第17話 発見!!
ソファーに座ると、侯爵家の侍女の方がお茶の用意をしてくれた。
(いい匂いだな~~果物のお茶かな?)
ふんわりと甘い匂いが漂って来て思わず目を閉じた。
そして今度はテーブルにケーキが並んだ。
今回は普段、なかなかお目にかかれない黄色いケーキや紫色のケーキや前回食べた。赤いケーキや緑のケーキと色鮮やかなケーキが並んでいた。
「うわ~。鮮やか!! 綺麗ですね~~」
俺が声を上げると、ノア様とキャリー様が不安そうな顔をした。
「レオ……本当にそう思う?」
「はい。もちろんです」
ノア様の不安そうな問いかけに力強く頷いた。
「紫のケーキなど気持ち悪くはないですか?」
キャリー様も真剣な瞳を向けてきた。
「気持ち悪い? いえ……宝石のようで食べるのがもったいないとは思いますが……気持ち悪いとは思いません」
俺の返事を聞いたノア様とキャリー様が嬉しそうに笑った。
「よかった……」
「ああ、よかった」
そしてお2人同時に安堵の声を上げた。
あまりに微笑ましい光景でつい笑ってしまうと、キャリー様が恥ずかしそうに言った。
「お兄様。真似しないで下さらない?」
「キャリーが僕の真似をしたのだろう?」
2人のじゃれ合いのような言い合いに目を細めていると、ノア様が恥ずかしそうに言った。
「ほら、レオも待っているのだし、とりあえず食べてみてよ。味は問題ないからさ」
ノア様の提案で、普段よりも小さめにカットしてあるケーキを口に運んだ。
「では頂きます」
まず初めてみる黄色のケーキから口に入れた。
「優しい甘さ……甘すぎずに私の好みです」
一体、どんな物から作られているケーキなのか皆目見当がつかないが、このケーキはとても美味しいと思えた。
「本当? ふふふ。それは僕が考えたケーキなんだ♪」
ノア様が嬉しそうに言った。
するとキャリー様が真剣な顔でまだ使っていなかったフォークで紫のケーキを差した。
「レオ様!! どうぞこちらもお召し上がり下さい!!」
そして、そのまま目の前にケーキの刺さったフォークを差し出された。
「あの……キャリー様。このまま食べるという意味ですか?」
俺は目の前に差し出されたフォークと、キャリー様を交互に見ながら尋ねた。
「もちろんです。さぁ、さぁどうぞ」
(はぁ~キャリー様も大人びていると言えまだ幼いのだな……男性にこのようなことをするのは問題だと思うが……でも、キャリー様くらいのお年だと気にならないのか?)
俺は差し出されたケーキをパクリと食べた。
「ふふふ。どうですか?」
キャリー様が俺の顔を覗き込んできた。
これも甘いが……甘さだけではなくコクがある……くせになりそうな味だな。
「これも美味しいです。また食べたいです」
正直に感想をいうと、キャリー様が花のような笑顔を見せてくれた。
「お口に合って嬉しいです」
黄色のケーキも紫のケーキもとても綺麗な見た目で、味も繊細でとても美味しい。
だが、赤や緑のケーキもそうだが、黄色や紫のケーキも見たことはない。
ケーキと言えば、白が一般的だ。
「この鮮やかな色彩はどのような、からくりがあるのですか?」
私が首を傾けるとノア様が「ふふふん」と得意げな顔をした。
「実はこれ、野菜のケーキなんだ」
「野菜?! 野菜とはあの食事で使う野菜ですか?」
「うん。野菜の甘さって上品で優しいだろ? 見た目も華やかで楽しいし、来てくれる人を楽しませることができるかな~って思ったんだ」
「楽しませる! なるほど~~こんなに美味しいケーキが野菜だなんて!! 驚きました。実は弟に苦手な野菜がありまして、このケーキなら野菜だと気付かずに食べてくれるかもしれません」
俺の言葉にノア様とキャリー様が固まった。
「野菜嫌い……?」
「……子供に食べさせる?」
するとノア様が立ち上がった。
「レオごめん!! ちょっと失礼するよ。キャリー。僕が戻るまで、レオに失礼のないようにするんだよ!!」
ノア様は立ち上がると席を立ってどこかへ行ってしまわれた。
(どうしたのだろう?)
気を悪くしたという雰囲気ではなかったので、俺が失言をしてしまったとは思わなかったがもしものことがある。俺は恐る恐るキャリー様に尋ねた。
「あの……もしかして、私は失礼な発言をしてしまったのでしょうか?」
するとキャリー様が首を振った。
「決してそのようなことは!! ただ、現在隣国からお客様がお見えになっておりまして、その方のお国の高貴な方が偏食で困っているそうです。私たちは、レオ様を喜ばせるためだけにこのケーキを作っていたので気づかなかったのですが、野菜のケーキならその方のお役に立てるかもしれないと気づいたのだと思いますわ」
「ああ、なるほど……ってこのケーキを私のために作って下さったのですか!?」
キャリー様の発言に私は衝撃を受けてしまった。
「はい。あのお茶会で皆様に喜んで頂きたくてお菓子を準備しましたのに、結局皆様、殿方に夢中でお菓子は誰一人として食べては下さいませんでした……」
キャリー様はとても悲しそうな顔をした。
当然だ。
みんなに喜んで貰おうと準備したお菓子を誰も食べてくれなかったら悲しすぎる。
「キャリー様……」
どうお声がけをすればいいのか言葉に詰まっていると、キャリー様が笑顔で俺を見た。
「しかし、レオ様だけはとても美味しそうに食べて下さいました。色のついたケーキは初めての試みでしたので不安でしたので、とても嬉しかったのです!! その時に私は『今後はレオ様の笑顔のために美味しい物を作ろう』と思ったのですわ!!」
宰相家でもあり侯爵家のご令嬢のキャリー様から、このような溢れんばかりの眩しい笑顔をむけられて、素直に嬉しいと思った。
(ふふふ、キャリー様、目をきらきらさせて可愛いな~~本当に好きなのだろうな~~)
俺は気が付けば身分差も忘れて妹のように感じ微笑ましくて笑顔になっていた。
「ありがとうございます。光栄です」
「ふふふ。そう言って頂けると私も嬉しいです!! これからもどんどん美味しいケーキを作りますわ!!」
(どんどん作る!? もしかして、言葉選びを間違えてしまったのだろうか? 催促と捉えてなければいいが……)
俺は不安になりながら言った。
「ありがとうございます、ですが無理のない範囲で……」
「はい!! ですが、無理ではありませんわ!!」
「ふふ、それならよかった」
相変わらずキャリー様の笑顔はとても可愛い。
俺はその眩しい笑顔に目を細めて思った。
(女性は好きなことをしている時はこれほど楽しそうに笑うのだな……)
前回はほとんど女性とのかかわりがなかったので、知らなかった。
前回の俺は、女性のこんな表情を見たことなどなかったな……
令嬢としてほとんど完成される高等部ではなく、幼い頃にキャリー様と会えて幸運だったと思ったのだった。
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