「交錯する視線、交わらない言葉」

学校に着いた頃には、他の生徒たちも続々と登校してきていた。お互いに挨拶を交わす声があちこちから聞こえるが、僕は誰とも会話せず、ただ静かに教室へ向かった。初めての友達ができる兆しは、まだ見えていなかった。


教室は3階にある1年2組。僕は窓際の中央付近にある自分の席に着いた。席は二人掛けだったが、今のところ隣に座る相手はいなかった。


「危なかったー!もうちょっとで遅刻するところだった!」隣の席の近くで、女生徒が友達に向かって息を弾ませながら話している。


その声に何気なく視線を向けると、今朝道を尋ねてきたあの女の子が立っていた。彼女は友人と笑いながら会話を交わしていて、その短い髪は肩に自然にかかり、毛先はわずかにふわりと弾んでいた。前髪は軽く額にかかり、彼女全体からはどこか清々しい雰囲気が漂っていた。


じっと見つめていると、記憶の奥底から彼女の名前がよみがえってきた。そうだ、彼女は千葉夕嬌(ちば ゆうきょう)。初中の同級生だったが、当時ほとんど話したことはなかった。でも彼女の笑顔だけは忘れられずに心に残っていた。


彼女の白い肌は透き通るように美しく、頬にほんのり浮かぶえくぼが笑顔を引き立てていた。瞳は大きく澄んでいて、ほんの少し上がり気味の目尻が、親しみやすさと柔らかさを感じさせる。自然なピンク色の唇は健康的な輝きを放ち、全体的に活力と清楚さが同居している印象だった。


そして彼女の体つきには、豊かさと優美さが同時に感じられた。制服は肌にしっかりとフィットしていて、特に胸元は自然な丸みを帯びていた。腰は細く引き締まり、その対照的なシルエットが女性らしい魅力を際立たせている。椅子に腰掛けて少し横を向く姿勢からは、すらりとした長い脚が覗き、その端正な佇まいは見る者を圧倒するようだった。


「千葉夕嬌……ここでまた会うなんて。」僕は心の中で名前を呟いた。初中時代の思い出が薄れている一方で、彼女の存在感はまるで昨日のことのように鮮明だった。彼女のあの独特の雰囲気が、僕にどこか懐かしく、そして心地よい親近感を抱かせていた。


「チリンチリンチリン……」授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響くと、教室は次第に静けさを取り戻し、全員が自分の席に着いた。


ホームルームの担任が教室に入ってきて、講台の前に立ちながら穏やかな笑みを浮かべて言った。

「今日は新しいクラスメートが来ましたよ。」

そう言うと、教室のドアの方に向かって声をかけた。

「入ってきて。」


軽やかな足音が響き、一人の女子生徒が教室に入ってきた。講台の前まで歩み寄ると、彼女は控えめに一礼し、自己紹介を始めた。

「初めまして、沖田 玉妃(おきた たまき)です。どうぞよろしくお願いします。」


鈴木太白は自分の席から彼女をじっと見つめた。その瞬間、朝にカフェの前で見かけたあの女子生徒だと気づいた。


彼の視線は自然と彼女を追った。彼女の髪は艶やかな黒髪で、肩や背中に滑らかに流れるように垂れており、陽光を浴びたような輝きを放っていた。その白く繊細な首筋は、肩の柔らかい曲線と調和し、力強さと繊細さを同時に感じさせる。顔立ちは清楚で柔らかく、目鼻立ちははっきりとしている。高く通った鼻筋と、少し上向きの鼻先が彼女に少しだけ愛らしい印象を加えていた。薄く色づいた唇がわずかに微笑んでいるとき、白い歯がきらりと見え、そのたびに自然な魅力があふれ出ていた。


眉は繊細で整っており、彼女に落ち着きと安定感を与えている。しかし、彼女の大きな瞳にはどこか物憂げな光が宿り、何か深い事情が隠されているようにも感じられた。彼女の身長は中くらいで、どことなく軽快で爽やかな印象を与える。肩のラインは柔らかく、全体的に調和のとれた美しいプロポーションで、その自然体の美しさには余計な装飾が一切なかった。まるで初秋のそよ風のような清々しさを漂わせながらも、どこか近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。


「そこの窓際の席が空いてるから、そこに座ってね。」担任は教室の窓際の空席を指差し、続けて太白の方向を見ながらにっこりと微笑んだ。「新しいクラスメート、みんな仲良くしてね。」


沖田玉妃は静かに頷き、指示された席へ向かった。そして、隣の席に座っている太白に軽く視線を送りながらも、すぐに興味を失ったように窓の外へ目を向けた。彼女の目は冷たく澄んでおり、何か考え事をしているようだった。


太白は彼女の冷めた様子を見て、特に声をかけることもなく、机の上に広げた教科書に視線を戻し、黙々と書き込みを始めた。


午前中の授業中、隣同士の二人は一度も会話を交わすことがなかった。教室には生徒たちの会話や授業の声が響いていたが、彼らの間には目に見えない壁があるかのように、ただ静かな時間が流れた。

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