第11話「第二百九十七層の街3」

第十一話「第二百九十七層の街3」


「そのお姉さんに助けられたと」

「あ、ああ。まあ、ちょっと事故って出会った的な?」

「事故って何ですか。初耳です」


 まずい! 自ら墓穴を掘ってしまった!!

 美優にジト目で見られる。

 フーコは、ぺろぺろと飴を舐めており、興味関心はないみたいだ。

 アリアナは、腕を組んで、目を閉じている。


「あの……。私、これでもう行っていいですか?」


 アリアナが遂に目を開き、変な雰囲気を拭い去った。


「だめです。その事故というのを詳しく!!」

「あー、この人が私の胸を触ったってやつ? そんなの、もう許してます」

「ええ!?!? む、む、胸を触った!? 事故じゃないですよね!! 事故じゃないですよね!! それ、事故って言わないですよね!! セクハラですよね!!」


 美優は鼻息を荒くしながら、まくし立てた。


「事故なんだよ。たまたま洞窟にもぐりこんだら、こう……もにって」

「も、も、もに!?!? もにとは!!」

「俺も意図的にやったわけじゃない。もういいか?」

「ふん! いいですよ。どうせ、もにっていうくらいでかいですよ」

「じゃあ、私、行くから」


 アリアナが立ち上がり、部屋を出ていった。

 沈黙が流れる。

 開口一番に、美優が声を上げた。


「あの!! 爆弾の実験見に行きませんか!!」

「え? あ、そっか。爆弾がある唯一の層なんだっけ」

「そうです。ドカーンって」

「確かに、さっきからドンドコ音はするな」


 そう。この街は、爆弾の街、ボムトス。

 この街にしか、爆弾はない。


 だから、この層のボスは爆弾で倒すのが適していたのである。

 となると、その次の層のボスも、同様に、その街にあるもので倒しやすいのかもしれない。


 爆弾の実験会場へ向かった。


「見てください!! この爆弾の数々!! すっかり晴彦さんとアレックスさんは、虜になっています!」

「おう! お前ら、来たか。おもしれえぞ!」


 晴彦がTNTみたいな爆弾を持っていた。


「おい。大丈夫なのか? そんなぞんざいに扱って」

「大丈夫大丈夫。引火させなければ大丈夫」


 そこには、大きな洞穴があった。


「この奥で、爆発させるんだ」

「へえ。街のど真ん中の洞穴で――か」


 ドカーン!!

 爆発音が定期的にとどろく。


「すげえな。こんなんじゃ、夜眠れなくね?」

「夜はやってないんだと。鉱石を持ってきて、それを調合して試しているんだとか。何でかというと、配合具合で、爆弾の種類が膨大にあるんだとか」

「それで試してるってわけか」


 へえ……。間違って、街が吹っ飛ばないかちょっと不安ではある……。


「それで、お前たちはずっと遊んでたの?」

「やろうぜ、繭村も!」

「お、おう……」


 そして、フーコのもとへ美優を置いてきて、男三人で爆弾で遊んだ。


「あれ? レンダは?」

「レンダは買い物だとさ」

「へえ。あいつ、この街に詳しいから、場所もわかるってわけか」

「みたいだぜ。わからなかったら、あいつに聞けばいい」

「ふーん」


 ドカーン!! バン!! ドーン!!


 ものすごい勢いで、爆発音が響く――。


「これが合法なんだぜ? 最高だろ!!」

「金の無駄遣いな気がするが、すっげえ楽しいな!!」

「あはは!!」


 耳が轟音に慣れてしまって、クラクラしてきたところで、宿屋に戻った。


「繭村。次のボスの様子を明日、見に行ってこようかと思うんだが、繭村はどうする?」


 レンダが聞いてきた。


「あー。爆弾を持って、行ってみるか」

「俺たちは、どんどん攻略していかないとな。段々と難易度は下がっていくと思う」

「そうだな。だけど、俺、一個思うところがあるんだよな」

「何だ?」

「その……、第三百層――最下層のボスは一体何のためにいるんだろうな」

「確かに。三百一層はないから、下の層へ行く人を薙ぎ払う番人ではない」

「だけど、ダンジョンで最強だろ? たぶん」

「意味はないよな」

「うん。まあ、俺たちには関係ないけどさ」

「見てみるか? その先があるのか」

「え?」

「一回、見てみるだけ見てみるか?」

「いや、ボムトスからあの街へ行くのは骨が折れるから、嫌だ」

「そうか。まあ、関わる意味がないし、もし、殺されたら、最悪だしな」

「ああ」


 そして、コンコンとフーコがやってきた。

 レンダは、入れ替わりに去っていく。


「あの……」

「どうした?」

「聞いた話なんですけど」

「ああ」

「次のボス……超強いらしいです」

「大丈夫だ」

「え?」

「俺たちは、ずっと戦ってきた。死にそうにも何度もなった。だけど、生きれている。しかし、死ねばそれまで。何の悔いもない。そういうのが、冒険者たるものだ」

「そうですか。頑張ってください」

「ああ。ありがとう」


 そして、俺は次の日のことを考慮して、早めに寝た。


「繭村さん。起きてください」

「う……あ……どうした?」


 美優が体をゆすっていた。


「アレックスさんがいないんです!!」

「何だって? どうして?」

「わかりません。でも、これが……」


 ――忘れ物をした。


 それだけ書かれていた。


あとがき


どうも。今回もお読みくださり、誠にありがとうございます。


今回はボムの街、ボムトスの話でした。


今回で、副題の第二百九十七層の街という話は終わりです。


次回はボス回!!


アレックスどこ行ったんだ!?


というわけで、次回もお楽しみに!

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