第8話「ラムダ・レンダ」

第八話「ラムダ・レンダ」


 俺は、ボスの倒し方をずっと考えていた。


「うーん。どうすればあの口を……耳がいいから……ええい! わからん!!」


 持っていたスプーンを投げ出し、思考するのを諦めてしまった。

 同時にため息をつく。

 そして、隣に座っているフーコを流し目で見る。

 フーコは、ニコニコとしながら、スイーツのモンブランを食べていた。


「この階層にもモンブランはあるんだな。地上の食べ物かと思っていた」

「はい。ありますよ。元々、外の世界から手に入れたレシピで作ったそうです」

「へえ……そうなんだ。美味しい?」

「あ、はい! 美味しいです。これよりもっと美味しいものが外に……!」

「そうだね。釣られちゃうよね……!! 待てよ」


 ガッと、フーコの華奢な肩を掴んだ。

 きゃっ、とフーコはびくつく。


「そうだよ! あいつ、耳がいい。でも、身なりは何だ?」

「ちょっと、フーコちゃんが痛がってるじゃないですか」


 美優が言った。

 俺は構わず、落ちたスプーンを拾いながら言った。


「あいつ、口じゃん!!」

「だから何ですか?」


 美優は痛い視線を浴びせてくる。

 俺の目は燦燦と輝いていた。みなぎってきた。


「甘いもん食わせておけばいいんじゃね?」

「は?」


 その一言は俺の心を抉ったが、俺はとてつもなく達成感に打ちひしがれていた。


「なるほどな。口を満足させれば、音を出してもいいってわけか」


 晴彦が説明してくれた。

 その通り!! だから、あいつを倒せる!


「倒さないと意味ないんじゃね」


 アレックスが反抗してきた。


「わかってないな。敵に隙をつける。そこを突くんだ」

「はたして成功するかね……」


 アレックスは否定的だ。しかし、俺はこの作戦はすごいことだと思った。


「では、その役目を誰がやるんです? 口だからと言って、甘いものが好きとは限らないでしょう?」


 美優がもっともらしいことを言った。

 俺は深く考えて、自分を指さした。


「俺が何とかする。そこをお前らが叩いてくれ」

「死んだらどうするの?」

「相手の攻撃が確実にこちらに当たるということはない」

「は?」

「だから、一発目を防げるし、攻撃をすることを考えなければ、守るだけなら、できるんだ」

「そこを私たちが倒すと……」

「ああ。できるか?」

「当たり前です! 私の腕を舐めないでください」


 そして、宿屋を出た俺たちは、ボス部屋へ向かった。

 ひとつのモンブランを持って。

 あの化け物がモンブランを好きかどうかはわからないが、モンブランが嫌いなやつはいないだろ。

 俺は、モンブランの上の栗が嫌いだ。それはいいとして。


 そっと、扉に手をかける。

 この先に、ボスがいる……。


 ギギギ……ガチャ。


「グギギギ……クチャア……」


 大きな口がこちらを向いた。

 何てやつだ。

 あいつ、今まで俺たちを待っていたかのように笑った。


「食らえ! モンブラン爆弾!!」


 俺は思いっきり走って、敵の口にモンブランを突っ込んだ。

 しかし、その口は口の端を舐め上げると、俺に突っかかってきた。


「甘いもん嫌いだったのかよ!!」


 俺は剣で必死に堪える。

 仲間たちはこちらに向かってくる。

 だが、それも遅い。


 バキッ!!


 剣が折れた。


「ちくしょおおおおおお!!」


 カキン!!


 何かが、口を撥ね返した。


「これで終わりだ! こいつは甘いものを食べると怯む!! 突っ込めええ!!」


 誰だ?

 誰が指示を出している?


「おう!! みんないっけええええ!!」


 アレックスの声で、みんなが、突っ込む俺は、涎で目が開けられなかった。


「くそ、ちくしょう!!」


 よくわからないまま、ボスが爆発する音が聞こえた。


「お前、馬鹿だな」


 誰かが言った。

 誰だ?


「この声……。どこかで……」

「俺だよ」


 そこに立っていたのは、レンダ――だった。


「レンダ!! お前!! 手紙では、上を目指すとか言ってたじゃないか」

「ああ、あれ。やめたんだ。独りじゃ無理な層があってな。それはまたいつか話す」


 手紙では、二百三十層にあると言われていた範囲魔法つきの転移クリスタルを探すため、単独行動を取ると言っていたレンダだった。

 しかし、それをやめた? と言っている。


「じゃあ、俺たちはまた、お前と……」

「そうだよ。俺と、一緒に攻略をしよう。ちなみに、ボスは一個も倒せてないぜ」

「ははは! そうなのか! そりゃあ、すげえや」


 そして、ドロップアイテムを拾った。

 それは、赤色のクリスタルだった。


「こいつは……」

「バフをなくす範囲魔法のクリスタルだ」


 晴彦が言った。


「これがここで出るのか」

「普通は次のボスに向けて出るんだが……この前は相撲とりみたいなやつだったから……」


「ドロップアイテムはランダムだ。気にすることはないんじゃないか?」


 レンダが普通のことを言った。

 そして、俺たちはフーコを連れて行っていいかを尋ねに行っていた。


「これで、フーコは外に出してもいいんだな?」

「ああ。自由だ」

「やった!!」


 それから、仲間はアレックス、晴彦、レンダ、俺、美優、フーコ、そして、モブ二人となった。


 攻略階層――第二百九十七層。


 あとがき


どうも、お読みくださり、まことにありがとうございます。

今回、執筆を長い間しないで申し訳ありませんでした。


ちょっと仕事のほうが忙しくて、やっている暇がありませんでした。

しかし、もう大丈夫なので、こちらをガンガン更新していきます!


毎日投稿に戻ります。

そして読みやすいように、2000文字程度に調整しました。

また読んでくださると嬉しいです。


今回はボスを倒せましたね。

次回は新しい街です!!


乞うご期待!!

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