放課後の黄昏時、鈴木太白は校舎の入り口で沖田玉妃を待っていた。心臓が少し速く鼓動し、手のひらには少し汗がにじんでいた。夕陽の残光が地面に落ち、彼の影を長く引き伸ばしていた。

やがて、玉妃が教室から姿を現した。彼女は太白が立っているのを見つけ、少し驚いたように足を止めた後、微笑みながら言った。

「鈴木君、まだ帰ってなかったの？」

「君を待っていた。」太白は深く息を吸い、できるだけ落ち着いた声で答えた。「一緒に帰らないか？」

玉妃は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに頷いた。「もちろん、いいよ。」

二人は並んで校門を出た。空は徐々に暗くなり、湿った空気が漂い始めた。しばらくすると、空が急に曇り始め、黒い雲が集まってきた。大粒の雨がぽつぽつと降り出した。

「降ってきちゃったね。」玉妃は空を見上げ、小さな折り畳み傘を急いでカバンから取り出した。

「一緒に入ろう。」彼女は傘を開いて、太白にそっと視線を向けた。

雨はますます激しくなり、傘に打ち付ける雨音が一層強く響く。周囲の人々は足早に去り、通りはひっそりとしていた。ただ二人だけが、狭い傘の下で歩みを進めていた。

狭い傘の中で、玉妃の肩が時折太白の肩に触れた。彼女の視線は前方を向いていたが、太白は何度か彼女を盗み見してしまった。傘の縁から滑り落ちる雨粒が地面に跳ね、細かな水しぶきを作る。その様子が、彼の平静をかき乱すようだった。

太白はふと自分の半分濡れた靴を見下ろし、心の中で葛藤していた。「言うべきか、言わないべきか……」夕嬌の「言わないと後悔するよ」という冗談めいた励ましの声が頭をよぎる。

彼は傘の柄を握り締め、呼吸を整えた。そして、ついに足を止めた。

「玉妃。」雨音の中、彼の声が緊張と決意を帯びて響いた。

玉妃はその声に気づき、足を止めて彼の方を振り返った。雨で少し濡れた瞳が、困惑と不思議さを帯びていた。

「どうしたの？」彼女はそっと問いかけた。その声は優しく、まるでこの静かな瞬間を壊さないようにしているかのようだった。

太白は顔を上げ、彼女の目を真っ直ぐ見つめた。喉が一瞬震え、言葉を探すように唇がわずかに動く。彼は傘を少し彼女側に傾け、その顔をさらに鮮明に視界に収めた。

「実は……君が好きだ。」その言葉を口にした瞬間、彼の心臓は止まりそうになった。その低い声は、雨音の中でもはっきりと届いた。

傘の下、時間が止まったかのようだった。雨音だけが耳に響き、玉妃は目を丸くして動きを止めた。彼女の睫毛には小さな雨粒がつき、驚きと信じられないという感情が一瞬その目に浮かんだ。

彼女はゆっくりと顔を伏せ、唇を軽く開いたが、すぐには返事をしなかった。しばらくして、顔を上げて太白を見つめ、控えめな微笑みを浮かべた。

「実は……私も鈴木君のことが好き。」彼女の声は小さかったが、その一言一言が太白の心に深く響いた。

雨粒が傘の縁から滑り落ち、二人の肩を濡らした。薄暗い傘の下、玉妃の顔には細かな水滴がついていた。それが雨なのか涙なのかは分からなかったが、彼女の微笑みは光となり、太白の心の中の曇りを晴らした。

「ありがとう……」彼女は小さくつぶやき、ほっとしたような、そして喜びに満ちた声だった。

太白はその言葉に優しく頷き、微笑みを返した。何も言わずとも、その表情がすべてを物語っていた。

「どうしてもっと早く言ってくれなかったの？」玉妃は軽くふくれた表情で聞いたが、頬の笑みは隠せなかった。

「たぶん……僕が鈍いからかな。」太白は小さく笑いながら真剣な目で彼女を見た。「でも、言えてよかった。」

玉妃は頬を赤らめ、視線を落としたまま、小さく「うん」とだけ返した。

雨音が続く中、傘の下の小さな世界には、二人だけの温もりと甘さが漂っていた。

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