戦場の絆

 彼女と初めて出会ったのは、三年前の戦術訓練の最中だった。

 新人として配属された彼女は、驚くほど優秀な戦術眼を持っていた。

 だが、それ以上に印象的だったのは、任務後の彼女の無邪気な笑顔だ。


「先輩! 今日の作戦結果、完璧でしたね!」


 あの頃から、彼女は少し距離が近かった。

 だが、その純粋な熱意は部隊の誰もが認めるところで、私も次第に慣れていった。


 その一方で、戦場での彼女は別人のように冷静だった。

 砂埃が舞う中、的確な判断で仲間の命を何度も救ってくれたのを、同じ部隊の人間は決して忘れないだろう。

 その姿に、私も心を打たれた。


「先輩のおかげで、私、ここまで来れました」


 任務の合間に、彼女はよく私の側に寄り添ってきた。

 肩が触れ合うほどの距離で、時には頭を預けてきたりもしてくる。


 最近では、彼女の想いが暴走することが増えてきた。

 昨日も、作戦会議室で二人きりになった時——。


「先輩は、私のことをどう思っているんですか?」


 答えに窮する私の腕に、彼女は強く抱きついてきた。


「私、先輩のことが好きすぎて、もう我慢できないんです」


 やんわりと距離を置こうとする私の胸に、彼女は顔を埋めてくる。

 温かい吐息が服越しに伝わり、心臓が激しく鼓動する。

 この距離感は、明らかに上官と部下の関係を超えていた。


 戦場で培った固い絆は、今や私たちを別の意味で縛り付けていた。

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