これが天賦の才能か!俺じゃないけど

「アシュリー俺に教えてくれ」俺がアシュリーに土下座を続けた結果、アシュリーは俺の肩をポンポンと優しく叩いて腕をひき立ち上がらせてくれた。

そうだよな、これじゃあ伝わらないよな…。


俺は部屋にあった子供用の読み書きの絵本がをもっていき、アシュリーに絵を読んでもらうことにした。絵を俺が指差し、アシュリーが異世界語で読んで絵の下に単語を書くという方法だ。アシュリーも同じ絵を指差し、俺に日本語で読んで文字を書くようにジェスチャーしてきた。

そうして俺達が部屋の絵本を全て読み終わる頃には、窓から夕陽が差しこみはじめていた。

驚くべきことにアシュリーは半日で日本語をマスターしたのだ。俺の方はというと異世界語の単語帳を作るので精一杯であるというのにだ!

一回ノートに書いて単語帳とにらみあいながら和訳するというなんとも情けないレベルである。子供は環境に適応するっていうけど、アシュリー適応しすぎだろ!!これはもう天賦の才能レベルだろ…


日が沈んだころ、階段をのぼる音と同時にアシュリーの母親の声がした。

「アシュリー!✕✕✕✕〜」


「イチロー かあさんがくる かくれてろ」


俺は部屋の隅にあった掃除用具入れにすかさず隠れ、扉の隙間から様子をうかがった。アシュリーの母親は頭に鶏の羽根をつけながら夕食の準備ができた事を伝えにきたようだ。…やはりあの鶏は夕食であったか。アシュリーは母親の死角から俺に"まってろ"と口パクで合図して、母親の背中を押しつつ一階の食卓へと下りて行った。


「ふぅーやっと出れた」

掃除用具入れから出た俺は一人になってこれまでのことを頭で整理することにした。


絵本を読んでもらってわかった事がある、それは俺がこの世界のものを食べてはいけないということ。

日本でいうヨモツヘグイ。異世界の物を食べてしまうと元の世界には戻れないということ。

そしてもう一つ俺が日本に帰る為に行かないといけない場所…神々の山と呼ばれる場所だ。2つの満月が山の上に昇るとき帰り道があらわれるとされている。


俺はリュックにいれて持ってきたゼリー飲料を飲みながら、アシュリーが戻ってきたら地図だけもらってこの家を去ろうと決めた。

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