お気持ちはうれしいのだけど
夕食が終わりアシュリーが部屋に戻ってくると、俺はこの家を出て神々の山に向かうことを伝えた。
俺が持ってきた食料にも限界があるし、早めに要塞を出た方が安全だろう。
アシュリーは「あぁ、僕もそう思っていた」と言いながら、一緒に地図を見ながら山の場所を教えてくれた。
神々の山は要塞をでて2日歩いたところにある山らしい。
満月が二つでるのも、食料がぎりぎりもつのも2日ほど。
今日アシュリーに会えなかったら何もかも手遅れであったという事に俺が気づいた時には背筋が凍った。ほんとうにギリギリであったのだ…。
家の裏口からリュックを抱え出ると、アシュリーもカバンをかかえ暗がりのなか立っていた。
??????
「お別れはここでいいよ、ありがとう」
と俺が言うもアシュリーはついていくと言ってひかない。
「いや、誘拐になっちゃうから。未成年略取になっちゃうから!!帰って!!捕まっちゃう!」親御さんから引き離してなにかあったらと思うと良識的な日本人としてしのびない。
「ついていく。父さんは帰ってこないし、母さんは仕事で何日か帰ってこないのを確認した。ちょっと、山まで見送るだけだ。」
「いやいやいや、帰りは俺いないからね!?迷ったらどうするのよ!?迷ったら!!」
「イチロー声うるさい。心配ない、迷ったら狼煙をあげる。神々の山は動物もでない。」
俺の声がうるさかったのか不審に思った隣家から複数の足音がこっちに向かってくる。
「イチロー!早くこっちだ!」
アシュリーに手をひかれ、市街地のはずれまで着くことができた。
ここから先はただひたすら遠くに見える山を目指せばいい。…これ地図いらなかったわ。
「アシュリー案内はここまででいい」
「イチロー、お願いがあるんだ。
山に着いて、僕の話をきいてから判断してもらって構わない。どうかそこまでつれていってほしい」
急に大人のような口調で眉毛をハの字にしながら切実そうにお願いされた。アシュリーには俺に言えない何か言えない事情があるのだろうか……命の恩人にそこまでお願いされたら頷くしかない。
しかし5歳児の子供をつれて山に向かうのはあまりにもリスクが高かった。この近くは市街地のはずれ、犯罪などに手を染めた人間の住む貧民街らしい。どうしたものかと考えあぐねていると、少し離れた先に焚火をたいて寝ている盗賊達を見つけた。盗賊達は酒に溺れて寝ているようだ。ここには盗んだであろう上等な馬がたくさんいる。
盗まれた人の手には戻れないであろう馬達、一頭連れていってもきっとバレないであろう。
俺達はたくさんいる馬の中から二人で乗れそうな馬を探して、一頭だけ連れだして要塞を出る事にした。
「アシュリーなにか理由があるんだろう…山についたら必ずなんで山に行かないといけないのか教えると約束してくれ」
俺の真剣な顔に、アシュリーも目をそらさず答えた。
「あぁ、必ず話すと約束する」
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