えっ?似てる? へへへ気のせいですよ
要塞の階下にはにぎやかな市街地が広がっていた。
あんなに広い屋上があり天井から日が入らないのに全く暗くないのだ。辺りを見渡すと街灯のような柱に鏡がつけられていて光の屈折を利用して奥まで光を届けているようだ。光のあたっていない床には所々光る苔があり遠くから見るととても幻想的な光景である。
市街地の中ではファーマーズマーケットがやっていて大勢の人が行き交っている。青リンゴや鶏など地球と同じようなものをコインで売り買いしているようだ。
おっ!焼き鳥!美味そうだな。と見ていると横から視線を感じる⋯⋯。この世界に知り合いなんていねぇぞ!!誰だ!?と思いっきって横を見るとそこには屋上であった少年が立っていた。
この子の母親は、隣の鶏の店のおばちゃんと笑顔で会話していてこっちには気づいていないようだ。それをいい事に少年は穴があくんじゃないかと思うほど俺の顔を覗きこんでいる。どうやらさっき会った時と違い洋服も着ているし、俺かどうか確信できないようである。
これは先手必勝!!俺の得意技の山田スマイルだ!!これでもくらえ!!平均的な顔、なんかどっかで会った事あるような顔、どこにでもいそうな顔と言われ続けた俺の顔である!!!へへへ⋯さぁ!異世界人よ!このアジアンフェイスが見分けられるか!少年はこの堂々たる俺の態度を見て(最終的に洋服を見て)こいつは違うなと判断してくれたようでこちらを見て頷き笑顔を見せてくれた。
うん!うん!年相応で可愛いらしいではないか!!
5歳くらいなのだろうか?母親が買った鶏を抱えて、"コッコ⋯⋯"と鶏に名前を名付けているようである。少年⋯⋯その鶏たぶん今日の君たちの夕食じゃないか?と思いつつも少年が動物に愛着を抱くその様子がとても微笑ましく見えるのであった。
俺も小さい頃は動物の命に対して正面から向きあおうとして、よく泣いていたななんて思い出す。
夕方にさしかかるこの時間、広場からクリスマスソングが聞こえてきた。その時俺はとてつもない違和感を感じたのだったがその違和感がなにか分からない。広場には子供達が集まり、クリスマスソングをうたっている。こういうのはルンルンと聞いてると最後に金とられるからな⋯BGM程度に聞いとくか。⋯⋯と思っているとクリスマスソングを聞いて涙ぐみ子供達に近づいていくおっさんがいた。
子供達の親かなんかと思ったら、チップを投げていた。あの金は見た事あるぞ、米ドル札だ!
その時、俺は違和感の正体に気づいた。なんで俺はこんな簡単な事に気づかなかったんだ。ここは言葉が通じない異世界だぞ?なんでマライ●キャリーの曲を子供達がうたっているんだ?
もしかして異世界人が歌に反応するか見ていたのか?辺りを見渡すとおっさんの背後で目配せをして後をついていく怪しい男達をみつけた。
やはり異世界人狩りなのか。俺はすでにマークされたのか?心臓の音が耳の中でこだまする。
俺は恐怖から床から視線をあげられずにいたが、視線の先に人の影が映り込む。少年だ⋯。コッコを母親に預けたようで、俺の手を掴み一緒に走りだした。
「✕✕✕ー!」少年は俺になんか言ってるようだがやはり異世界の言葉で分からない。だが、その必死な様子は俺を助けようとしてくれているようである。
「✕✕✕、✕✕✕✕」口に指を当てて、静かにするように俺に合図をしてくれた少年は扉をゆっくり開けていた。
どうやらこの家は少年の家で、裏口から俺を入れてくれるようだ。俺に何か見せたいものがあるようで部屋の奥に向かってズンズン進んでいく。
着いた部屋は本が何冊かある子供部屋のようだ。
「✕✕!!」絵本を俺に見せたいようで、少年は絵本を膝にのせ自分の隣の床をポンポンと叩き俺に座れと伝えてくる。
それは子供向けの絵が多い宗教の本のようである。
かなり昔からある本のようで、背表紙は色褪せ紙はボロボロになっているところも多い。
言葉が分からない俺にとって、この絵本は異世界の状況を知る手掛かりになるかもしれない。
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