吸血鬼の肉欲

 彼女が吸血鬼だということを知ったのは、入学してすぐのことだった。


 クラスメイトの彼女は、いつも日傘を差して登校していた。

 最初は気にも留めていなかったが、ある日彼女が僕に打ち明けたのだ。

 「私、吸血鬼なの」と。


 その時の彼女の真剣な表情は、今でも鮮明に覚えている。


 思い返せば、入学式の日に初めて出会った時から、彼女は僕のことばかり見ていたような気がする。

 「あなたの血の匂いが好き」と言って、近づいてくる彼女。

 最初の席替えのタイミングで隣の席になったのも、彼女の計らいだった。


 他のクラスメイトと話していると、どこからともなく現れて会話に割り込んでくる。

 「あなたは私のものよ」と、努めて冗談めかして言ってくるが、その瞳は真剣そのものだった。


 放課後、誰もいない教室で彼女は僕に寄り添ってきた。

 「ねぇ、少しだけ血を分けてくれない?」と首筋に顔を近づける。

 優しく押しのけると、彼女は不満げな表情を浮かべながら「もう、意地悪」と言って、そのまま僕の腕に抱きついてきた。


 吸血鬼の彼女と過ごす毎日。

 異常なことが、少しずつ僕の高校生活の日常となっていった。

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