容効果もあるんですよ」

レイさんとココさんが一瞬止まった。


すごい速さで打牌をしながらレイさんが口を開く。

「サウナ?なんでしょうかそれは」


「お風呂にありませんでしたか?」


「そんな施設がありましたの?興味深いですわ…この局が終わったら少し覗いてみようかしら。」

お、ミッション達成か?


「えー今私調子良いんです!もう少しやりたいですわ!」

ハンナちゃん!無邪気な可愛かった顔が玄人のそれになってるよ!

僕はカメラを持ってきて麻雀中のみんなを撮ってみる。


「ちょっと見て下さいこれ…」

全員がデジカメに目をやると…


「こんな一瞬で絵がかけるのですか?それにしても…殺伐としてますね…」

レイさんはそんなに変わらないけど内なる獣が呼び起こされてる雰囲気が出てるよ。


「すごい機械ね…しかし怖い顔になっているわね私」

途中から地雷扱いもされてましたよ!


「えー私ってこんな顔して麻雀してるんですの…ちょっと熱くなりすぎましたね…それにしてもこの機械、素晴らしいですね…ちょっと貸してもらっても良いでしょうか」


全員が今の状況を把握し、一旦サウナで汗を流す事になった。ハンナちゃんはカメラが大層気に入ったようでみんなの写真をとっている。

そうそうこれ、こういう楽しい雰囲気ね。


ミッション達成!


僕はサウナでステータスを開き幸せポイントを確認。

【幸せポイントが規定量に達しました。スキルポイント200を付与します】

200!!?あの人達脳汁出しながら麻雀してたの!?


このまま戻ると結局麻雀をしてしまう気がする…

何かこう、キャッキャうふふな設備は…

これだ!50ポイントでボウリング!子供も遊べるし適度な運動にもなる!


サウナで整った身体でボウリング場を確認、部屋に扉が増えており見知ったボウリング場がそこにはあった。


レーンは5個しか無いけど十分だ、なにかノリノリな音楽も流れている。

本当にどういう原理で出来てるんだろうこの地下室。

たまにやりすぎなくらいだけど。


ボウリング場を出ると女性陣がスッキリした顔でそれぞれ飲み物を飲んでいた。

「ちょっと熱くなりすぎていたようね、付きものが取れた感じですわ」

「そうですね、頭を使うのでどんどん余裕が無くなっていきますね」

「でもあの大きな流れを掴んだ時の万能感は気持ちいいですよね」


「「「さてと…」」」

全員が麻雀卓に向かうのを全力で止める。


「ちょっと待ってください!紹介してない施設があるんです!こっち来てください!」

必死に止める、このままだと朝までコース…いや、昼までコースもあり得る。


「何をするところですの?」

ココさんはビール片手に歩いてくる、なんかもうジョッキのイメージしか無いよ。


「ボールを転がして的を倒すゲームです!」

おや、全員が麻雀の方が良くない?っていう顔してるぞ?とりあえずやってみてよ!


「これはまた凄まじい…」

「広いですね、ショウ様の地下室って一体どういう原理…」

「明るいですわね、音楽も楽しげでワクワクしちゃいますわ」

うんうん、麻雀も良いけどやりすぎは良くないからね。


「あそこの的が10本あると思うんですけど球を投げて倒していくスポーツです。一回に付き二球投げられます。」

とりあえず持ちやすい大きさの球を選んで下さいと言って球を選んでもらった。


「楽しそう!私投げてもいいですか!?」

ハンナちゃんは子供用のボールを持って力いっぱい転がす。しかしガーターだ。


「うぅ…難しいですね…」

そんなハンナちゃんに手を振り子のようにしてこう…と投げ方を教えてあげる。

「なるほど…分かりました。やってみます!」

球はコロコロと転がっていき、ピンを5本倒した。


「やったぁ!当たりました!いっぱい倒しましたよ!

さっきまで母親の事を地雷とか言っていた子とは思えないはしゃぎっぷりだ。子供はこうでなくては。


「なるほど、楽しそうですわ、次は私が行きます。」

ココさんは綺麗なフォームで球を転がし、左の四本を残し六本を倒した。


「やりましたわ!カコンという音が気持ちいい!この調子で残りも倒しますわ!」

しかしギリギリを狙った球はガーターに落ちて行った。

「くぅ…なかなか難しいですわね…」


「次は私が行きましょう」

レイさんってなんでもできるイメージがあるんだよね…

フォームは教えた通り完璧、しかしなぜか球はガーターに吸い込まれた。

「これは難しい…なにかコツが…」

全然納得いってない…まああれだけ完璧なフォームでガーターに落ちるのはかなり謎だ、僕も理解できない。


そして最後に僕が投げてみる。カコーンという音と共に綺麗なストライクを取った!ファンファーレが鳴り響く!テンション上がるよねこの瞬間。


「ショウ様すごいです!カッコいいです!」

「あらあら、こんな感じになるのね、私も全部倒したいわ!」

「ショウ様、素晴らしいです。惚れてしまいそうです」

え?ボウリングで?ぶっちゃけ言うと今のは運だよ?


チーム戦をしようと言う事になり実力の問題から僕とレイさん、ココさんとハンナちゃんチームだ。


「お母様!頑張りましょう!」

「久しぶりねぇ、親子でこんなに遊ぶのは、頑張りますわよ」


「ショウ様、宜しくお願い致します」

「まあゲームだしね、気楽にやろうよ」


ボウリングは白熱した、ココさんとハンナちゃんはストライクこそ無いもののスペアをたまに取り順調に点数を稼いでいく。

「お母様!いい調子ですね!」

「ハンナもすごいじゃないの!こんなに大きくなったのね…」


いい光景だなぁ…なんかほっこりするね。

「そう言えばレイさん、最初にグアム王と会った時はココさんどこにいたの?仕事とか?」

少し気になったので聞いてみた。


「奥様は多忙ですので…旦那様はもう仕事をきちんとこなせる年齢ではありません。

本当はこうやって遊ぶ時間もないのです、時間が空いたら少しでも睡眠を取らないと身体を壊してしまいます。なのでここに来るのを内緒にしていたのです。

しかしここお風呂は回復効果があるので奥様も元気になられました。本当に感謝しかありません。」


もしかしてあの幸せポイントが大量に溜まってたのって…ハンナちゃんがお母さんといっぱい遊べたからか?

後で写真を…あれ?カメラは…あぁ、ハンナちゃんか。


そして僕の番、ストライクはそんなに連発できる訳でもない…僕はそこまで上手く無いからね。


「しかしいつの間にか結構な点差ですね…」

レイさんは殆ど倒さないからなぁ…向こうは着実に何本かは倒すし…実質僕対親子みたいな…


レイさんの番になりこんどこそとボールを持ち歩いて行く。


「ん?ちょっと待って!」


「ん?どうしました?」

振り向くレイさんの球を見ると、なんだあの持ち方、逆にすごい。

親指と薬指と…小指?怪我しないそれ?


「ちょっと持ち方が独特というか…辛く無いですかそれ」


「これが普通だと思っていたので、確かに安定しないとは思っていましたが…」

え?酔ってる?親指と中指と薬指で持てば少し安定しますよとアドバイスをし、これは安定しますねとレーンに歩いて行く、そして…


ストライク!問答無用のストライクだった!綺麗に倒したね!


「こ、これは気持ちいいですね…クセになりそうです」


「レイすごいじゃない、私も頑張らないと!」

ココさんもレイさんを見て何か学んだのか続けてストライク。この人達スペックは高いんだよね。


そして最終ゲーム、ハンナちゃんがスペア以上を取ったら僕達の負けだ。

レイさんのストライク連打でかなりの点差を埋めたな。


「ハンナ!頑張ってね!」

「お母様!任せて下さい!」

いい親子だ、二人とも幸せそう。


ハンナちゃんは大きく振りかぶり、勢い良くボールを投げた。

コロコロと転がる球は真ん中に向かい…最後の一本まで静かに倒れた。


「やったぁ!お母様!やりました!」

「すごいわハンナ!本当すごいわ!!」

親子はハイタッチをして喜んでいる。


ん?レイさん少し泣いてる?

まあ無粋だな、今は声をかけないでおこう。


そのあとで三人の写真を取り、プリントアウトして渡したら大層喜んでいた。

ショウ様もご一緒にと言われたのでタイマーを付けて写真を取る。

真ん中にはとびきりの笑顔でボウリングの球を持つハンナちゃん、うん、いい夜だった。


もう流石に遅いのでみんなは帰るらしい。

「素晴らしい時間でしたわ、本当にありがとう」

また今度ハンナちゃんと来てくださいね。


「それでは明日の朝から二週間宜しくお願い致します」

あ、本当に来るの?緊張するじゃん。


「本当に楽しい時間でした…ありがとうございます。

お母様とレイとこんなに遊んだのは小さい時以来です…また来てもいいですか?」

良いよ良いよ、お母さんの仕事が落ち着いたらまたおいで。


そして別れの間際にハンナちゃんが駆け寄ってきた。

「あの…カメラの件は内緒ですよ?それじゃあごきげんよう!」


そうして帰っていく三人。

カメラ?何かあったっけ…あ!前の写真そのままじゃん!ユキさんとかノアちゃんのあれやこれが…うっかりしてた…


ハンナちゃん見ちゃったかな…そう思いカメラの写真を確認すると…


え?お風呂までカメラ持って行ったの!?

ココさんとレイさんの…脱ぐとすごいって本当だったんだなぁ…


ハンナちゃん…もしかして保存されてる画像見て同じように?

考えすぎか。

寝よう、ちょっとカメラの画像を見てからね!ちゃんと確認はしないと!

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